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リアクション
「……あれ、チェルシー? さっきまで隣にいたはずなのに」
黒がメインカラーの魔法使いの扮装をした白波 理沙(しらなみ・りさ)は顔を左右に巡らせいつの間にかいなくなったチェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)を捜し始めた。
そんな時、
「お待たせしましたわ。カボチャは嫌いではありませんが、カボチャのお菓子ばかりでは飽きると思いまして先程近くのケーキ屋さんにてサツマイモのパイとモンブランを購入してみましたわ。お芋と栗も秋の味覚で美味しそうかなと思いまして……」
先端に小さなカボチャの付いた杖を持ちオレンジ色のフリフリドレスをまとったチェルシーが追加したたっぷりのお菓子を理沙に見せながら報告した。
「どこに行っていたかと思えば……美味しそうなのはいいけどお菓子がこんなにあるのに更に買うとは……」
理沙は水増ししたお菓子の量に少し呆れる。ちなみに二人はハロウィンサブレ不使用。
「配るためにはこれくらいは必要ですわ。渡せなかったら悪戯を貰う事になってしまいますし」
チェルシーは行き交う多くの人に目をやりながら答えた。
「確かにそうね……まぁ、お菓子が残ってしまっても今日中に食べなくてもいいし……というか雅羅、遅いわね」
「ですわね。待ち合わせの刻限はもうすぐのはずですが」
お菓子の話を終えた理沙とチェルシーは誘った雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)がまだ来ない事が気になっていた。
その時背後から、
「そこの不審者二名、大人しく手を上げて振り向け!!」
鋭い声が突き刺す。
「!!」
理沙達は反射的に手を上げてゆっくりと振り向いた。
そして、正体を確認するなり
「……聞き覚えのある声だと思ったら雅羅じゃない」
「突然の事で驚きましたわ」
理沙とチェルシーは手を下ろした。二人の目の前にいたのはハロウィンカラーの洒落た保安官の扮装をした雅羅だった。手には可愛らしい拳銃が握られていた。
「トリック・オア・トリート、よ」
雅羅は理沙達の反応に満足したのか茶目っ気のある笑みを浮かべていた。
「……その言葉、こんな事する前に口にしてよ」
理沙は少しだけ口を尖らせつつも怒ってはおらずむしろ楽しそう。何せ今日は恋する雅羅とハロウィンを楽しむ日だから。ちなみに告白は済んでるものの保留状態。
「トリックは分かりましたけど、トリートはどのような感じですの? 見た所、お菓子を持っている様子はありませんが」
チェルシーがお菓子持参には見えない雅羅にツッコミを入れた。
「それは心配ご無用よ。ほら、二人共口を開けて……心配しなくとも危ない事は何もしないから」
雅羅はにやりと口元を歪めるなり理沙達に意味不明な指示をする。
「雅羅がそう言うなら」
「……安全にお願いしますわ」
理沙は大人しく口を開く。隣のチェルシーも同じく口を開けた。
「狙って……トリート!」
雅羅はかけ声と共に理沙達の口を狙って銃弾を発射。
「むぐっ!」
見事に理沙達の口に命中。
「どう?」
雅羅は口をもごもごしている理沙達に訊ねた。
「これって飴よね」
「わたくしはチョコですわ」
理沙とチェルシーは口内に広がる甘い味に思わず聞き返した。
「これに仕込んでおいたのよ。面白いでしょ。さぁ、行くわよ」
雅羅は拳銃を軽く掲げて見せた後、軽やかにホルスターに仕舞って歩き始めた。
「お菓子を貰いにね」
「……貰えなかった時の悪戯も考えなければなりませんわね。さて、何にしましょうか」
理沙ともしもの場合の悪戯を考えるチェルシーも続いた。
三人はあちこちでお菓子をあげたり貰ったりチェルシーの即興の軽い悪戯が炸裂したりとハロウィンを最後まで楽しんだ。
ハロウィン終了後。
「今日は楽しかったわ。誘ってくれありがとう」
雅羅は嬉しそうに誘ってくれた理沙達に改めて今日の礼を言った。
「こっちも楽しかったわ。ありがとう」
理沙も改めて今日の礼を口にした。
「お菓子もたっぷり貰いましたし悪戯もして今日は楽しかったですわね」
チェルシーはたっぷりのお菓子を見て笑顔。お菓子を見ると得た時の事が思い浮かぶ楽しくなる。
「そうね。でもすぐには食べ切れないほどのお菓子が集まったわね」
雅羅もお菓子入れから溢れ気味のお菓子に苦笑した。
「結構、あっちこっちでお菓子を貰ったりあげたりしたからね。一番楽しかったのは色々な人とお喋りしたり交流出来た事だけど」
同じく理沙も溢れ気味のお菓子に目を向け、口元を綻ばせた。
そして、
「ハッピーハロウィン」
ハロウィンの挨拶を互いに交わしてから楽しい気分のまま理沙達は帰路に着いた。
「やっぱり、普通の格好をした人は少ないですね」
「ハロウィンだからな」
杜守 柚(ともり・ゆず)と高円寺 海(こうえんじ・かい)は仲良くハロウィンを楽しみにやって来た。ただ、普通の格好のままの二人は少し浮いていたり。
そこに
「トリック・オア・トリート!」
陽気な少年二人の声が背後からかかる。
「!!」
驚いた柚と海は同時に振り向いた。
そこにいたのは
「お菓子くれないと悪戯するぞ」
「というか、何普通の格好しているんだよ。ほら、こいつを食べて変身しろよ」
悪戯に遭いながらもハロウィンを誰よりも楽しんでいる双子であった。柚達の姿にテンション低下の顔をするなりキスミはハロウィンサブレを二枚差し出した。
「何か仮装すれば良かったと思っていたところですけど……」
「モンスターに変身するハロウィンサブレとか言うやつだよな」
柚と海は渡されたハロウィンサブレをまじまじと見つめる。
「おう」
「オレ達が作った物だぞ。味最高、効果抜群だ!」
作製者である双子が持っていても何もおかしい事は無い代物。
ハロウィンサブレを確認し終えた後、
「折角だから食べましょうか」
「あぁ。確かにこの格好じゃ浮くしな」
柚と海は製作者自ら渡されたのだからとハロウィンサブレを使用。
二人の姿はあっという間に変貌し
「……柚とお揃いの魔法使いか」
「……ですね。海くん格好いいです」
お揃いの魔法使い。柚はペアルックに少しばかりドキドキ。
「で、改めて」
「トリック・オア・トリート!」
柚達がハロウィン色に変わった所で改めて双子は定番句を口にした。
「お菓子ですね。どうぞ」
柚は用意していたお化けの形をしたクッキーを渡した。丁寧に個別包装している。
「ほら、どれでも持って行け」
海は主催が配布用に用意したお菓子を全部見せて二人に選ばせた。
「サンキュー」
「ハッピーハロウィン!」
双子はお菓子を得るなりバタバタと別の標的を求めて走り去った。
双子が去った後。
「……騒々しかったな」
海は疲れたように溜息を洩らした。双子に関わる者達と同じ症状だ。
「でもハロウィンという感じで楽しかったかもです。さすがイルミン協賛です」
柚はハロウィン定番のやり取りが出来て少し満足。
ふと
「海くん……トリック・オア・トリートって言ってもいいですか?」
柚は隣の海を上目遣いに見ながら少しだけ控え目に訊ねた。
「いや、ちょっと待て、あの双子のせいでトリートが無い」
まさかの柚の言葉に少しだけ慌てる海。何せ容赦の無い双子によってお菓子を全部取られてしまったので渡せる物が無い。
「それならトリックです!」
柚はそう言うなりくすぐり攻撃を開始。
「ちょっ、柚、ほら、……あのカフェで……何か奢るからやめろって!」
くすぐり攻撃に降参気味の海はトリートを口にしてやめさせようとする。
「分かりました。そのトリートを貰います」
降参気味の海に軽く笑いながら柚はくすぐり攻撃をやめた。
端から見たら可愛いカップルが何楽しんでるんだよ、という光景だ。
二人は仲良くホラーカフェに向かった。
ホラーなオープンカフェ。
「お菓子くれなきゃ、悪戯しちゃうにゃ♪」
和ゴス姿に猫耳と尻尾と肉球グローブを嵌めた清泉 北都(いずみ・ほくと)が猫っぽいポーズで場を盛り上げた後、持っていた籠から猫の手形というか肉球クッキーを取り出し、近くのテーブルにいた柚達にプレゼントした。
「うわぁ、ありがとうございます。海くん、ここに入って良かったですね」
柚はクッキーを受け取るなり嬉しそうに礼を言った。
「確かにハロウィンの感じはするな。で、トリートはどれがいいんだ?」
クッキーを受け取った海は早速柚に何が良いのかを訊ねた。
「もう決めてます。この姿にぴったりの料理をリクエストでお願いします」
柚は即答。好き嫌いは無いのでどんと来いである。
しばらくして柚の元に料理が運ばれる。
「ご注文のリクエスト見習い魔法使いの失敗作。味は失敗ではありませんから」
口元と言うより主に鼻の下を赤く染めたミイラ男に扮したクナイ・アヤシ(くない・あやし)が虚ろな目でふらりとしながら運んだのはパフェ。不気味色の生クリームに様々な形にカットされたフルーツが突き刺さり魔方陣のようにソースが掛けられたりとまさに見習いの失敗作の名に相応しい物だ。
「……スタッフもハロウィンを意識してリアルだな」
海はクナイの様子を演出だと受け取り感心していた。
トリートを得た柚は、
「勉強を頑張っている魔法使いさんって感じですね」
パフェの外観を楽しんだ後、一口食べた。
「どうだ?」
「美味しいです。見た目はこんな感じですけど。クッキーはどうですか?」
貰ったクッキーを食べながら味を訊ねる海に柚は可愛い笑顔で答えた。
「……美味しい。まぁ、柚が満足ならいいけど、本当に見た目ホラーだな」
海は柚が美味しそうに食べる様子を見て満足していた。
柚が食べ終わり海のお菓子を補充した途端。
他の参加者から声をかけられた。
それは、
「トリック・オア・トリート!」
「お菓子をくれないと悪戯をしますわよ」
「悪戯が嫌ならお菓子を出すのよ」
理沙とチェルシーと雅羅だった。
「ハッピーハロウィンです。お菓子をどうぞ」
「ほらよ。というか、そっちも来ていたんだな」
柚と海は速やかにお菓子を差し出した。
「えぇ、海と柚も楽しんでいるみたいね」
雅羅は二人に向けていた拳銃を下ろした。
「ありがとう。こっちもあげるよ」
理沙は楽しそうにお菓子を柚達にあげた。
「モンブランや秋の味覚のスイーツをどうぞですわ」
チェルシーはカボチャ味以外のお菓子を配った。
「私もあげるわ。ほら、二人共、手か口を出すのよ」
雅羅は再び銃を構えた。柚達は言われるまま手を出した。
すると
「チョコですね。ありがとうございます」
「……飴か。普通に配ってもいいだろうに」
柚と海にそれぞれお菓子が手の平に。
「それじゃ、つまらないでしょ。ハロウィンなのよ。ね?」
雅羅は肩をすくめた後、理沙に同意を求めた。
「もちろん。楽しまないとせっかくのハロウィンの雰囲気がもったいない」
理沙は笑顔で賛同。そもそもクリスマスとハロウィンは雰囲気が好きなイベントなので。
「お菓子交換が終わりましたから次に行きませんか」
チェルシーが上手い具合に話を切った。
「そうね」
「それじゃ、行くわね」
用事を終えた雅羅と理沙は即答えた。
ここで
「ハッピーハロウィン」
互いにハロウィンの挨拶をして散開。
この後も柚達や理沙達はそれぞれハロウィンを楽しんだ。
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