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リアクション
今日はハロウィン・1
賑やかな通り。
「どうしましょうか……とりあえず、貰ったばかりのサブレを食べてからですね」
匿名 某(とくな・なにがし)とはぐれてしまった結崎 綾耶(ゆうざき・あや)は手にあるハロウィンサブレに目を落とした。本当は二人で貰う予定が一人になってしまった物。
ハロウィンサブレを食べた途端、
「わぁ、身体が大きくなってます。ここまで変身するとは凄いですね」
綾耶は外見年齢20歳の魔女っ子に変身した。まさか外見年齢が変わると思わなかった綾耶はびっくりしながら自分の姿を確認した。
そして、
「そうです。ふふふ、面白いイタズラを思いついちゃいましたよ。まずは某さんを見つけないと」
ピコーンと悪戯を閃いた綾耶は可愛い笑みを浮かべたと思ったら飛び立ち、空からの捜索を開始した。
捜索開始してすぐ。
「あっ、発見。某さん、吸血鬼さんに変身してますね。作戦、実行です!」
『捜索』を有する綾耶はあっという間に某を発見して、悪戯を実行するために降下した。
「一体、どこにいるんだ……ここに来た時には確実に隣にいたはずなんだが」
某はあちこち歩き回りながらはぐれた恋人の綾耶を捜し回っていた。
「とりあえず、先に変身しておくか」
ふと足を止めてハロウィンサブレを取り出した。綾耶とはぐれたのはハロウィンサブレを貰いに行く途中だったのだ。
「まさにハロウィンっていう味だな」
某はハロウィンサブレを頬張った。
途端、某の姿はあっという間に変身して
「んー、吸血鬼か。しかもどんな映画にも出ていそうな典型的な感じだな」
典型的な吸血鬼になった。
「さて、綾耶を捜しに……」
変身した事を確認終えるなり恋人捜索に戻ろうとした時、
突然空から魔女っ子が降って来て某に抱き付いて来たのだ。
「……お、親方ァ! 空から女の子が降ってきて抱きついてきましたぁ!」
某は叫びながら魔女っ子を落とさないように抱き抱えた。
そして、顔を覗き込みながら
「……って、誰だ?」
訊ねる。
「……」
魔女っ子はにこりするだけで答えない。
その笑顔を見ている内に某の頭に心当たりが浮かんで来た。
それは、
「……まさか綾耶か?」
ここに来てからずっと捜していた恋人だ。
「大当たりです! 予想通りびっくりしましたね。トリックオアトリートならぬトリックアンドトリート大成功です!」
某が正解した所で綾耶は口を開き、某の驚きぶりを脳内再生するなりころころと笑った。
「サブレででかくなったとはな……というかトリックオアトリートならぬトリックアンドトリートでくるとは、なかなかやるな、綾耶」
してやられた某は外見だけでなく性格まで強かになったのではと思っていたり。
「当然です」
綾耶はキリリと答えた。その様子がまた可愛い。
「そう言えば、トリートがまだだったな。と言う事でお菓子をあげよう。ほら、パンプキンクッキーをどうぞ」
某は予め用意していたクッキーを取り出した。
「お菓子ですか? 別にトリックアンドトリートだからってそこまでしなくとも」
目的は某を驚かせるだけだった綾耶は予想外のトリートに遠慮気味。
「いやいや、せっかくのハロウィン、食べて貰わねば。あい、あ〜んして」
某は少々大袈裟に言い、綾耶の口にクッキーを持って行く。
「あーん……んむっ!!!」
綾耶がクッキーをくわえた途端、某は口づけをしてついでにクッキーまで回収した。
「ごちそうさま」
某はクッキーを食べながらしたり顔。
「も、もう! こんな皆さんがいる場所でなんてことするんですかー! もう、某さんなんか知りません」
予想外の事に綾耶は頬を染めて可愛く怒るなりプイと顔を背けた。
「そう怒るなよ。綾耶がトリックアンドトリートなんてしてきたんだから、俺もトリックアンドトリートで返すしかないじゃあないか〜」
某は何とか綾耶の機嫌を直そうと必死になるが、
「……」
綾耶は顔を背け口を尖らせたまま。
「ほら、俺が悪かったごめん。だから機嫌を直して……」
某はさらに必死さを追加した。
途端、怒った顔をした綾耶が振り向いたと思ったら
「許しませんっと見せかけて……」
一瞬笑みを浮かべるなり某の唇を奪った。
「!!」
怒っていないどころかまたもや自分にトリックを仕掛ける綾耶にびっくりの某。
「へへへ、今のお返しです! トリックだけでトリートはないですが、そこは気にしちゃいけませんよ!」
綾耶は満足げな笑顔。
「気にはしないが、不意打ち過ぎるって。それに俺、口にお菓子くわえてなかったな」
某は驚きをあっという間に引っ込め、妙な事を言い出した。
「そうですね。でもそれがどうかしましたか?」
綾耶は小首を傾げながら聞き返す。
「つまり、ルール違反という事だ」
某はにやりと口の端に少しだけ意地悪な笑みを浮かべた。
「ルール、ですか? いつの間に?」
ルールなど作った覚えなどないとまた小首を傾げる綾耶。
「今、成立した。で、俺も一回トリックをしていいという事だ。次は、さっきより濃いのを、な?」
某は先ほどの少しだけ意地悪な笑みのまま意地悪な事を言う。端から見れば完全にバカップルの甘いやり取り。
「も、もう、某さんったら!!」
さすがに恥ずかしくなった綾耶は某の元から飛んで逃げてしまった。
「……あぁ、また振り出しかぁ」
某は飛んで行った綾耶を見上げながらつぶやいた。
再び恋人捜索をしなければならなくなった。
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