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リアクション
その5
大人向けおもちゃコーナー
「大人向けおもちゃ、ね……」
綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)はしみじみと呟く。
「大人のおもちゃ、とは違いますよ」
「わわわわかってるわよ!」
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)の言葉に真っ赤になって口にする。
彼女たちは空京放送局の情報バラエティ番組の企画により、おもちゃ工場の見学のロケを行っていた。
その際に騒動に巻き込まれたため、非武装だ。
アデリーヌは【天のいかずち】が使えるが……心もとないことは事実だ。
なので戦闘は避け、不審者やコアなどがいないか捜索をしていた。
「お、大人のおもちゃって……どうしてこうもエロい響きを持つのかしらね……」
赤い顔のままさゆみは呟く。
そもそも大人向けのおもちゃってなんのことだろうか。
頭に浮かんでくるのはマッサージ器とかぶるぶる震えるなにかだったりとか、紐とかろうそくとかそういうのばかり。
「さゆみ」
アデリーヌはマッサージ器を手に、さゆみに近づいてくる。
「疲れているのではないですか、さゆみ。わたくしが、マッサージして差し上げますわ」
さゆみの体はベッドに縛り付けられている。肩や首の周りなどに押し当てられたマッサージ器は振動が強く、さゆみの体は小刻みに震えている。
「さゆみ……ここも、とっても疲れてる」
そのマッサージ器がだんだんと下のほうへと降りてきた。くすぐったさに体を動かすも、紐で縛られていて体を動かせない。
途中からマッサージ器は足へと移動し、足の裏から少しずつ、今度は上に上がってくる。
「気持ちいいんですか、さゆみ。ふふ」
アデリーヌが優しく微笑み、マッサージ器はふとともをなぞる。
「き、気持ちいいよ、アディ……」
さゆみはかすれた声で答えた。
嬉しそうに笑うアデリーヌは、マッサージ器をもう少しだけ、上へと動かす。
「アディっ……」
さゆみはびくりと体を動かし、アデリーヌのマッサージに声を上げた。
「……さゆみ、その表情はアイドルとしてどうかと」
「はっ!?」
妄想していたさゆみは現実世界に戻ってきた。緩みきった顔をばしばしと叩いて目を覚ます。
「っ! 近くに盗撮の気配はない!? あんな顔してるところを撮られたらアイドル活動を辞めざるを得ないわ!」
さゆみが周りを見まして言う。アデリーヌが「大丈夫そうです」と声を上げた。
「ふう……よかった。なんか今日もあのバカに会うような気がしたから」
息を吐いて言う。最近付きまとわれている(?)カメラ小僧は今日は近くにはいないらしい。朗報だ。
「こほん。気を取り直して、とにかく、コアとやらを探さないと」
「ええ」
二人は歩き出した。
「で、ここはなにがあるの?」
「これですね」
アデリーヌは棚を眺めた。
その棚に置いてあるものは……拳銃だ。
「モデルガン?」
本物ではない。モデルガンや、エアガンだった。
なるほど大人向けのおもちゃだ……と改めて頷く。
他にも精密度の高い大型のイコプラだとか、戦闘機や戦艦、車のプラモデルだとか。そういったものが並んでいた。
「『おもちゃが動く』という状況でも、ここは安全そうね」
ここにあるものは組み立てが必要だったり、引き金を引くという他者からの行為が必要だったりとそういったものばかりだ。その点から考えると、ここはそれほど危険はないかのように思えた。
「いえ……」
が、アデリーヌはなにかが近づいてきているのに気づいていた。さゆみを背にやって、前方へと視線をめぐらす。
彼女の視線の先には――戦艦に戦闘機、ヘリコプターなどが、並んでいた。
アデリーヌはさゆみを押し倒す。先ほどまで彼女たちがいた場所になにかが飛んできて、爆発した。
「なんで組み立ててあるのっ!?」
「ここの工場長は大のイコプラ好きと聞いております。おそらく、工場長が趣味で作ったものが飾ってあるかと」
「迷惑な工場長ね!」
普段なら微笑ましい工場長ではあるが、この状況ではそう言わざるを得ない。
「来た!」
「逃げましょう」
二人は立ち上がって向かってきた戦車たちの砲撃をかがんで回避する。
「『天のいかずち』!」
アデリーヌがいかずちを放ち、戦車の動きが一瞬止まる。その隙に彼女たちはここから出ようと、先ほど入ってきた入り口へ。
「嘘!」
その道中、モデルガンなどがあったケースがバラバラになっていた。
そして――モデルガンなどが宙に浮き、こちらを向いていた。
「さゆみ!」
アデリーヌがさゆみの前に立つ。
「アディ!」
さゆみが叫んだ、そのときだった。
「伏せて!」
映画で聞くような言葉が聞こえ、アデリーヌは再びさゆみを押し倒す。刹那、銃声が響いてモデルガンなどを撃ち落とした。
「ヘイ! アライブ?」
二人の目の前に現れたのは黒い猫の着ぐるみ、クラウツ・ベルシュタイン(くらうつ・べるしゅたいん)だ。
「大丈夫ですか?」
そして、シュネー・ベルシュタイン(しゅねー・べるしゅたいん)も構えた銃を降ろしてさゆみたちに近づいてきていた。
「助かりました」
アデリーヌが例を言う。
「もう少しで大人のおもちゃに殺されるところだったわ」
さゆみも息を吐いて言う。
「ヘイ! ユー! ミーは知ってるニャー! 大人のおもちゃというのはマッサージ器のことで、具体的には女性にゴフッ!?」
「黙りなさい」
なにかを言おうとしたクラウツの脳天をシュネーが銃で叩いた。
「軽い冗談だニャー! 目が怖いニャー!」
クラウツは手をぶんぶん振るって反論する。
「ここにはモデルガンとかだけ?」
シュネーがクラウツを無視して聞く。
「いえ、違うわ」
さゆみが答えた。
「戦車とか戦艦、戦闘機! なんでもあるわよ」
そして、先ほど見た光景を説明する。そんな話をしていると、戦車の一陣が皆の視界に入った。
「噂をすれば!」
アデリーヌが言う。
「とりあえずミーの華麗な活躍を見せるべきだニャー!」
クラウツはトミーガンを握り、前に出た。
「弾幕はジャスティスだニャー!」
そして銃を乱射する。戦車たちは所詮プラモデル、銃弾で穴を開けられるとすぐさま動かなくなった。
「ふっ……ざっとこんなもんだニャ」
銃先に息を吹いて口にする。
「まだよクラウツ。話によれば戦闘機とかも来る。警戒して」
シュネーはマシンピストルを構え、いつなにが来てもいいようにする。
「ニャー、シュネーは全然人生に余裕がないニャー。そんなんだったらいつまで経っても一人身でゴファ!」
「黙りなさい」
シュネーが再び銃でクラウツを叩く。
ぶーぶー文句を言いながらもクラウツは構え、戦闘機などの攻撃に備える。
――が、攻撃は来ない。
しばらく経ってもなにも現れないため、シュネーは息を吐いて銃を降ろした。
「来ないわね」
そしてそう口にするが、
「後ろ!」
「え?」
さゆみの声に反応して後ろを向く。後ろから、別の戦車が迫ってきていた。
「っ! こっち!」
シュネーは振り返りながら銃を撃ち、さゆみたちの手を引く。戦車の砲撃を避けながら、四人は棚の影へと飛び込んだ。
一方、同コーナーの別の入り口からも、数人が様子を見に来ていた。
「大人のおもちゃコーナーか……ごくり」
ソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)が口にする。
「ソラ……下ネタは禁止ね」
ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)がソランの肩を叩いて言った。
「言わないわよ! 大体、大人のおもちゃなんて、もういらないわよどれだけ持ってると思って」
「だからやめろっつーの!」
ハイコドはソランの口を押さえて言った。「んー!」とソランは暴れて抵抗する。
「全く。おもちゃなんだからおもちゃだと素直に受け止めればいいのじゃ。のお、クマ助」
「くまー」
エクリィール・スフリント(えくりぃーる・すふりんと)は手にしていたぬいぐるみと会話しながら言う。
「具体的に、大人のおもちゃってなんなんですか?」
黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)が黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)に聞くが、竜斗は「さあ、なんだろうなー」とすっとぼけた。
「マッサージ器とか、そういうもののことよぉ」
シェスカ・エルリア(しぇすか・えるりあ)が答える。竜斗が「バ、シェスカ!」と口を開いた。
「……なんでおもちゃ工場とマッサージ器に関係が?」
ユリナが続けてそう聞くと、シェスカはユリナの耳に口を寄せてなにかを呟いた。ユリナの顔が真っ赤に爆発した。
「しぇ、シェスカさん卑猥です! ありえないです! マッサージ器にそんな用途はありません!」
「ウブねえ。ユリナって」
笑いながらシェスカが言う。
「なんのことでしょう?」
黒崎 麗(くろさき・れい)が首を傾げた。
「あのねぇ、」
「シェスカ! 麗には絶対言っちゃダメ!」
竜斗が麗の前に出て叫んだ。麗は頭に「?」マークを浮かべた。
「ここにプレゼント候補はないかな……イコプラなんてまだ早いし」
ハイコドがイコプラの箱を眺めながら口にする。
「ハコが作ればいい」
ソランが言う。
「誰へのプレゼントかよくわからなくなるぞ」
ハイコドが笑って返した。
「それに、下手したら壊したり、刺さって怪我したりもするからな。この辺のものは候補にしないでおこう」
「そんなことより、コアを探すのじゃろ?」
エクリィールが二人のあいだに入って口にした。
「そうだな。とにかく騒動を一刻も早く解決しないと」
ハイコドは頷く。
「そのとおりじゃ。よし、ゆくぞクマ助」
「くまー」
エクリィールがぬいぐるみと頷き合って歩き出した。
「ちょっと待て」
そんな彼女の首元を掴んでハイコドが口を開く。
「なんだそのぬいぐるみ!? どこで拾った?」
「拾ったのではないわ! わらわについてきたのじゃ!」
「くまー」
くまのぬいぐるみは手を上げて言う。
「ついてきたぁ!? んなわけあるか、ぬいぐるみだぞ!」
「そんなこと知らんわ! ついてきからついてきたんじゃ!」
「くまー」
「まあまあ、ハコ。可愛いじゃない」
くまのぬいぐるみはエクリィールにすっかり懐いているようで、彼女の腕の中で落ち着いている。女の子向けコーナーのぬいぐるみのように、暴れまわったりする様子はない。
「危なくないなら、まあ、いいんだが……」
が、ハイコドも暴れていた人形たちを見ているのでついつい警戒してしまう。
ていうか、この二人どうして警戒していないんだ、と、頭を抱えたくなる。
「ハイコド……その話はあとにしよう」
竜斗がそんなことを言い、ハイコドはなにごとかと竜斗のほうを向く。
彼は剣を構え、じりじりと後退していた。彼の視線の先を追う。
竜斗が向いた先には精密な、しかも結構大き目のイコプラがいくつも並んでいて、それらが列をなしてこちらに向いていた。
「おいおい……」
そして、その武器がこちらに向けられる。
「冗談じゃねえぞ!」
ハイコドが叫んだ。刹那響いた爆裂音に、竜斗たちは仲間をかばいつつ、物陰へと飛び込んだ。
戦車、戦闘機、戦艦など。
途切れない弾幕に、シュネーたちは押され気味だ。
「弾切れ!」
「任せるニャー!」
シュネーの弾切れのタイミングを、クラウツがカバーする。
クラウツが弾切れすると、今度はシュネーが弾幕を張った。
が、
「弾切れ」
「こっちもニャー!」
しばらくすると、タイミング悪く同時に弾切れした。
「いかずち!」
アデリーヌが前に出て攻撃するが、数に押され、じりじりと近づいてくる。
シュネーたちが銃を撃ち始めるころには、もう戦車たちはすぐそばまで迫ってきていた。
「【サンダーブラスト】!」
そんな四人の耳に声が届く。そして、稲妻が走って戦車たちの車体を焼いた。
「セレンさん!」
さゆみが叫ぶ。戦車たちに向かって駆ける人影があった。セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
二人はすれ違い際、何台かの戦闘機を壊し、四人の近くへとやってきた。
「大人のおもちゃっていうからあれに使うやつかと思ったら、ずいぶん厄介なものとやり合ってるわね!」
セレンが口を開く。さゆみたちは妄想を思い出して少し赤くなった。
「私たちも戦闘機に追われてて。多分、もう少ししたらこっちにくるわ」
セレアナが言う。
「マジニャー!? また数が増えたらどうしようもないニャー!」
クラウツが銃を撃ちながら叫んだ。
「どうする!?」
シュネーも銃を撃ちつつ叫ぶ。
「さゆみさん、手を貸して欲しいですわ」
アデリーヌが口を開いた。
「なにか方法でも?」
セレンは聞くと、アデリーヌはセレンの腰に下げている魔銃杖を示す。
「魔力を増幅させて一気に放出を」
「なるほどね」
セレンは頷いた。
「援護するわ。あなたたちも!」
セレアナが立ち上がり、シュネーたちは頷いた。シュネーから予備の銃を受け取り、さゆみも前に出る。
「行くわよ!」
「はい!」
セレンとアデリーヌが立ち上がって、魔銃杖のトリガーを引いた。魔方陣が展開され、セレンの体のエネルギーが満ちる。
それと合わせ、アデリーヌも精神を集中。前方の敵を、見据えた。
「【サンダーブラスト】!」「【天のいかずち】!」
そして、二人のエネルギーを一気に放出させる。絡み合って倍以上になった雷のエネルギーは戦車たちの周囲に強力な磁場を作り出し、彼らを飲み込む。
戦闘機は地に落ち、戦艦は倒れ。戦車も砲身を降ろして動かなくなった。
「ふう……」
息を吐いてアデリーヌが座り込む。さゆみが彼女の近くに寄った。
「コアはなさそうね」
セレアナが残骸を見て言う。
「そのようね」
セレンは少しだけ荒くなった息を整え、セレアナと並んだ。
「どこにあるのかしら、コアは」
シュネーも残骸を見て口にする。
「ニャー! コア、出てこいニャー!」
クラウツは飛び跳ねながらそう口にした。
結局、彼らの周りにも、コアは存在しなかった。
イコプラはものによってさまざまだ。武器も、装備も、いろいろある。
ミサイル、バルカン、ビーム。
統率しているものでもいるのか、それらを効果的に使った攻撃に、ハイコドたちはほとんど逃げ回るほかなかった。
「ダメです! 構えているあいだにこっちが撃たれる!」
ユリナも叫ぶ。
「誰かが突撃して、囮になるか?」
竜斗が言うが、
「危険すぎる! あの集中砲火にさらされてみろ、一瞬で蜂の巣だ!」
ハイコドがそう言って抑えた。
「せめてもう少し人がいてくれれば……」
続けて、そんなことを言う。
「うっひゃあ……ロボットが動いているとこって、やっぱカッケーじゃんな」
そんな声に答える声があった。ハイコドたちが隠れた場所の近く、棚の上に乗っかってイコプラ軍団を見ているのは、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だ。
「大人のおもちゃ……なるほど、イコプラってわけね」
セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)もその場に現れる。
「んー? セイニィなにを想像してたんですかぁー? 大人のおもちゃってなんのことですかー?」
「ななななによ! 別になんの想像もしてないわよ!」
セイニィは真っ赤になって反論する。
そんな様子を笑って見ている唯斗の頭を、誰かが叩いた。
「こら。セイニィをいじるな」
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)だ。少し高い場所から、イコプラ部隊を見つめている。
「壊さないように戦いたいところだったが……さすがに無理か」
「そうみたいね」
さらに二人。リネン・エルフト(りねん・えるふと)とヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)も、その場に現れた。
「コアがいるのか、ドクター・ハデスがいるのかわかんないけど、とにかく、止めるわよ!」
リネンが言う。
「悪いけど、あなたたちも手伝って。あれを野放しにはできない」
ヘリワードがハイコドたちに言う。ハイコドたちも頷いて、皆が、構えた。
「よし、行くぞ」
牙竜が口にし、数人が立ち上がる。
「【グラビティコントロール】!」
牙竜が叫び、イコプラたちの動きが鈍る。そのタイミングで、牙竜、唯斗、ハイコドに竜斗は飛び出した。
剣が、拳が、イコプラたちを容赦なく攻撃する。彼らの撃ちもらした敵をユリナたちが狙撃し、イコプラの前線は、がたがたに崩れた。
「背中は預けたわよ、セイニィ!」
「わかってる!」
リネンとセイニィは背中合わせになり、互いに周囲と後ろに気を配りながら攻撃を受け、いなし、そして、確実に攻撃をしてゆく。二人を狙っているイコプラは、ヘリワードの弓が貫いた。
「ほ、ほ、ほい」
唯斗は体術により、イコプラの攻撃をギリギリでかわしていた。
ミサイルは言うに及ばず、バルカンなどの連射できる武器も体をひねるだけで完全に回避する。
まるで、弾薬のほうがすり抜けているようにも見えた。
「甘いですよ……なにもかも!」
そして、そのままイコプラに接近する。
「【正中一閃突き】!」
そして一瞬でイコプラの武器装備四肢頭部全てに攻撃を加えた。イコプラは崩れ落ちる。
そんな唯斗の背中を狙う、戦闘ヘリが一体。
「油断するな!」
そのヘリを、牙竜の剣が一閃した。
「信じてたんすよ」
「嘘つけ」
笑いながら、背を合わせる。
そんな二人に迫ってきた二機の戦闘機は、
「はあっ!」
「でやっ!」
ハイコドと竜斗が、一機ずつ落とした。
「信じてたよ」
「それも嘘でしょ」
牙竜が笑いながら言って、竜斗が笑って答えた。
そうやってイコプラ部隊は連携を崩され……一つずつ、壊されていった。
三十ほどあったイコプラ隊は皆の活躍で壊滅し、あとには静寂と、壊れたイコプラの残骸だけが残った。
「こうまでなるとは……子供たちがこのことを知ったら、悲しむだろうな」
牙竜が残骸を集めて口にする。
「コアはどう?」
リネンが残骸を集めている竜斗たちに聞くが、彼は首を横に振った。
「こういうのばかりは人海戦術が最良なのよね……見つけたやつは一杯おごるわよ」
「それはいいな」
ヘリワードの発言にハイコドが答える。が、コアは見つかりそうになかった。
そうやって、残骸を集めていたそのとき、ばちばち、と、電気が走るような音がした。
「ん、なんじゃ?」
エクリィールはその音に反応し、周りを見回す。彼女の目の前には倒れたイコプラがあったが、その銃口が、彼女のほうへと向いていた。
「くまっ!」
クマ助が彼女の手から離れ、飛び出す。イコプラが放った銃弾はクマ助の腹部を貫いた。
「く、クマ助!?」
エクリィールが駆け寄る。
「危ない!」
彼女に向かって放たれた二発目はソランの【銀狼の籠手】が防いだ。
「くっ!」
エクリィールが【ワイヤークロー】を使ってイコプラの残骸を遠くへと投げ捨てる。
「クマ助、クマ助!」
「く……くま……」
クマ助は腹部を貫かれ、そこからは綿が溢れ出していた。
「おい、これは!」
「また動き出した!」
竜斗、牙竜が反応する。壊れたイコプラたちは立ち上がっていて、こわれたボディそのままに、再び武器を向けていた。
「どういうことっ!?」
リネンが叫ぶ。
銃声が、その場に大きく轟いた。
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