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正体不明の魔術師と同化現象

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正体不明の魔術師と同化現象

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第五章 遺跡・目指すはグリフォン


 魔法中毒者の遺跡前。

「遺跡にはお宝はもう無いでありますから、ここは戦闘に参加するであります」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は遺跡を見上げた。魔術師の居場所などすっかりアーデルハイト達から聞いて周知済み。
「でも魔法凍結装置で魔法が使えないのは少し大変かもしれないね」
 目的を同じくする小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が言葉を挟んだ。隣にはこの騒ぎを解決しようとやって来たこちらとは違い短いスカートを翻す元気っ娘の平行世界の親友がいた。
「心配は無用でありますよ。相手が空であれば射撃の自分の出番であります!!」
 吹雪は試製二十三式対物ライフルを構え、空のグリフォンのような魔物をにらむ。
「魔法凍結装置の破壊に向かっている方もいますので魔法については場所によれば大丈夫かと思います。取り壊し予定の遺跡ですから気にせず戦闘をして問題無いとは言っていましたし……それよりももう一つ気になる事が」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の子孫の御神楽 舞花(みかぐら・まいか)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)と共にグリフォン討伐のために現れた。
「撮影者さんの事だね、舞花ちゃん」
 ノーンが察したように舞花の気になる事を口にした。
「そうです。開示された情報にはいくつか欠けている所があります」
 舞花はこくりとうなずいた。これまで幾度となく魔術師関連の騒ぎに巻き込まれたので気になっても仕方の無い事。
「そうでありますな」
 吹雪はこくりとうなずき、護衛されている撮影者の方に目を向けた。
「この騒ぎの解決後に手紙の内容全て開示されるか誰かが本人から聞いてくれるかもしれないよ。気になっているのは他の人も同じだと思うから」
 美羽もまた撮影者を見ながら言った。伏せられた情報が明らかになる事を信じている模様。
「……そうですね。今はあの魔物を何とかするのが先ですね。大変ですが、頑張りましょう」
 舞花は三人の言葉にうなずき、遺跡の頭上を飛び回るグリフォンを見上げた。
「どんなに大きな相手でもみんながいるから大丈夫だよ!!」
 ノーンは皆の顔を見回し元気な笑顔を浮かべた。どんな大変な事でも自分や舞花に目的を同じくする他の人達がいればきっと大丈夫だと信じて疑っていなかった。
 それは
「だね」
「そうでありますよ!」
「行きましょう。一刻も早く解決するために」
 美羽、吹雪、舞花も同じだった。一人では無理でも同志がいれば負けない。
 四人はグリフォン討伐のため遺跡、いや戦場に突入した。

「魔術師を回収するだけの簡単なお仕事で終わるかと思いましたが、そんな美味い話はありませんよね、やっぱり」
 ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は事情を聞いた後、遺跡を見上げながらアーデルハイトに言った。魔術師関連の事件には数度関わっているので状況の大変さは理解している。
「そうじゃな。何事もうまくはいかぬ。大変じゃが、よろしく頼む」
 アーデルハイトは溜息を吐きつつザカコに言った。
「もちろんですよ。この世界を守りたいのは自分も同じ気持ちですから。それに多くの人達が動いていますからすぐに解決出来ますよ。それでは、自分も……」
 ザカコはアーデルハイトを励ましてから魔物討伐のため遺跡に向かった。
「十分に注意をして行くのじゃぞ」
 アーデルハイトは信頼の顔でザカコを見送った。
 ザカコは遺跡に入る前に目的を同じくする者に遭遇した。

「……魔法は使えない、か。まぁ、問題ねぇか。忍者は総合職、その程度じゃ大して影響はねぇし」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は遺跡の頭上で飛び回る魔物をにらんでいた。
「あいつの体内にいるっつーことは、吐き出させるか何かしねぇといけねぇという事か……倒した後も厄介だな」
 唯斗はグリフォン討伐だけではなく、その先の事にも考えを巡らせていた。一番の目的はグリフォン討伐ではなく魔術師奪還である。
 そこへ
「魔法凍結装置破壊の人がいますから、討伐と撮影者が間に合えば、別の方法で解決出来るかもしれませんよ」
 遺跡侵入に急いでいたザカコが言葉を挟んだ。
「……なるほど。魔術師の束縛を解いて自ら出て貰う、か。しかし、今はどうなるか分からねぇからぶっ飛ばして吐き出させる方向でいく方が無難かもしれねぇな」
 ザカコが口にする別案に考えは及ぶが、今の段階では可能性は低いため無難な方法でいく。どちらにしろダメージを与えるにはぶっ飛ばすしかないのだが。
 とりあえず、二人は遺跡に侵入し、地図を使いつつ速やかに現場へと急いだ。