薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

正体不明の魔術師と同化現象

リアクション公開中!

正体不明の魔術師と同化現象

リアクション

 イルミンスールの街。

「一般市民と森を守るために魔物の排除をするよ」
「補佐は任せて下さい」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)と共に魔物狩りに勤しむ事に。

 地割れが酷い通り。

「俺達が団長に渡した手紙の内容がこれだとはな」
「まさかこんな厄介事とは思いませんでしたね」
 ここにもエースとエオリアがいた。ただし二人は平行世界の住人であり撮影者からシャンバラ教導団の団長への手紙を受け取った者達でもあった。平行世界だけあって性格の他にエースはポニーテールでエオリアは女性と姿もこちらとは違う。
「エオリア、いかに厄介とはいえ、任務は任務だ」
 エースはそう言いながらシャンバラ教導団の軍人として課せられた任務を全うするため足早に。
「分かっています。補佐は任せて下さい」
 穏やかなエオリアもこの状況に気を引き締めエースに続いた。
 平行世界の二人は後ほど、こちらのエース達と遭遇した。

 運命の出会い後。
「こちらに来たのはやはり」
 エオリアは平行世界のエースをまじまじと見ながらここに来た目的を訊ねた。
「あぁ、遺跡の方で事態を収拾する間、一般市民の被害を最小限に留めるために」
 少々理屈っぽい言動で答える真面目系のエース少尉。
「そうですか。助かります」
 エオリアは快く協力を受けた。
「名前が同じで紛らわしいから君の事は少尉でいいかな」
「それで結構」
 エースの親しげな言動にも堅く返答する少尉。

「……そのこちらの私が男性で少し驚きました。よろしくお願いします、エオリアさん」
「えぇ、僕もです(剣の花嫁だから女性体の方が主流ですが、これは少し複雑な気分)」
 エースの副官であるエオリアとエオリアは性別が違っている事に驚いたり複雑になったりするも二人共同じ穏やかな性格のため無事に初対面を終えた。

「……君が平行世界のエオリアか。よろしくね……リアって呼んでもいいかな?」
 エースは平行世界エオリアに女性にする礼儀とばかりに花の髪飾りを贈った。
 リアは予想外の贈り物に驚き、
「あ、ありがとうございます、エースさん。その、呼び方はそれで構いません」
 顔を真っ赤にして受け取り少しうつむいて礼と呼び名について口にした。明らかに女性の反応。
 リアは早速貰った花の髪飾りを付け始めた。
「へぇ」
 その様子を眺めていたエースは珍しげな声を上げた。
「……あの、どうかしました?」
 エースの視線に気付いたリアは恐る恐る訊ねた。何かまずい事をしたかと。
「いや、リアの右眼の色は赤銅色のヘテロクロミアなんだね。髪で隠れて判らなかったよ。とても素敵だ」
 エースは柔和な笑みを浮かべてさらりと褒めてしまう。
「……こっちの世界のエースさんは優しいんですね」
 褒め言葉にまた顔を赤くしながらリアはエースの印象についてぽろり。
 ここで
「エオリア」
 堅い少尉が登場。
「あ、別に少尉が優しくないって事ではありませんから」
 リアは少尉に悪いと慌てて弁解。
 そんなリアを一瞥するなり
「……何をするかと思えば、俺の副官をナンパするのは止めてもらおうか(民間人で仕方無いとは言え別世界の自分がこんな優男だったとは)」
 軽い苛立ちを含んだ声音でエースに厳しく言い放った。
「これは紳士としての礼儀さ。それなのに怖い顔するなんて堅いね」
 エースは肩をすくめて反論。
「……状況をわきまえるんだな」
 騎士な頑固さを持つ少尉は変わらず硬い調子で言い放ち、エースに背を向けた。
 そして、目的を同じくする四人は仕事を始め、平行世界の森が出現した現場に辿り着いた。

 森混じる酷い現場。

「すぐに治療しますから」
 リアは『歴戦の回復術』で負傷した男性を治療し、
「あぁ、すまねぇ。息子が……俺を逃がすために……森に」
 男性は顔を歪め自分を逃がすために囮になった息子の事を思い出していた。
「別れた場所と時間は?」
 少尉は事情聴取をする。
「ほんの少し前だ……場所は……」
 男性は息子を思い嫌な未来に顔を歪め涙を流す。
「すぐに助け出す。父親がそんな顔をするな」
 少尉は男性を励ました後、森の入り口にいるエース達の所へ。

 少尉達が男性と話している間。
「森は俺が何とかするよ。彼らもまた突然の事で戸惑っている被害者。出来るなら傷付けずに……」
 エースは森全体が暴れている様子に悲しみ、殺傷しての侵入を嫌っていた。元々植物愛の持ち主というのもあるが。
「……悠長な事を。中には民間人がいる。長く時間を掛ける事は出来ない」
 少尉が会話に加わった。
「少尉、ほんの少しで構いませんので待って貰えませんか(エースから植物偏愛を抜いたらこんな感じなんでしょうか)」
 傷付けたくないエオリアはエースに加勢。ついでに植物愛の無いエースに新鮮だったり。
「ここは彼らの世界です。彼らの言い分を聞いてあげたらどうですか。急がば回れといいます」
 少尉とは違い穏やかなリアはエース達の言い分を聞き入れ少尉を説得。
「……」
 少尉はちらりとリアを見るなり武力を引っ込めた。
 つまりはエース達に任せると。
「すぐに説得をするよ」
 エースは『人の心、草の心』でしばらくしたら元の世界に戻れるから大人しくして欲しい旨を森に伝える。
「……警戒はしておかなければ」
 エオリアは会話中のエースの警護を。説得中、蔦が飛んでくるが『行動予測』を有しているため上手く回避し、メルトバスターで撃ち抜き安全確保に務めた。
 そして、
「何とか分かってくれたよ」
 説得は無事に成功し、森へ。ちなみに男性は先に避難所に行かせた。

 息子捜しの道々、獣系の魔物に遭遇する一行。
 エースは『ホワイトアウト』で視界を奪い、少尉は『ダブルインペイル』で弱らせ『ヘルスパーク』で周囲に電気を走らせ攻撃し魔物の戦意を喪失させ、エースの『エバーグリーン』で蔦系植物を増殖させ絡ませて捕縛していく。
 エオリアは『行動予測』で皆に敵の動きを伝えたりリアは射撃の奥義『トゥルー・グリット』で攻撃したりとエース達を補佐していた。
 しばらくして
「うわぁぁ」
 青年の悲鳴。
 エース達はすぐさま現場に駆けつけた。
 青年を狙うは群れを後ろに従えた巨大な獣。今にも喰らおうとしているのは明らか。
「もう大丈夫ですよ」
 リアは駆けつけるなり青年に声をかけ落ち着かせ、少尉は二人を守るために敵の前に立つ。
「少尉、突然別世界に飛ばされて彼も混乱しているだけだ。それに死なせたりしたら元に戻った時に別の世界に影響あると困るから殺すのだけは……」
 エースは少尉の様子から巨大な魔物を斬り捨てる事を察し、説得を試みる。
 しかし、
「……民間人の安全確保が我々軍人の役目、そちらの言い分は却下だ。嫌がろうがな」
 民間人の安全確保のため危険なら殺しも厭わない少尉はエースの言い分を却下し、戦いへ。
「エースさん達、民間人に怪我をさせる訳にはいきませんからどうか抑えて下さい」
 軍人であるリアは気遣ってから補佐をしに行った。
 リアは『カモフラージュ』と『行動予測』で上手く立ち回り攻撃を回避し、銃撃によって魔物の注意を向け、その隙に少尉が『裁きの光』による光の雨で大人しくさせ、リアの『クロスファイア』で焼き尽くす事によって葬った。

 少尉達が戦う中。
「エース、僕達は後ろの魔物を引き受けましょう。彼らは捕縛で」
 エオリアは後ろの魔物に顔を引き締めた。
「あぁ……しかし、軍人だね」
 うなずくエースは軍人二人の戦いぶりにぼそりと言葉を洩らした。
 後方の魔物達は大人しくさせ蔦で捕縛した。
 青年を救い、父親がいる避難所に送り届けてから四人は戦場に戻った。