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雪山、遭難、殺雪だるま事件

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雪山、遭難、殺雪だるま事件

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第8章 いざ、冬山レジャー


 その日の夜は酷く雪が降っていた。吹雪はがたがたと窓を揺らし、山小屋を吹き飛ばしてしまうのではとすら思えた。
 皆、山小屋の暖炉の前に集まって夜を明かした。
 とはいえ今朝までとは全く違う。食料も、火も燃料もある。ランタンも増え、室内にもツェルトを張った。
 殺雪だるま事件も犯人の自白と謝罪で丸く収まり、笑い声すら聞こえるようになっていた。
 後はこの吹雪だけ、何日か耐えれば――、そう思っていた。
 しかし朝になってみると、吹雪は止んでいた。
 空は澄み渡った快晴で、空気が気持ちいい。一面キラキラ光ってサラサラの雪に反射して、眩しさに皆目を細めた。引き締めていた口元はほころんでいる。
「これで今日は別荘まで行けるね!」
 皆、張り切って準備をし、山小屋の主人夫妻と共に別荘に出発した。

 ……別荘に向かう道すがら、彼らはかまくらの中から聞こえてくる小さな声に気が付いた。
 覗いてみると、雪猫と小さな5匹の仔猫たちに寄り添って寝ていた。生まれたばかりの仔猫はごく薄い毛が生えただけで、目もまだ明かず、うにゃうにゃと寄り添っている。まるで毛玉のようだった。
 親猫の雪猫は、はじめ毛を逆立てて威嚇していたが、運んできてくれた彼らの事が判ったのか、自身だけ出てきて撫でさせてくれた。
 ミリアはいいの?と聞くと手を伸ばした。
「がんばったの。マッサージしてあげるの」
 雪猫、というのは名前や住まいだけではなかった。本当の猫と違うのは、ふわふわの毛側もひんやりと冷たかったことだ。
「もふもふ、つめたい、もふもふっ、つめたいっ」
 それから別荘に無事到着した一行は、予定通り思いきりレジャーを楽しんだ。
 更に数日後、帰り道。再度かまくらを覗くと、雪猫は仔猫を連れて新しい寝床に出発するところだった。
「さて、秘密にしておいた方がいいのかねぇ。変な人間に狩られたりしないように、ね」
 ベルの言葉にもう一度雪猫を眺めると、親子は一度こちらを振り返り、雪の上をゆっくりと歩み去っていった。
「ただのレジャーが大変な旅行になっちゃったね」
 静香の晴れ晴れとした顔に、ラズィーヤは扇を優雅に開いて微笑んだ。
「あら、油断はいけませんわよ静香さん」
「そうだね、家に帰るまでが遠足、だもんね」
 静香の元気な声は、帰路を急ぐ生徒たちの笑い声に溶けていった。

担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 改めまして、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 今年初のリアクションとなりました。
 そして、吹雪と野生生物、そして殺雪だるま事件?のどちらも解明しましてのハッピーエンドになりました。今回は情報が少ない中でしたので、遭難が続いたり、雪猫と戦って倒したり、雪だるま事件が解決しなかったり……幾つかの可能性を想定していましたが、無事に解決できました。
 また山が吹雪くのは数十年後でしょうけれど、その時には山小屋の夫妻が、人が山に入らないように注意するのかな、と思います。

 次回ですが、天使と堕天使がバトルするもの……を考えていたのですが、『蒼空のフロンティア』も最終シリーズと聞き、終了に向けての事を考えるようになりました。
 ですので次回は、もうすぐ春、ということで、卒業・最後に向けて……もうすぐご卒業の皆さん、春からの進路を悩まれる方……そういった方向けに、百合園女学院での進路相談会を行いたいと思います。また、他校の方とは進路以外のお話もできたらと思っています。内容としては、以前合同で行いました「話をしましょう」の規模が小さくなったものでしょうか。
 それでは、宜しければまた次回お会いいたしましょう。