校長室
種もみ学院~配り愛
リアクション公開中!
ファイル7 契約の泉で沙菜とゆる族のエミリオは対面を果たした。 エミリオは白クマのゆる族だ。 そして、沙菜の印象は間違いではなかった。 一部の者にはかわいく感じるだろうが、大半の者は気味悪さを覚えるだろう。 エミリオが出会い系に走ったのも仕方のないことだったかもしれない。 沙菜に睨まれ、エミリオはおろおろしていた。 又吉はこうなることは予測していたが、映像に収めることはやめなかった。 もとより、感動の対面は期待していない。 それよりも、この現実を配信し、出会い系サイトでの契約の是非について考えてほしいと思っていた。 (顔と音声だけは編集してやるか) そんなことを考えていた。 しかし、このままではいつまでたっても変化は訪れそうにない。 武尊も唯斗もどうしたものかと思っている時、 「おお! 間に合ったー!」 魔法少女シリウス・スイーツコスチュームに変身したシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)がバスケットを抱えて駆けこんできた。 沙菜とエミリオの視線がそれたことで、場の空気が幾分かやわらいだ。 シリウスは、バラックに設置された簡易キッチンでみらくるレシピから選んで作った虹色スイーツを二人の前に差し出した。 綺麗なラッピングもシリウスの手による。 「お互い言いたいこともあるだろうけど、まずは食べなよ。話はそれからだ」 長い間放置されていたパラミタ人とほったらかしにしていた地球人だ。最初からうまくいくとは思っていない。 沙菜は差し出されたチョコを見た後、エミリオに小さな声で言った。 「あんたが開けたら?」 エミリオはためらった後、シリウスにお礼を言って包みを開いた。 「こ、これは……クマ!?」 「いや、偶然。偶然なんだ! 狙ってクマにしたわけじゃないんだ」 シリウスが作ったチョコは、かわいいクマの形だった。 それを覗き込んだ沙菜が、 「それよ!」 と、叫ぶ。 そして、その勢いのままエミリオにまくし立てた。 「あんたのその白色、なんか不自然なのよ。……もしかして、染めてんの?」 「……ギクッ」 あからさまに肩を震わせたエミリオに視線が集中する。 沙菜は泉を指さして言った。 「選択が必要ね」 エミリオはすかさず逃げ出したが、百戦錬磨の武尊や唯斗に加えシリウスにも追いかけられてあっさり捕まった。 そして、泉に放り投げられた。 エミリオはヒグマのゆる族だった。 チョコ配達のバイトも終わった頃、天音とブルーズによりバレンタインパーティが開かれた。 初めてチョコレートファウンテンに接する者も多く、大騒ぎのパーティになった。 シリウスの虹色スイーツやコハクが種もみじいさん達と作ったおにぎりもあった。 「チョコと抹茶が意外とおいしいらしいな」 おにぎりを見て和風味を思い出したブルーズが呟くと、キャバ嬢が反応した。 「抹茶の点て方、教えて! いけそうならメニューに加えたいわ」 「野点か。悪くないな。どうせなら着物も着たらどうだ?」 「着物! 美由子さんに相談してみようっと」 着物は高いので、どんなに安物でも彼女には手が出ない。けれど、資産家の美由子ならと期待したのだ。 「手作りチョコも教えてよ」 「簡単で味も見目も良いものをいくつか知っている」 「やった! おーい、みんなー!」 と、彼女がキャバ嬢仲間を呼び集めたため、ブルーズは女の子達に囲まれて臨時のお菓子教室を開くことになった。 カンゾーとチョウコに広田との話し合いの結果を報告していた天音が、それを見てクスッと笑う。 「モテモテだな」 「先生としてね」 「しかしまあ、これで自由に使える金が増えたら嬉しいな。移住してきた奴らの要望も聞けるだろう。それが発展に繋がるなら何よりだ。ありがとな」 「君達の努力が引き寄せたんだよ」 カンゾーと天音が話していると、ルカルカがトリュフの詰まった箱を持ってやって来た。 「いつもお疲れ様。これ、ルカからプレゼント」 「俺にか? 奇跡か!?」 「ふふふっ、みんなにだよ♪」 だよなー、と頭をかくカンゾー。 「あの二人、会えたかなぁ」 「会えたんじゃないか」 カンゾーの呟きにダリルが返す。 ルカルカはダリルにもチョコを渡した。 「ダリルもありがとう。これはパートナーチョコだよ」 「俺にもくれるのか、ありがとう……ってこれ、俺が作ったトリュフじゃないか!」 「だって、売ってるのよりおいしいんだもん」 騒ぐ二人の様子から、もらったトリュフチョコもダリルが作ったんだろうなと思うカンゾー達だった。 バレンタインパーティは始終和やかな雰囲気のまま終わった。
▼担当マスター
冷泉みのり
▼マスターコメント
お待たせしました。『種もみ学院〜配り愛』のリアクションをお届けいたします。 皆さん、バレンタインはどう過ごされましたか? 冷泉はプレゼント用と自分用を買ったため出費が……あわわ、な感じでした。 お財布は寂しくなりましたが、いろんなチョコを見ているのは幸せでした。 シナリオに参加してくださった皆様、ありがとうございました。