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クレイジーな新薬実験

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クレイジーな新薬実験

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終章
家路

 どすどすどす、と荒々しい足音で二体のオークが眠ったオークを担ぎながら、こちらに向かってくるオークの群れへと駆けていく。
 野太い声のような、ぼふぼふという音を発しながら。
 イルミンスール魔法学校の外、契約者たちに見送られて、傷も治してもらったオークたちは、彼らに目もくれずに去っていく。
 オークの群れは近づいてくる誰かの姿に一瞬身構えたが、やがてそれが見慣れた仲間の姿と気付いたのだろう。群れは集合し、帰ってきた仲間を迎えた。
 しばらくの間わいわい騒いでいたが、やがてオークたちは身をひるがえし、自分たちの暮らす森へと帰って行った。

「さーて、実験室の片付けでもするか」
「あれ? 捕まえた研究者たちは?」
「ああ、今あっちでプロレス技掛けられながら尋問されてるよ」
「さっきパイルドライバー掛けられてたな。痛そうだった」
「にしても、あの護衛の契約者たち、強かったな。何者なんだろうな」
「ああ。あの人たちがいなかったら全滅してたかもな」
「ともあれ、なんだか無性に帰りたくなったな。今日は寄り道しないでまっすぐ帰ろうかな」

 事態が完全に落ち着き、一同は何か思うところがあったのか、それとも気が抜けたのか、少しぼんやりとしていた。

「ミルディア、大丈夫? 遅くなっちゃってゴメン」
「あはは、いいっていいって。骨の一本や二本は覚悟してたし。いしゅたんに怪我なくてよかったよ。手当てしたら、帰ろっか」

「咲耶さん、ペルセポネさん。落ち着きましたか?」
「うう、取り乱してすみません、舞花さん。兄さんのせいで酷い目に遭いました」
「あう、みっともない姿をお見せしてしまいました……」

「ちょ、待ってくれ! 確かにオークをより凶暴化させてしまい、被害を大きくしてしまったことは認める! 俺がやった! それは俺のせいだ! うん! だが例の研究チームとはなぁんにも関係はない! 本当だ!」
「オイ誰か、涼介さんか佐那さんのところに連れてってやれ」
「待て待て待て待て! プロレス技を掛けられても何も出ないぞ! 俺は本当に通りすがりの天才科学者だ!」

 と、怪我を負った面々はこの通り元気だ。

 オークたちは、嬉しそうだった。
 少なくとも、騒動に参加、あるいは巻き込まれた者たちにはそう見えた。大切な仲間を取り戻すことができ、そして仲間のもとに帰れたオーク。
 結果として研究者たちには半分逃げられてしまったし、研究データも持ち出されてしまったが、本来の目的は達成することはできた。
 その後の取り調べとお仕置きで、二名の研究者は監視下に置かれ、しかし科学的能力は確かにあることから色々な研究プロジェクトに全面的に協力することになった。

■■■

 その騒動から一週間。
 クレイジーな実験騒動以降、ケミカルな事件は今のところ起こっていない。
 逃亡した研究者たちと刹那一行の行方も、今のところは分かってはいなかった。
 今日もイルミンスール魔法学校をはじめとする各地の学校は周囲をパトロールし、森の中ではオークがスリーマンセルで徘徊している。

 つまるところ、本日も平和であった。

担当マスターより

▼担当マスター

佐久間豊

▼マスターコメント

 病気にはあまりならないけれど口内炎がよくできるので薬を使っています、佐久間豊です。毎回どうして健康なのに薬を飲まなきゃならんのだ、とか思いつつ飲んでます。今回、自分の企画力不足のため、思いのほかあまり参加者が集まりませんでした。申し訳ございません、精進致します。
 ともあれ、今回参加してくださった方々に感謝したいと思います。ありがとうございました。
 ちなみにドーピングには決まって副作用があります。その他、強い効果を持つ薬にも、たいてい副作用があります。使用上の注意をよく読み、用法容量を守って正しくお使いください。
 では、また別のシナリオでお会いできればと思います。

▼マスター個別コメント