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リアクション
「今回は七夕だし、砂浜だし、花火もあるっぽいし。人が集まるし、私達も頑張るよ。みんなを楽しませるために……それに儲けたいし」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)はまだ人がいない砂浜で営業について仲間と話していた。
「売り子は全員メイド服だし……ってあれ? 百合園に慣れてるとメイドって普通にいるよね? ん〜、面白くないから何かインパクトが欲しいなぁ」
ミルディアは自分と和泉 真奈(いずみ・まな)とイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)の格好を見て肝心な事に気付いた。店舗と出す料理は万端だが、一番目に付く売り子の火力不足だと。
「……インパクト……」
ミルディアが悩み出した瞬間、
「水着じゃー! 水着姿で売るのじゃー♪」
イシュタンの叫び声が割って入る。
「水着?」
思わぬ答えに聞き返すミルディア。
「そうだよ。みるでぃの言っている事は商人としては正しいんだろうけど、みるでぃの商売は遊びが足りないよ……というか、もっとキャッチーでインパクトのあるネタを提供しないと!!」
イシュタンはうんうんと頷きつつ水着提案について理由を語った。
「水着かぁ」
ありかもと考え始めるミルディア。
「そうそう、夏と言えば、メイドよりも水着!! キワモノ料理を出しても売れないし、だったら見た目で勝負って事で!! 水着はスク水だね……ってオヤジ臭いかな?」
イシュタンはさらに説明を続ける。
「……」
黙するミルディアと真奈。
それを見た途端
「だったら普通の水着姿で妥協するよ」
スク水案を諦め、ただの水着で大人しくする旨を言って二人の反応を見る。
すると
「別にいしゅたんも売り子やるなら、それもありかもね?」
ミルディアは好感触な反応を示す。ただし条件付き。
「え? あたいも着るの?」
イシュタンは自分を指さしながら聞き返した。
「うん、言い出したのはいしゅたんだし」
ミルディアは肩を竦めながら軽く言い放った。
「うー、ちょっと恥かしいけど……言い出しっぺがしないとはあれだし……仕方無い……」
イシュタンは溜息を吐き出し条件を呑む事に。藪から蛇だ。
これでインパクト問題も解決と思いきや
「み、水着って、本当に水着着て接客をするのですか!!!」
真奈が赤面して勢い込んできた。
「言い出しっぺのいしゅたんもやるって言ってるし」
ミルディアはイシュタンを指さしながら軽く真奈の訴えを撤去としようとするが
「それでもいけません。卑猥です! 不健全です!! そもそも商売するのに何で水着姿にならないといけないんですかっ! 久しぶりに屋台を出すって聞いたから参加させて頂きましたら……どうして……」
納得出来ない真奈は顔を赤くしたまま訴えを続ける。
「そうは言ってももうそろそろ開店しないと……」
ミルディアは放って置いたら長くなりそうな真奈の訴えに言葉を挟んだ。あと少しすれば人も増えて絶好の稼ぎ時。それなのにいつまでも不毛な話し合いをしている訳にはいかないから。
話を聞いた途端、
「そうですね。これは仕事、仕事として参加すると申した以上、させて頂きますよ。水着姿での売り子を……身体には自信ありますし(ただ、ミルディが気にされないかが気になりますね。最近、視線から軽い殺気を感じますし)」
真奈は気を落ち着かせ、来たからには役目を全うすると覚悟を決めた。ちらりとミルディアを盗み見て最近の心配事を胸中でつぶやいたり。
ようやくコスチュームが決まったところで
「それじゃ、始めようか。あたいは後ろで注文の品を作るから接客は……」
「任せて♪」
イシュタンとミルディアはそれぞれの役割を話し合い、
「……始めるんですね」
真奈は呼吸を整え、営業開始に向けて気を落ち着かせていた。
ともかく三人は水着姿となり、ソフトクリームとかき氷の販売を始めた。
ちなみにメニューは定番のいちご、メロン、ブルーハワイからソフトクリーム付き抹茶、練乳、隠しで砂糖水と豊富なメニューに加え、裏メニューのソフトクリームを載せかき氷というとっておきまで用意してあったり。
営業中。
「ソフトクリームにかき氷いかがですか? 両方のっけもありですよ〜♪」
ミルディアは元気に呼び込みを始めた。
しばらくして
「アディ、かき氷でも食べよう」
「そうですわね」
さゆみとアデリーヌが訪れた。
「いらっしゃいませ♪」
最高の営業スマイルでミルディアが迎えると
「かき氷にアイスクリームをお願い。シロップはブルーハワイで」
「わたくしもかき氷にアイスクリームでシロップはスイでお願いしますわ」
さゆみとアデリーヌは欲張りかき氷を注文した。
「少々お待ちを〜♪」
調理担当のイシュタンが軽やかな声を上げ、さくさくとかき氷を作り、ちょこんとアイスクリームをのっけて完成。出来上がった物をミルディアに託す。
「どうぞー」
注文した商品を渡すと
「ありがとう」
「美味しそうですわ」
さゆみとアデリーヌはにこやかに礼を言って仲良く散策に戻った。
「ありがとーござーっしたぁ♪」
ミルディアは良く通る声で客達を見送った。
その後
「いらっしゃいませ」
真奈が二人の客を迎えた。
「抹茶のかき氷を一つ」
「アイスクリームを一つ」
ゆかりとマリエッタが現れ、それぞれ注文した。
「少々お待ちを」
イシュタンは手早くかき氷とアイスクリームを作り上げ、真奈に託す。
そして
「はい、ご注文の品になります」
笑顔で商品を客に手渡すと
「ありがとう」
「美味しそうね」
ゆかりとマリエッタは受け取り美味しそうに食べながら行った。
「ご来店ありがとうございました」
真奈はよく響く声で客達を見送った。
この後も次々と客が訪れ、大忙しであった。つまりミルディアの希望通りたっぷりと稼ぐ事が出来たという。もちろん水着効果発揮で来た客もいた。
次に訪れたのは仲の良い夫婦、メシエとリリア。
「いらっしゃいませ♪」
最高の営業スマイルでミルディアが迎えると
「かき氷にアイスクリームをお願い。シロップはいちごで」
リリアは即注文。
「少々お待ちを〜♪」
調理担当のイシュタンは手際よく注文の品を作り上げ、出来上がった物をミルディアに託し、
「どうぞー」
注文した商品を渡すと
「ありがとう……冷たくて美味しいわ。メシエ、ありがとう」
受け取るなり早速、さくっと一口食べるリリア。
「御馳走すると約束したからね」
メシエは何気に嬉しそうに言った。
仲良く去るメシエ達を見送りながら
「ありがとーござーっしたぁ♪」
ミルディアは良く通る声で客達を見送った。