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七夕祭りinパラミタ内海

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七夕祭りinパラミタ内海

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■七夕祭り・5


「賑やかは賑やかでもやっぱりこういうのはいいな」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は祭り参加者達を眺めながら感慨深くつぶやいた。同じ賑やかでも事件ではなく本日のような平和な賑やかさがいい。それはここにいる誰もが同じだろう。
「折角の七夕、まずは定番からだな」
 陽一は屋台よりもまず笹が設置されている場所に向かった。
 道々
「そう言えば、主催者はあの二人だったな。またどこぞで騒ぎを起こしているだろうな。あの二人が大人しくしている姿なんて今まで見た事無いし」
 陽一はふと祭り主催者が馴染みの双子である事を思い出し、口元に苦笑をもらしていた。
「まぁ、お仕置きは他の人達がするだろうし、俺はしゅんとしているあの二人を励ます役でもするか」
 本日も毎度のようにお仕置きに参加するかと思いきや珍しい役目に勤しむ事に。

 浜辺。

 到着するなり
「まずは笹飾りだな。定番の織姫と牽牛に網飾りと吹き流しに後は……」
 陽一はペンギンアヴァターラ・ヘルムのペンタと特戦隊に手伝って貰い、いちまいぼしやちょうちんにさんかくつづりなども含む紙細工を作った。
 そして、笹に飾り
「なかなか、いい感じだ」
 お洒落になった笹を見て満足した所で陽一が次に手にしたのは願い事を書く短冊。
「……願い事か(少し切実過ぎる気もするが、これだな。世界が滅びませんように)」
 少し短冊を見つめてから陽一はにさらさらと書いて笹に飾った。
 それから連れて来た従者や犬達に短冊を見せて
「みんなも願い事を書かないか? 俺が代筆するから何が書きたいか考えてくれ」
 陽一は笑顔で皆に言った。ただし特戦隊は自身で書けるため短冊を渡した。
 しばらくしてから
「…………(ケルベロスジュニアとペンタは……パラミタセントバーナードは……)」
『テレパシー』で皆の思考を受け取り、次々と代筆し、特戦隊の短冊も回収してから笹に飾った。それぞれ彼ららしい願い事であった。
「よし、あとは祭りを楽しむか」
 陽一は笹を一通り見てから星空を見上げたり屋台を回ったりして従者達とたっぷりと楽しみ夜明けを迎えた。途中、例の如く騒ぎを起こす双子とも遭遇した。

 夜明け。
 海に流され、笹飾りや願い事を書いた短冊が海水に触れ、次々と光の粒子に姿を変えてゆるりと天へと還る。
「……」
 顔を出した太陽の光に照らされ一層輝く光の粒子を陽一は瞬きせず見つめ
「……(世界が滅びない様に頑張らないとな)」
 気持ちを新たにした。