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リアクション
浜辺。
「海だ! 七夕だ! バカンスだ! キャンプだ!」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は星空に彩られた海を前に両手を天に伸ばし、豪快に叫んでいた。
「ついでに狩りもな」
『シェイプチェンジ』で人間の青年姿になったカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)も加わり
「それからBBQと酒、最後は花火だな。でかいのをドンドンあげるぞ」
「後は主催者と戯れるだな」
夏侯 淵(かこう・えん)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も加わった。
「と言う事でテント張るよ!!」
ルカルカの言葉を合図に皆で協力して持参したテントを張った。
テント設営後。
「今日は思いっきりリフレッシュするよ。普段から気合入れてキリッとしていると疲れちゃうから……しかも星が海に映り込んで幻想的だし」
ルカルカは波際に近付き、星の海のほぅと声を上げた。
「海といやぁ、これだろ。一網打尽だぜ!」
網を抱えたカルキノスがルカルカの隣に立った。
「それはちょっと、可哀想かも」
ルカルカは少し悲しそう海をにらんだ。
「捕るのは食べる分だけだ」
カルキノスは泳ぐ仲間から離れた場所で漁業を開始した。
カルキノスを除く三人は水中で呼吸が出来るようにウォータブリージングリングを使い『ダークビジョン』で暗視も出来るようにしてから
夜の海中を楽しむ事にした。
海中。
「…………(綺麗、海面にから月の光が注いで)」
ルカルカは射し込む月の光でほのかに輝く海底を眺めほぅと心を癒していた。
「…………(なかなかの光景だな。よし)」
淵は『獣寄せの口笛』を発して魚の群れを呼び寄せた。
すぐにカラフルな魚がルカルカ達の周りに遊泳する。
「……(どうだ、なかなか感動的だろ)」
「…………(わぁぁ)」
淵とルカルカは美しい光景に感動。
そこに
「…………(ほぅ、なかなかいい光景だな)」
泳ぐタイヤキに掴まったダリルも加わり魚と戯れ始めた。
しかも
「……(深い所も行ってみよう)」
ルカルカはさらに深い所にも潜ったりした。
三人がのんびりと海中遊泳を楽しんでいる間、カルキノスは漁業に勤しんでいた。
「さてと、始めるか」
カルキノスはウォータブリージングリングを使い『ダークビジョン』で暗視も出来るようにしてから海中に潜り、巧みに網を使い、魚を捕獲していく。
「……(これぐらいでいいか)」
ルカルカに言った通り捕獲するのは食べる分だけにした。
海面に上がり捕獲した食料を高速飛空艇「ホーク」の冷蔵庫に放り込んでから『シェイプチェンジ』で巨大なエイに姿を変えた。
その時、
「便利な能力だな。もう人外と言われても仕方ないな」
海面から顔出したダリルのツッコミを受けた。
「電気信号になる奴に言われたくねぇよ」
カルキノスは笑いながら答え
「乗りたかったら乗ってもいいぜ」
巨大エイのカルキノスが乗車を勧めてみると
「それじゃ、楽しませて貰おうか」
ダリルは迷わず乗った。
「んじゃ、潜るぜ」
カルキノスは勢いよく海中に潜った。
海中。
「……(まるで浦島太郎だな。乗っているのが亀ではなくエイだが)」
「……(折角だ、深い所まで行くか)」
ダリルは巨大エイになったカルキノスの背に乗り、のんびり遊覧していたが、黒々とした巨大な生物が海面に向かって泳いでいるのを発見した途端、リラックスタイムは終わった。
なぜなら魔物だったからだ。
「……(あれは魔物だ。海面に向かってる。まずいな)」
「……(皆を集めるか)」
カルキノスは警戒し、ダリルは『テレパシー』でルカルカ達に魔物退治の招集をかけた。
すぐさま全員海から出て各自聖獣:真スレイプニルに跨り
「みんなが楽しく過ごしている海、護らなきゃね」
「あぁ、祭りで怪我人じゃつまんねぇからな」
「相手は巨大だ。油断するなよ」
ルカルカ、淵、ダリルは魔物が飛び出して来た瞬間、物凄い勢いで飛行し通りすがりに攻撃し、身体が傾いた瞬間、
「!!」
カルキノスは第三の眼、魔竜の輝眼で魔物の戦意を挫き怯えさせ畏怖させすくませた。
「大人しく帰るなら殺したりはしねぇ。さぁ、どうする?」
カルキノスの鋭利な視線が魔物を射貫く。
魔物は本能なのかカルキノスを自分よりも強い相手と認識したのか怯えながら海に戻って行った。
魔物退治後。
「ふぅ、これでお祭りも大丈夫だね」
ルカルカは祭りが台無しにならなかった事に胸を撫で下ろした。
「さて、仕切り直しにサーフィンとしゃれ込むか、淵、頼むぜ!」
人間姿のカルキノスは浜辺に立ち、淵の方に振り返った。
「あぁ、任せろ……BBQと酒とか花火の用意を頼む」
そう言うやいなや『水門遁甲・創操瀑の術』を使い、海の水を操りビッグウェーブを作り出し、カルキノスは夜のサーフィンを楽しむ。
「ルカとダリルが用意するよ!」
ルカルカは声高に淵に言った。
「俺が捕った魚も使え」
星空の下、陽気に波乗りしながらカルキノスが言った。
「りょーかい♪」
ルカルカはおどけ気味の敬礼をしてからバーベキューの準備を始めた。ちなみに料理は『調理』を有するダリルが主導で行う。
「花火はキャンプファイヤーが始まる少し前……もう打ち上げてもいいか。あいつらに任せたら惨事になりかねんからな」
『コンピューター』を有するダリルは『電子変化』して花火制御用ノートパソコン、シャンバラ電機のノートパソコンの中からコンピューター制御で花火のメニューを色々操作し始めた。
ダリル達の声を聞きつけ
「聞こえたぞ、惨事になるとかどうとか」
「オレ達の花火は凄いんだぞ」
文句を垂れながら双子が登場。隣にはロズもいる。
「おっ、来たか。お前らもやろうぜー」
波乗り中のカルキノスは陽気に誘った。
「?」
見慣れぬ人物に同時に首を傾げる双子。
「俺だよ、俺俺、カルキノスだって」
カルキノスは浜辺に降り立ち、名乗ってみるが、
「えーと」
まだ首を傾げるばかり。
「あ、そっか、お前ら双子はあんまり俺と会ったことねえもんな」
双子の様子からカルキノスは笑いながらあまり交流回数が少ない事に気付くなり姿を元のドラゴニュートに戻った。
その様子を見た双子は
「すげぇ」
「人が竜になった」
驚き、興奮する。
「いやいや、竜が人になったんだ。こっちが元の姿だ」
カルキノスは笑いながら双子の言を正した。
「おもしれぇな。俺達もサーフィンやるぜ」
「それで、あいつはいないのか。声が聞こえたけどさ」
双子は遊ぶ気満々だが、声は聞けどいない面子に気付いた。
「ダリル、二人がすごーく会いたいって♪」
ルカルカは笑いながら意地悪な事をノートパソコンに向かって言った。
「ちょっ、待て」
「んなこと言ってねぇぞ」
ルカルカの余計な一言に大慌てする双子。
「ホウ、オレニアイタイト、ソレハコウエイダ」
『テレパシー』で会話が出来るにもか関わらず双子を驚かせるためにノートパソコンの音声で返答するダリル。
「!!」
予想通りびっくりする双子。
「機械の中から直接操作してんだよ。花火を。出て来いよ」
淵が代表となって説明した。
「アァ、スグニデル」
ダリルはそう言うなり出て来た。
そして
「食べる前に短冊を書くよー。三人も書くよね」
ルカルカのこの提案には当然
「おう」
「全部の笹に願い事を吊すつもりだからな」
双子はノリノリで受けた。
「……あぁ」
ロズもまたうなずいた。
「来年のパラミタ大陸がどうなるかは分からぬが、俺達は何所ででも強く生きていけると俺は思っておる」
淵は星々輝く天と海を眺めながら思う。
「当たり前じゃん」
「となると願いはやっぱり、これだよな」
「あぁ」
ルカルカ、淵、カルキノスの願い事はただ一つ“世界平和”だった。
願い事が書けた所で短冊を吊していくが、
「ダリルは、何も書いてないね?」
ルカルカはダリルの短冊が真っ白なのに気付いた。
「願いは書くものではない。実現させるものだ」
ダリルは自分の短冊を見ながらきっぱりと言い切った。
「ふむ、一理あるな」
淵がこくりと頷くと
「確かに実現させるものだよな」
「オレ達も頑張らないとな」
調子に乗った双子が同意とばかりにうなずく。
その間に
「……ロズが幸せになりますように、三人が幸せになりますように……まともだな……」
「こっちに悪戯成功しますようにってあるよ」
ダリルとルカルカが双子とロズの短冊を見て双子の願い事を読み上げた。
「……全くお前らは」
ダリルは少々呆れたように双子を見た。
その時、花火が打ち上げられ、空に様々な花が咲き誇った。
「いいだろ。それより、花火綺麗じゃん」
「何か食べるんだろ」
双子は話を興味のあるものに変えた。
「カルキノスが捕った魚があるから結構豪勢だし美味しいよ♪」
ルカルカもすっかり食べたい気分。
「そりゃ、楽しみだな」
「おっ、テントじゃん」
ヒスミは料理に期待し、キスミはテントに気付きニヤリと悪い笑顔を浮かべる。
「入ってもいいが、悪さはするなよ。見張っておけ」
バーベキュー作業に入りながら仲間に言った。
「……見張るって何にもしねぇって」
「じゃ、さっきのサーフィンやりてぇ」
双子は文句を言ったりサーフィンに目を付けたりと落ち着きが無い。
「……何か手伝う事はあるか」
真面目なロズは作業をするダリルに声をかけた。
「手伝ってくれるのか。助かる」
折角の申し出のためダリルはロズに手伝って貰う事にした。
バーベキューの準備をしつつ
「あいつらの相手は疲れるだろ」
ダリルは手伝ってくれるロズに労いを込めて言った。
「疲れる。少しでも目を離したら……今日も隙を見ては」
ロズは作業をしながら今日の事を話した。
「やらかしたのか。まぁ、お前も楽しんでいるようでよかった。願い事叶うといいな」
ダリルはロズが双子に振り回されながらも楽しんでいる事を喜び、彼の願い事が叶えばいいと思った。双子とは真逆な対応なのは双子が悪さをするせいもあるが、同じ人工生命体としての親しみがあるからだろう。
「……そう思う」
ロズは騒がしい双子を眺めながらこくりとうなずいた。
その後、料理は出来上がり、皆を呼び集めてバーべーキューが始まった。
バーベキュー開始後。
「花火に酒に……うめぇ!!」
淵は花火を見つつ豪快に酒を飲み
「んー、美味しい」
「うめぇ」
ルカルカとカルキノスは料理を頬張り
「食べるぞー」
「魚、うまー」
双子も口いっぱいに料理を頬張る。
「焦げる前に食べろ。ロズ、次はそれを頼む」
「これか……分かった」
ダリルとロズは魚や持参した食材を焦がさないよう焼いていった。
『調理』を有するダリルが料理を担当しているため味は保証付きである。
散々バーベキューを楽しんだ双子達はキャンプファイヤーが始まるとそちらに行き、騒ぎを起こした。
ルカルカ達は賑やかに祭りを楽しんでいた。