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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう
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リアクション

 現在、2024年。イルミンスール魔法学校の校内。

「はぁ、疲れたぁ。何であいつに追いかけ回されなきゃらねぇんだよ」
「ちょっと、休もうぜ」
 散々吹雪に遊ばれヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)はすっかり心身ともに疲れていた。
 その隣には
「……(この疲れ具合なら悪さをする気力もなかろう)」
 双子が疲れ切っているのを密かに歓迎するロズがいた。ロズが押しつけられた実験室の片付けを終えた時が丁度遊びが終了した時だったのだ。
 三人で校内をぶらぶらと歩いている時
「双子ちゃんとロズさんに会いたくて学校に来たのだ!」
 天禰 薫(あまね・かおる)が登場。薫は久しぶりに双子とロズに会いたくてやって来たのだ。
 その傍には
「ちー、ふーたーご、ヒースーミ、キースーミ、ろーずー」
「キュピピキュ!(双子のお兄ちゃん、お話しよう!)」
 双子達の周りを歩き回るちーの白もこちゃんとわたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)がいた。
「わたぼちゃん、お話しようと言ってるのだ」
 薫がぴきゅう語が分からない双子のために通訳してわたぼちゃんの言葉を伝えた。
「元気そうだな白もこちゃんもわたぼちゃんも」
「お話しするならお菓子を食べながらしようぜ! 天気も良いし中庭でさ」
 双子は癒し系の登場にすっかり元気をチャージするが
「さっき、随分疲れていたが、また何かやらかしたのか」
「お話なら……双子、秋にちなんで思い出を語ってみようか?」
 熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)が現れると
「……」
 双子は一様に元気を失った。と言うより警戒と怯えを見せた。何せこれまで悪さをしでかす度に痛く仕置きをされて来たので。
「……では準備をしよう」
 ロズが双子には構わず中庭でお喋りを楽しめるよう準備を始めた。ロズの監視の下お菓子を双子に作らせた。
 そして、すぐに準備は整い中庭で楽しいお喋りが始まった。

 イルミンスール魔法学校、中庭。

「双子ちゃん、お菓子、美味しいのだ。ありがとうなのだ」
 薫は秋の味覚をふんだんに使った双子作のお菓子を美味しそうに頬張った。
「今回は悪戯を仕込む隙が無かったようだねぇ」
 孝明はくすくすと笑いながらお菓子を食べていた。
「毎回、こうだと平和なんだがな」
 孝高は警戒無しで食べられる今日を少し嫌味に言った。
「…………なんだよぉ」
「………もう嫌だ」
 双子はお菓子を手にしたままうなだれた。
「ピキュピキュピ(おいしいお菓子ありがとう)」
 わたぼちゃんは美味しくお菓子を食べてから
「ピキュピキュピキュ(お礼に冷凍みかんをあげる)」
 お礼にと『サイコキネシス』で冷凍みかんを双子に渡した。きちんと投げずに。
「くれんのか? ありがとうな」
「美味しく食べるからな」
 双子はにこにこと嬉しそうに冷凍みかんを頬張った。
 それから双子は
「白もこちゃんも食べてみろよ」
「美味しいぞ」
 白もこちゃんにお菓子を差し出すと
「ちー」
 白もこちゃんは一声鳴き美味しそうに食べた。
 そして
「おいしーい、おいしーい」
 白もこちゃんは美味しいお菓子が嬉しかったのか双子やロズの肩に乗り頬ずりして回った。
「おいおい、可愛いな」
「相変わらずもふもふしてるな」
 双子は肩に乗ってきた白もこちゃんを撫で撫でした。
「……」
 ロズは白もこちゃんの可愛さに口元を緩め、撫でた。
 ふと秋の爽やかな風が中庭を吹き抜けると
「秋になって何となく感慨深くなったねぇ。我たち、色んな事をして来たよね。すっごく楽しかったのだ」
 薫が不意に昔を振り返り始めた。
「……まぁ」
「確かに楽しかったけどさぁ」
 双子はうなずきながらちろりと熊父子を見た。
「……言っているだろ、お前らが何もしなければ俺達も何もしない」
 孝高が事ある事に言っている事を言いながらお菓子を頬張った。
「……」
 双子はぐぅの音も出ず黙した。
「最初は双子ちゃんの勇者さんと魔王さんにお仕置きする事から始まったけれど、今ではこうして楽しくお話しできて、我は嬉しいのだ。最初は我もお仕置きしていたよね……あの時はごめんなのだ」
 薫はしみじみと双子と初めて会った時の事を思い出していた。双子の騒ぎに巻き込まれたのを切っ掛けに知り合い今ではハロウィンや海、花見など、はたまた夢の中でも一緒に楽しむ仲になっていた。
「何だよ、急にしんみりしてさー」
 ヒスミがあまりのしんみりさにツッコミを入れると
「秋だからかもしれないのだ。白もこちゃんも双子ちゃん達と会えて嬉しいみたいなのだ」
 薫はにこにこしながら言うなり双子に貰ったお菓子を嬉しそうに食べている白もこちゃんを見た。
「初めて喋るのを聞いた時は驚いたぞ」
 キスミは白もこちゃんが初めて人語を口にした時を思い出していた。
「ピキュキュ、キュッピピ(わたぼ、お兄ちゃん達のおかげで初めてのお花見が出来たんだよ、楽しかったよ)」
 わたぼちゃんがにこにこと印象深い思い出を語ると
「わたぼちゃんは初めてのお花見が出来た事が楽しかったと言っているのだ」
 薫が通訳する。
「あぁ、あの時は間違えたんだよなぁ」
「そうそう。でも本当すごいよなぁ。どう見ても本物でロボットに見えねぇよな」
 双子は薫の仲間のわたげうさきの獣人と勘違いした事を思い出すと共に本物にしか見えないもふもふボディに釘付けに。
「海も楽しかったよなぁ」
「そうそう。確かわたぼちゃん、あの時海も初めてだったろ」
 双子は海の思い出も話し始めた。話ながらこっそりと用意した悪戯のお菓子を混ぜようとするが
「しかし、思えば色んな事をやって来たな。うちの他の連中も、お前達に色々とやらかして……懐かしいな」
 薫に続いて孝高も双子との思い出を振り返る。
 しかし、振り返る内容は
「初対面からこの姿でお前達に仕置きをして来たな。初めて会った時から」
 孝高は双子と初めて出会った架空世界での冒険を思い出しつつ巨熊に獣化し、仕置き時の定番の姿になるなり
「そして……」
 孝高はジャイアントスイングで双子を吹っ飛ばし
「俺は、初対面のお前達に爆発物を仕掛けた事が印象に残っているかな」
 初対面は夢札を使用しての初夢だった孝明は出会いから今日までを思い出しつつ悪戯と仕置きのために
「こんな感じで爆発させた事とかね。夢は現実と違って威力を加減する必要が無いからとても楽しかったよ」
 双子の着地地点に『インビジブルトラップ』を仕掛け爆破させた。
 熊父子の連携を食らった双子は
「……何もしてねぇのに」
「……どうしてこうなるんだよ」
 文句を垂れた。
「……何もしていないのならそれは何だ」
 孝高がびしっと転がる悪戯菓子を指し示した。
「……」
 悪戯の証拠に双子は言葉を失った所で
「美味しそうなお菓子だね。俺達の事はいいから食べたらどうだい?」
 孝明がとどめに怖い笑顔でお菓子を拾い、食べるように勧める。
「……」
 双子は孝明の笑顔に怯えたようにぷるぷると頭を左右に振った。
「幾度繰り返してもお前達が懲りた事は一度もなかった……無駄かも知れないがここでもう一度声がけをする。そろそろ反省しろ。しないなら……まあ、いつも通りだが」
 孝高が溜息を吐きつつすでに無駄だと知りながらも反省をするように言ってから獣人姿に戻り席に戻った。
「思い出と言えば、西瓜割りも楽しかったね」
 孝明はわざと間違った西瓜割りで双子を怯えさせた事を思い出しにやりと笑みながら席に着いた。
「……やっぱ、あれ俺達の頭をかち割ろうと思ってただろ」
「……いつも通りって……」
 双子は怯え気味に文句を垂れつつ席に戻った。
「いやいや、二人と純粋に西瓜割りを楽しみたかっただけだよ。あぁ、ハロウィンも楽しかったね」
 孝明はにこにこと怖い笑みを浮かべながら双子主催のハロウィンに参加し、双子にお茶目な悪戯とお菓子をあげた事を思い出した。
 途端
「!!!!」
 あの時の痛い恐怖と共に双子の顔が一様に真っ青に。
「キュピキュピキュピキュウ!(双子のお兄ちゃんのサブレでわたぼ、蝙蝠さんの羽が生えてハロウィン楽しかったよ!)」
 わたぼちゃんはハロウィンで体験した楽しい思い出を思い出しにこにこ。
「わたぼちゃん、ハロウィンで双子ちゃんのサブレを食べて蝙蝠さんの羽が生えて楽しかったと言ってるのだ。我も一緒にお菓子が食べる事が出来て楽しかったのだ」
 薫はわたぼちゃんの感想だけでなく自分の感想も添えた。
「いーたーずーら、いーたーずーら」
 ハロウィンの事を思い出したのか白もこちゃんはとことこ歩き回り双子に甘噛みをした。
「お前もハロウィンが楽しかったんだな」
「悪魔っぽい姿になっていたっけ」
 双子は甘噛みする白もこちゃんを可愛がりながら言った。
「サブレの他にトリック・オア・トリートを存分に楽しむ事が出来ていい思い出になったよ」
「お前達らしいハロウィンだったな」
 孝明と孝高がハロウィンの思い出を振り返りしみじみしていた。
「……」
 双子は沈黙した後
「……あれ、トリック・アンド・トリックだ。しかも何でお菓子が餅とみかんなんだよ」
 キスミは悪戯もお菓子も痛かった事とお菓子への不満を口にし
「死ぬかと思ったぞ!!」
 ヒスミは冷凍みかんによる孝明の速球が後頭部に命中し意識を失った事を思い出した。
「悪戯とお菓子の両方を貰えていい思い出になっただろ」
「二人は丈夫だから心配無いよ」
 孝高と孝明は事も無げにさらりと流す。双子が文句を垂れるのはいつもの事なので気に留める必要は全く無い。
「何が丈夫だよ!!!」
 双子は息ピッタリに大声でツッコミを入れた。

「孝高も孝明さんも楽しそうなのだ」
 薫は微笑み顔で双子と戯れる熊父子を見守っていた。
「あの二人はこれまで随分迷惑を掛けていたのだな」
 ロズは申し訳無さそうに言った。
 すると
「迷惑じゃないのだ。孝高も孝明さんも双子ちゃんと遊べて嬉しいのだ。我もわたぼちゃんも白もこちゃんも同じなのだ。だからロズさんは気にする事ないのだ」
 薫はロズを見やりにっこりと笑い掛けながら皆の気持ちを代弁した。
「……ありがとう(……本当にあの二人はいい人達に囲まれている)」
 礼を言うと共にロズは薫達やその他双子と仲良くする多くの人達の顔を思い浮かべつつ感謝を深くしていた。何せロズが自分に課した使命は双子に最期が訪れるその瞬間まで見守り続ける事だから。

 双子を一通りからかった後
「色んな事があったけど、これから先、十年後も、天禰家はお前達と絡んでいつも通りに過ごすと思うよ」
 孝明は双子を素敵に怯えさせる良い笑顔で双子の扱いが変わらない事を示唆した。
 途端
「えぇえーーーーー」
 双子はあからさまに嫌そうな悲鳴を上げた。熊父子が嫌いという訳では無く痛い目に遭うというのが恐ろしいのだ。そもそもその痛い目のほとんどは自業自得ではあるが。
「盛大に感激の声を上げなくとも」
 孝明がカラカラと笑いながら言うと
「ちげぇよ」
 双子は息ピッタリにまたツッコミを入れた。
「……お前らが悪戯を卒業すれば俺達も変わるがな」
 孝高が至極当たり前の事を言い置くと
「悪戯卒業なんかありえねぇー」
「悪戯がオレ達の生き甲斐なんだぞ」
 双子は悲鳴じみた声で言った。
「たのしーねー、たのしーねー」
 白もこちゃんは喋りながら腰をふりふり踊り出し
「お前、おもしれぇな」
「こっちまで楽しくなるぜ」
 双子は踊る白もこちゃんを愉快そうに見ていた。
「わたぼちゃんもお前達と遊ぶ事が大好きだから、これからも一緒に遊んであげなさい」
 孝明は少し優しげな口調で言うとわたぼちゃんは二人の膝の上に乗って
「ピキュピキュ、ピーキュウ!(双子のお兄ちゃん、これからもわたぼと一緒にいっぱい遊ぼう!)」
 可愛らしく見上げにこにこしながら話しかけた。
「これからも一緒に遊ぼうと言っているのだ。我も同じなのだ。これからも一緒に遊ぼうなのだ」
 薫はわたぼちゃんの言葉を通訳すると共に自分の気持ちを伝えると
「そりゃ、大歓迎だ」
「そうだぞ。今更言う事じゃねぇよ。決まってる事だからさ」
 双子は嬉しそうに言い膝に乗ったわたぼちゃんのもふもな毛並みを撫で撫でした。
 すると
「そうか。それは安心だ」
「心置きなく今まで通りのお付き合いが出来るね」
 孝高と孝明がニヤリとしながら言うと
「…………」
 双子は顔を強ばらせるのだった。

 この後、平凡だが楽しいお茶会はしばらく続いた。