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そして、蒼空のフロンティアへ

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葦原島の丘へ



「いい景色だ」
 眼下に広がる雲海の景色にむかって杯を掲げながら、神条 和麻(しんじょう・かずま)が言いました。
 葦原島の高台には神条和麻たちの他には人影も見えず、のんびりと景色を愛でながら酒盛りをしているという塩梅です。
「これがお酒ですかあ?」
 始めて飲むお酒に、物珍しそうにエリス・スカーレット(えりす・すかーれっと)が言いました。
 その横では、マリアベル・アウローラ(まりあべる・あうろーら)がちびちびと慎重に飲んでいます。どうも、あまりお酒に強くないのか、神条和麻の前で酔っ払うのを警戒しているようです。
「そうそう。やっぱり、こういう話は酒が入った方が話しやすいだろ?」
 どんどん飲めと二人に酒を勧めながら、神条和麻が言いました。
「適当にしておきなさい」
「こう見えても、エリスは大人なのですぅ」
 マリアベル・アウローラの忠告に、エリス・スカーレットは舌先でお酒をなめつつ答えます。
「そうか大人になったか。二人と出会ってから、もうずいぶんと経ったからな。パラミタに来てから、いろんな人と出会い、剣を交え、助けたり、助けられたり、いろんな出来事に関わってきたな」
 今までのことを思い返してか、神条和麻が遠く雲海に目をやりました。
「別に歴史に名を残すような偉人になる気はない。ただ、一人でも多くの人を救ってみせる。それを信念としてやってきた。無謀かもしれない、けど俺は一人じゃない。一緒に戦ってくれる仲間がいる、だから俺は未来へと歩んでいける」
 神条和麻が、エリス・スカーレットとマリアベル・アウローラの方を振り返ります。
「もし信念を違えようとした場合はエリスが正してくれるし、道を踏み違えたときはマリアに殺されるだろう」
「当然ですわ。私は、神条和麻という人物が嫌いなのですから」
 さもあたりまえのように、マリアベル・アウローラが言いました。
「カズ兄は、エリスがつらいときもずっと励ましてくれたのですぅ。だから、今のエリスがいるのです。だから、カズ兄の力になるために、これからもずっと一緒にいるのですぅ」
 対照的に、エリス・スカーレットが言います。
「まあ、道を踏み違えるつもりはないし、そんなことがないのは二人が一番分かってると思う」
 承知しているという顔で、神条和麻が答えます。エリス・スカーレットは素直ですし、マリアベル・アウローラは……、まあ、ツンデレということにしておきましょう。
 自分が立ち止まったときに、それでも前に進もうとした者が神条和麻という人間であるということを、マリアベル・アウローラはよく認識しています。それが神条和麻という人間の本質だと、ちょっぴり認めてきてはいるマリアベル・アウローラでした。もっとも、口が裂けても言葉にして言いはしませんが。
「もし道を間違えたら、そのときは私の手で人生を終わらせてあげましょう」
「エリスは、皆が幸せでいてくれればいいのですぅ。カズ兄もマリアお姉ちゃんも笑顔でいられるような世界になってほしいのですぅ」
「ああ。俺たちは契約者だ。その絆は断ち切ることはできない。その絆を使って、俺たちは一緒に進んでいこう」
 二人との絆が確かなものであることを確かめるように、神条和麻が言いました。