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故郷へ



「本当なの!?」
 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)から、自分の故郷が見つかったという知らせを聞いて、アルミナ・シンフォーニル(あるみな・しんふぉーにる)が喜びの声をあげました。
 アルミナ・シンフォーニルはならず者にさらわれてきたので、自分の村がどこにあるのか分からなかったのです。辿楼院刹那は、忍者の卵を使って以前からアルミナ・シンフォーニルの村を探させていたのでした。それがようやっと分かったのです。
「さっそく、みんなで行ってみような」
 辿楼院刹那の提案で、一同でアルミナ・シンフォーニルの生まれ故郷にでかけることになりました。
 その出発の日のことです。
 一緒に行くはずであった女王・蜂(くいーん・びー)が、いつになっても現れません。
 イブ・シンフォニールが呼びに行くと、部屋には一通の置き手紙だけがありました。
「マスター、これ」
 イブ・シンフォニールが、女王・蜂の置き手紙を辿楼院刹那に手渡しました。
 手紙には、短く自分の国に帰るとだけ書いてありました。
 実は、前日に女王・蜂の許へも、故郷からの命令を受けた女王・蜂近衛兵によって、帰還するように連絡があったのです。
 女王・蜂としては、辿楼院刹那たちと一緒にまだまだ楽しいことをしていたかったのですが、こうなってしてまっては仕方がありません。置き手紙だけを残して、即座に帰還してしまったようです。
「せめて、別れの挨拶ぐらいしていけばいいものを」
 まあ、パートナーとなったときも、いつの間にかそばにいたようなものですし、いつの間にか姿を消すというのも彼女らしいと辿楼院刹那は思いました。故郷に旅立つ、その想いは、アルミナ・シンフォーニルも、女王・蜂も、同じだと言えるでしょう。
「私も、いったん刹那さんとの契約を解除させてもらって、旅に出たいと思います」
 別の理由で、ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)も辿楼院刹那に別れを申し出ました。
 パラミタを崩壊させるために暗殺組織『月の棺』を組織していたファンドラ・ヴァンデスでしたが、今はまだ時ではないと、新たな手段を探す旅に出ることにしたのでした。組織のアジトはいったん封印し、月の棺の戦闘員たちも解散させています。
「何か崩壊の方法が見つかった場合、また雇わせていただきますよ」
 ファンドラ・ヴァンデスが、そう辿楼院刹那に言いました。
「女王・蜂さんとはお別れの挨拶もできなかったし、ファンドラまでいなくなっちゃうと淋しいんだもん」
「なあに、またどこかで会えますよ」
 そうアルミナ・シンフォーニル言い残して、ファンドラ・ヴァンデスは辿楼院刹那たちの前から去っていきました。
「さあ、では、わらわたちも、自分たちの旅にでかけるとしようか」
 そう言うと、辿楼院刹那は、イブ・シンフォニールとアルミナ・シンフォーニルと共に旅立ちました。