リアクション
○ ○ ○ 数日後。 眠っている花音を抱いて、加夜は涼司と共に、自宅へと戻った。 「一ヶ月くらいは安静に……」 「わかってる。しばらく安静にしてて欲しいから、家事とかは任せてくれ!」 出産前から、涼司は掃除洗濯に、料理……もあまり上手ではないけれど、加夜を手伝い、頑張ってくれていた。 「ありがとう、涼司くん。ホント、頼りになる旦那さんです」 「へへへ」 涼司の顔に笑みが浮かぶ。 いや、花音が生まれてからずっと、涼司の顔はゆるみっぱなしだった。 ベビーベットに寝かせて、2人で我が子の寝顔を眺める。 小さな小さな手を握りしめた、天使の寝顔。 喋ることも、瞬きさえも忘れそうになり、加夜と涼司はじっと花音を眺めていた。 「元気に、すくすく育ってください」 「けど、あんまり早く巣立っていくなよ」 眠っている我が子に声をかけて、くすりと笑い合う。 幸せがいっぱい、溢れていた。 「加夜、着替え持ってくるから、とにかく休め」 「はい」 「ほら」 「あ……」 しばらくして涼司が加夜を心配し、彼女を抱きかかえるように運び、ソファーに座らせた。 「大丈夫ですよ、私は赤ちゃんではないですから。疲れた自分で休めます」 「でも心配だし。それに……嬉しくて、さ」 涼司は加夜をぎゅっと抱きしめた。 「ありがとう、お前は最高の妻だ」 「私もとても嬉しいです。……幸せです」 少しの抱擁を終えた後、涼司は病院から持ち帰った衣類の洗濯を始めた。 「明日の七夜の準備もしなくちゃ」 「いいから、休んでろって。俺が全部やるから」 動こうとする加夜を止めて、涼司は家事も明日の料理の手配も行っていく。時々、ベビーベッドの中を覗き込みながら。 「カメラで写真もいっぱい撮りたいですね。手形や足型もとるんだったような……」 加夜はタブレット端末で、お七夜について調べていく。 「まだまだ分からないことが沢山です。 少しずつ、子供と一緒に覚えていきましょう」 「俺は!?」 花音の寝顔を見ていた涼司が子供のような顔を向けてきた。 「あ、はい。涼司くんと花音と一緒に、です」 そして、2人は笑い合い。 「ふぎゃー、ふぎゃー」 小さな泣き声が、二人の会話に入ってきた。 そうして家族3人で過ごす、幸せな日々が始まった――。 |
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