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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

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【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

リアクション

「ママー」
「はいぃ!?」
 地祇の力を借りて子供の姿になった牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)に袖を引かれて、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が悲鳴に近い驚愕の声を上げた。
「い……いつの間に?」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)がパートナーの意外な一面に驚きの声を上げた。
「ち、違います! どう考えても計算が合わないじゃないですか!
「ままとおなじかみのいろ、きにいってるのにぃ……」
「だだだ、だいたい子供が居たらイレイザーの巣なんかに連れてくるわけないじゃないですか!」
 ぶんぶんと首を振って否定する吹雪。ざわつきが探検隊の間に広がっていく。
「そろそろ、イレイザーが接近してくるそうですよ」
「香菜と別れちゃったのが悔しいのは分かるけど、遊び相手を変えた方がいいかも」
 ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が、アルコリアに声をかける。
「もうちょっと遊びたかったのになあ」
 アルコリアははあ、と小さく息を吐いた。そして、ぽん、と音を立てて元の姿に戻る。
「いきわかれのむすめかとおもった? ざんねん、かわいいアルちゃんでした!」
「お、思ってないであります……」
 がっくりと肩を落として、吹雪はうめく。が、そんな短いコントを打ち消す勢いで、ずしん、と地面が揺れた。
「吹雪、今のは……」
「イレイザーであります!」
 コルセアに答えて、吹雪がギフトの剣を抜く。その時にはすでに、アルコリアは走り出していた。
 巣の近くに降り立ったイレイザーはずんぐりした四足で体高が低く、どことなく亀のようなシルエットだ。その背には甲羅の代わりに、いくつもの水晶が生えそろっている。
 ドンッ! ドンッ!
 いかなる方法によってか、その水晶が打ち出された。絨毯爆撃じみて、探索隊の居る巣に向けて降り注ぐコースだ。自分の巣を傷つけることに、まったく頓着していない様子だ。
「……まさか、こんなにいきなり!」
 悲鳴のようにリファニーが叫んだ。頭上からはいくつもの水晶が降り注いできている。
「つうっ、これじゃ、近づくことも……!」
 レイカ・スオウ(れいか・すおう)が唇を噛み、頭上に向けて銃を構えた。激しい反動を伴った魔力が打ち出され、飛来する水晶のうち一つを砕く。
「その調子! ちゃんと守るのよ!」
 祥子が飛び出し、縦横無尽にギフトの剣を振るう。手数と腕力に任せた斬撃が、飛び来る水晶の塊を砕き、切り裂く。
「リファニー、平気!?」
「なんとか……ですけど」
 砕かれたとはいえ、細かい水晶のかけらが降り注いできている。
「これは、近づかないと……広範囲に散らばっていたら、いつまでも攻撃できません」
 体内のエネルギーを消耗するような魔法を続けて放ちながら、レイカが小さく唸る。人間の子供ほどもあるような質量の塊である水晶だ。その破壊力は、直撃すれば契約者でもひとたまりもないだろう。
「……誰かが、近づく道を作れれば……」
 きっと、リファニーが前方をにらみつける。その気配を察してか、レイカはその前に進み出る。
「……無理はしないでください。あなたは、隊長ですし……それ以上に、あなたに倒れられては、困ります!」
「そう、これだけ味方がいるんだから。……その役目、負ってくれる人が居るわよ」
「……そうね」
 緊張のオーラを解き、リファニーは息を吐いた。
「誰か、イレイザーに接近を! 直接攻撃を行って、やつの気をそらして!」


「了解……ですわ」
 ナコトがごくごく短い返事を返した。水晶が飛び交う空中へ、あえて箒と共に身を躍らせる。きわめて複雑な水晶の軌道を読み切って、自身に引きつける。ナコトに狙いをつけた水晶同士が衝突し、派手に砕け散った。
「これはなんとかしないと、開幕全滅☆かもねっ!」
 ラズンが口を裂いたような笑みを浮かべる。ナコトの眼下、水晶の破片が降り注ぐ中をかまいもせずに進んでいく。
 細かい傷をいくつも負いながら構える槍に、その繊維が乗り移ったように蒼い炎が宿った。
「痛くて気持ちいいよ、ほら、もっとこっちに来てよ!」
 全身に感じる痛みを生きている実感と受け取って、狂戦士じみた笑顔と共に突っ込む。体ごと水晶にぶつかって、貫き、砕いていく。
「きゃははははっ☆」
「前に出すぎだ! まったく……!」
 あと一撃で倒れてしまいそうなラズンの前に、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が飛び出した。剣と籠手を振りかざし、背のブースターを激しく噴かす。
「アル、行くぞ!」
 ドンッ、と剣を突き立てた水晶を籠手でつかみ、前へと突っ込んでいく。即席の巨大盾だ。シーマが守るのは、背後のアルコリアである。仲間が拓いた道を駆け抜けて、アルコリアがイレイザーの元へたどり着く!
「しょー☆たいむ!」
 ずらりと禍々しい刀を抜き放ち、イレイザーの脇から、腹の下に飛び込んだ。
「むしもころさぬアルちゃんだぞ、がおー!」
 気合いの声(?)と共に、頭上に刀を突き立てる。分厚く硬いその肌に、火花を立てて刃が突き刺さった。
「やあー!」
 ざっくりと腹に深い傷を残し、反対側に駆け抜けた。イレイザーのどろりとした血がしたたり、どこか異様なにおいが漂ってきた。
「今です!」
「了解であります!」
 リファニーの指示に答えて、アルコリアが開いた道を駆け抜けた吹雪が、構えた剣をまっすぐに振り上げた。
「どりゃああっ!」
 ガッ、と硬い音を立てて、イレイザーの前肢に剣が食い込んだ。それが切り抜けることはない。
「……そんな!」
 力が足りないと言うべきではない。ウルフアヴァターラの剣の力を借りて、その皮膚を傷つけただけでもたいしたものである。が……
「危ない!」
 ブースターを噴かせたシーマが吹雪を抱えて飛び出さなければ、大剣のような爪がその体を引き裂いていただろう。レイカの放つ魔術が、追撃を抑える。
「イレイザーとまともに戦えるのは、本当にトップクラスの能力を持ったものだけみたいです……けど、支援ぐらいは!」
 その魔術がイレイザーへの有効打になっているとは言えない。だが、動きを鈍らせているのは確かだった。
「手を緩めないでください! これで、戦えます!」
 リファニーの叫び。イレイザーに接近した何人もの戦士たちから、応じる声が上がった。