First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last
リアクション
第4章
「ここは戦いの余波が強い! 下がった方がいい!」
契約者たちの戦いを前線で指揮する位置にいたリファニーに、蔵部 食人(くらべ・はみと)は周囲を旋回しながら声をかけた。
「ですが……!」
人に任せて後ろに下がることができない性格だ。そう言われても、なかなか従うわけにはいかない。「イレイザーは誰かを狙うことがあるって聞いた! もしかしたら、君が狙われているんじゃないかとも思ったが……」
ちらりとイレイザーに目を向ける。見たところ、どうやら無差別に攻撃しているように見える。
「……そういうわけじゃないみたいだな」
「こっちは、大丈夫! リファニーさんはたち私が守るから!」
弾幕のように飛び交う水晶の下をくぐり抜け、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)がリファニーにぴたりとついた。護衛するような構えだ。
「このミサイルのような水晶がやっかいじゃのう。いつまでもぶんぶんと……」
魔鎧の姿で装着された清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)が忌々しげに呟く。
「あまり離れすぎるよりは、これぐらいの距離を保った方がいいのかも知れません!」
セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が、ギフトの剣で迫り来る水晶を切り払う。契約者たちが張り付いて戦っているおかげだろうか、先に放たれたときほど、水晶の軌道は鋭くない。
「その、なんだ」
飛び交う水晶をいなしながら、食人は小さく、リファニーに声をかけた。
「……この前は、すまなかった。悪気はなかったんだが……」
「今は、そんな細かなことを気にしている場合ではありませんよ」
許しているのかいないのか。リファニーはそう答えた。はっと、その背後に水晶が迫っているのを、食人の超人的視力は見逃さない。
「……危ない!」
加速して、体ごと水晶を受け止める。罪滅ぼしと言うつもりではなかった。ただ、リファニーの身が無事ならそれでいい、と思った。
激突の痛みに気絶しそうになりながら、食人の視界がスローモーションで回転する。どさりと、リファニーの足下に倒れ込んだ。
「……どうして……!」
その行為でさらに追い詰められた、というような表情で、愕然とリファニーが叫ぶ。足下の食人の目は、ぼんやりと上へ向けられて……
「させません!」
その二人の間に、詩穂が割り込んだ。ふう、と額の汗をぬぐう。
「大丈夫でしたか? その衣装はいろいろと危険ですから、気をつけた方がいいですよ」
「え、ええ。その彼がかばってくれたから……」
がく、といろいろな意味で半ばで倒れた食人の救助を叫ぶリファニー。
「そういう意味ではないのですけど……でも、このままでは、戦いにくいですね……」
イレイザーに何人もの契約者が立ち向かっているとはいえ、今の状況では象にたかる羽虫も同じだ。決定打を与えて痛がらせなければ、イレイザーには余裕があるままである。
「……何か、弱点でもあれば……」
じ、とイレイザーをにらみつける。
「ずっと、気になってたんですけど……」
水晶の対応をセルフィーナに任せて、詩穂はリファニーに提言した。
「……あの胸の水晶って、怪しくないですか?」
「確かに」
直感、というべきか。
それとも興味というべきか。
いかにもなデザインで胸に輝く水晶を狙ってみたいと、リファニーも思った。
First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last