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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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リアクション

 
 
 
 見合い写真
 
 
 
 気は進まないけど、呼び出しがかかってしまっては仕方がない。
 思い起こせば嫌な思い出ばかりが蘇ってくる実家へと、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は帰省した。
 翡翠の実家は古くて広い日本家屋だ。
 平安の頃から要人警護と占い師をしてきた神楽坂家は、現在では表の仕事が要人警護となっており、依頼に応じて世界各国に護衛を派遣している。占いは裏の仕事としてこちらも未だに続けられており、占いばかりでなく要人に向けられた術の排除等も請け負っていた。
 実家に帰ってまずは自室で一休み……と思いきや、待ちかまえていたように部下の不知火 翔が進み出てきて一礼する。
「やっお帰りになられましたか。お待ちしておりました。つきましては、見て頂きたい書類があるのですが」
「帰った早々に、ですか」
 軽い抗議を含めて言ってみたものの、翔はあっさりとはいと答え、翡翠をさっさと執務室へと連行した。
 
「ぐ、なんですか? この量は。こんなに手が回らなかったんですか?」
 多いだろうと思ってはいたが、机に積み上がる書類の量は翡翠の予想を遙かに上回っていた。手を着ける前から音を上げそうになる翡翠に、翔はぐっと砕けさせた口調で答える。
「こっちも対応しているが、実際依頼が多くて多忙を極めてるんだ。それに、どこから聞いたのかほとんどお前への占いの依頼だ。まあ、お前がここで一番腕が良いしな。頑張れ」
「頑張れって……久しぶりなので、腕が落ちてるかもしれませんよ、良いんですか?」
 そう言いながらも翡翠は仕事をさばいていった。自分で担当するだけでなく、空いている部下の名前を聞いておき、適任と思われる者を派遣するように取りはからったりの采配も必要だ。
 翡翠は脇目もふらず、迅速に目の前の書類の山を処理していった。
 
 地球にいる間に目処をつけてしまいたい、と根を詰めた結果、積み上がっていた書類の山は片づいた。けれど、最後の1枚を処理し終えたと同時に、翡翠は机に突っ伏して意識を失った。
 次に気がついた時には、ベッドの上で翔に看病されていた。
 翡翠と目があうと、すぐに小言が翔の口から飛び出してくる。
「気がついたか、翡翠。まったく、子供の時からの無理する癖は治って無いようだな。いつも、倒れるまで無茶するなと言ってあっただろうが! こんなに痩せて……向こうでも無理しているんじゃないだろうな」
「すみません。もう大丈夫です。無理するつもりはなかったんですけど……」
 翡翠は頭を振ると、そろそろと身を起こした。
「しばらく休んでろ。その間にこれも見ておけ。長老のジジイたちがうるさいんだ」
「なんですか? ……写真?」
「見合い写真だそうだ。早く跡継ぎをなんとかしろ、だとさ」
「見合いなんか気が早いですよ」
 翡翠は写真を開こうともせずに翔の方におしやった。長男長女が死亡し、次男たちは家を出ている為、心配されるのは解るけれど、今は身を固めようと言う気分にはなれない。
「見ておかないと長老のお小言決定だ」
「う〜……長老達の小言、苦手なんですけどね……」
 こちらの方が仕事よりも余程荷が重いと、翡翠はいかにも気合いが入っていそうな見合い写真の表紙を眺めたのだった。