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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

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 各下宿部屋の様子はどうであろう?
 
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 207号室から209号室では3部屋連続して、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)が家庭教師として下宿生達の勉強を見ていた。
 補助についているのは、パートナーの亡霊 亡霊(ぼうれい・ぼうれい)宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)
 ちなみに受講生たちは全員「現役美人空大生(分校生)の家庭教師」という優梨子自身のうたい文句につられてきた、憐れな子羊どもであった。
「さあ、皆さん、私の『干し首講座』で、立派な空大分校生になりましょう♪」
 優梨子は助手として、知人の首狩族を配置する……ん? 首狩族?
「この問題に真面目に取り組めたら、干し首にしないであげますからねー……さもないと」
 目を細めて、親指を下に向ける。
 首狩族が「さくらんぼ」を掲げて見せた。
「こーなっちゃいますよ!
 よろしくお願いしますね?」
 
 ひえええええええええええっ!
 おたすけえええええええええええええっ!!
 
 逃げ惑う受験生達をふん捕まえて。
 亡霊は吸精幻夜で、腑抜けにした。
 ついでに耳元に携帯音楽プレイヤーを押し付ける。
 小さく台詞が繰り返される。
『あなたは干し首が、好きになる、好きになる、好きになるぅ〜……』
「は、はい!
 ぼ、俺ぁ、大好きっす!!」
 受験生達はサブリミナル効果と言うより、恐怖心から大人しくなった。
(首狩族集めて、また何すんのかと思っていたけどよ、お嬢は!)
 蕪之進は震えを押さえつつ、首狩族を眺めて、まいっかと呟いた。
(これが成功すりゃ、パラ実流の商売の機会が空大に広がるだろうし。
 俺にとっても悪い話じゃなさそうだぜ!)
 だからこその、首狩族である。
 かれらを、以前の伝手から根回しで引っ張ってきたのは、蕪之進なのだ。
 トンカン、と音がして、窓から屋根をのぞく。
(……ん?
 信長の旦那と鮪の旦那もいるのか?)
 そういえば、と思う。
 首狩族共の本日のねぐらは、きちんと確保してあっただろうか? と。
「お嬢!
 ちょっくら、首狩族のねぐらを作ってくるぜ!」
「正面玄関前に、ブルーテントでいいですよ?」
 優梨子の指示を待って、ドアから出て行く蕪之進なのであった。
 
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 まぁ、と優梨子は「教室」全体を見渡した。
「もう、本日の新入りはいないみたいですね?
 他の部屋の方々をお誘いしましょうかしら? うふふふ……」
 
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 そんな優梨子の思惑など知らず、隣室の210号室では、白砂 司(しらすな・つかさ)がぶつくさ言いつつ、勉学に励んでいた。
「まったく、族長のせいだ!
 何で俺が今更、こんなオンボロ下宿で受験勉強を……」
 手元の契約書を眺めて、長い息を吐く。
 身元保証人――つまり、コネによって部屋を確保した「主」の名がある。
 ジャタの獣人族の族長の名が記されていた。
「『積極的な地球組織との外交を考えるための、空大受験』か。
 まあ、世話になっているし。
 族長の意向だ! 無下には出来んよな?」
 しかしなあ、そもそもは……と背後を振り返る。
「『時代は地球とのぐろーばりぜいしょんですよ!』なんぞと戯言をぬかしおった、お前のせいじゃ! サクラコ!」
 薬学部の教科書を放り投げる。
 コツンッと頭に当たって、畳でゴロ寝していたサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は、ぴょっ? と飛び起きた。
「いったーい!
 何すんですかっ! 司君!!」
「勉強手伝うって約束だろうがっ!
 久々、復習すんぞ!」
 だが、サクラコは「国語英語数学理科社会の五科目以外」しか役に立たない。
「うぬは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「そ、そんなに怒らないで下さいよ」
 タンマ! とサクラコは片手を掲げる。
「そんなこともあろうかと!
 今日はとっておきの先生も御用意しているのです!」
「ん? 『先生』?」
「美人空大生のユリちゃんでぇーす!
 どーぞぉ!!」
「はぁーい、呼びましたぁ?」
 と、そこに現れたのは、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)――その人である。 赤い舌をのぞかせて。
「さぁ、司さん。
 私の吸精幻夜で、優秀な『お受験マシーン』になりましょうね♪」
 
 ……かくして、司は優梨子の懇切丁寧な指導の下、真面目な受験生へと変貌を遂げるのであった。
 

 優梨子の指導のお陰で、下宿生達の大半は「干し首講座」の受講者へと転じたようだ。
 以後、「優梨子先生の個人授業」は夜露死苦荘の名物講座となる。