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リアクション
10.閑話休題 〜昼〜
さて、ここで。
色々と頑張る下宿生達を尻目に、まったりと下宿生活を営んでいるものの結果を見てみよう。
■
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は実家から送られてきたメイドの衣装(いわゆるメイド服ではない)を来てウキウキしていた。
とはいえ、レティシアの実家は南国のため、衣装もそれっぽい。
見ようによっては、民族衣装に見えなくもないが?
「でも、小さな頃から見慣れてますしねぇ……おかしいですか?」
レティシアは小首を傾げる。
「なんでぴったり合うのがあるのかって?
本物が100人近く居ますからねぇ、
サイズは豊富にありますし」
「そうですか、でも私まで着る必要があるのですか? レティ」
ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)は恥ずかしげに裾を持ち上げる。
チョットどころか、この下宿では、明らかにこの格好は浮いてしまうのではなかろうか?
(まぁ、でも。
ベビードールで出歩かれないだけマシなんですが……はぁ)
そうして、レティはハウスキーパーを駆使して、ミスティはその後のゴミ拾い等をして、下宿の清掃に努めるのだった。
玄関を掃き清めていたマレーナが2人に声をかける。
「あら、可愛いらしいメイドさんですこと。
終わりましたら、2人とも。
管理人室で、お茶でも飲んで行って下さいませ」
■
茅野 菫(ちの・すみれ)は、下宿の新入りだった。
本来は部屋を持たずに管理人室に居候を決め込んできたのだが。
「この部屋は、深夜以外のほとんどを自習室や食堂に当てておりますの。
女性が着替える場所もなくってよ。
それは出来ないわ」
……以上の理由から却下されてしまった。
だが、開放している間は、好きなだけ管理人室に入り浸れる。
「初めまして!
本日から、夜露死苦荘でお世話になります。
茅野 菫です!」
爽やかな笑顔でアピール。
そして、けなげに下宿の雑事を手伝う。
家事を手伝ったり、
勉強を手伝ったり、
【用務員召喚】を手伝ったり。
露天風呂作りを手伝ったり。
おまけに菫は神が綺麗な美少女だ。
その中身がどうであれ、黙っていれば、好感をもたれないはずがない。
うん、そう、黙ってさえいれば……。
「ありがとうな! 菫ちゃん」
キヨシ励まされて、弱々しい笑顔を向ける。
「やーだぁ、キヨシさん、ふふふ……」
菫は天使の笑みを向けたと思いきや、ぼそっと。
「でも、がんばったって落ちるときは落ちるよねー」
「…………」
……そうして、「みんなの『妹』は毒舌天使」の噂が夜露死苦荘内に広まるのであった。
菫の活躍は、以降も続く!
■
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)
紫月 睡蓮(しづき・すいれん)
プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)
の4名は、【用務員召喚】と称して、現状は「反省室」に放りこむべき学生達がいないか監視していた。
だが、さほど不埒な下宿生達もいないので、暇をもてあましつつ、本来の用務員業にいそしむのであった。
例の「噂」の割には――。
その多くは前回同様、「一生懸命にやっているようでいて、実は何もできていない管理人のフォロー」である。
「では、わらわは、食事の用意でもするか。
管理人補佐役の邦彦だけでは、手に余るだろうしな、今回も」
そう言って、エクスはやれやれと台所に向かうのであった。
「それにマレーナも。
近くにいれば、いずれわらわ達を信じて、頼りにする日も来るであろう」
うむ、と頷いて、唯斗はエクスの背を見送る。
「じゃ、私は新入りさん達の荷物運びを手伝いますね?」
言ったのは睡蓮。
たぁ――っと玄関に向かった。
「それに、下宿のマスコットたる私が運んだら。
落ち込んでいる人も、笑顔になるかもしれないですよね?」
「まぁな」
にっこりと笑って、これは本心から。
「その笑顔にかなうものは、マレーナさんくらいじゃないのか?」
唯斗は片手を上げて、送り出す。
プラチナムは、空を眺めつつ、重い腰を上げた。
「買い出しに行きます。
何もすることがないのであれば」
クールに言って、バイクに跨る。
「取りあえず、コンビニに行ってきましょう。
なければ、汚亜死栖まで」
ちなみにプラチナムは美形だ。
彼女がバイクのマフラーを吹かした瞬間、窓から大勢の下宿生達が手を振った事は言うまでもない。
そうして1人残された唯斗は、庭でお茶をすするのであった。
マレーナを目で追う。
(いた!)
いまは下宿生達のシーツを干している。
だが、それはとても危なっかしい手つきで、シーツはいまにも風に飛ばされそうだ。
(やれやれ……風になりますかね?)
そうして彼はマレーナに気づかれぬよう、洗濯物を干し直しまくるのであった。
(まさか、こんなところで、忍術が役に立つとはな)
そうして、マレーナから渡された本日の工程を見る。
様々な雑事があるが、総て片付けてしまった後だった。
分身しているのだ、とか、いや要領がよすぎるのだ、とかいう彼の仕事の速さに対する噂は、あながち嘘ではないようだ。
そうこうしているうちに、マレーナの近くで酒瓶を片手にぼんやりとする受験生の姿が見える。
(ったく、困りましたね?)
そうして、マレーナに気づかれぬよう、鉄拳制裁を加える。
また一人、不埒ものを「反省室」送りにするのであった。
マレーナが、こっそりと一礼していることも知らずに――。
■
湯島 茜(ゆしま・あかね)はキヨシに興味津々だった。
それはなぜかと言えば、キヨシが「ありとあらゆる意味において、怪しい!」からである。
「本当はすでに契約していたりするんじゃないかな?
だって、絶対にあの行動は一般人より怪しいと思うよ!」
というわけで、キヨシの小型結界装置を奪うことを計画した。
「奪ったらどうなるのか? 取りあえず様子を見てみるよ!」
そのために、エミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)に協力を頼む。
「了解であります。
首狩り族に邪魔しないよう頼んでおくのですね?
でも、何の為に???」
「いいから! 言う通りにしてよね!」
「はいはい」
そうして、「さくらんぼの会」のコネを使い、根回しで協力を仰ぐのであった。
「じゃ、本番いくよお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
誰もいない時を見計らって、キヨシにこっそりと近づく。
もちろん、キヨシの201号室で。
キヨシは本日起こった様々な疲れが引いたせいだろうか?
ぐっすり夢の中だ。
(しめしめ!)
茜はキヨシのポケットから、小型結界装置を取り出して、一端廊下に出る。
そしてえいっと遠くに放り投げた。
「わわっ! あ、あれれ? 茜さん?」
起きたばかりのキヨシが、茜を不思議そうに眺める。
茜はしいっと口元に手を当てて、笑顔で部屋を後にするのだった。
茜はその後、業者を通じて、拾ったキヨシの小型結界装置を売り飛ばす。
その価格は「10000G」と案外安いものだった。
「ふーん、意外ね?」
だが、茜の興味はそんなことより、キヨシの方に向けられる。
一方。
キヨシは小型結界装置がないことに気づいたのだが、そのことは取りあえず放っておいた。
「ま、お守りみたいなもんだ、て。
兄さんも言ってたしな……別にいいだろう」
身軽になってよかった、せいせいしているようである。
■
その頃、地平線の彼方で、何か巨大な者達が蠢き始めていた。
だが、その存在を知るものは、まだ誰もいない――……。
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