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ユールの祭日

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ユールの祭日
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●●● ドラゴンスレイヤー

この戦いに名を連ねた英霊のなかには、円卓の騎士も多くいた。
サー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)もそのような騎士の一人である。

アーサー王最後の戦いであるカムランの戦いを生き残り、アーサーからエクスカリバーを預かって湖の貴婦人のもとに届けたのが、このヴェディヴィア卿である。
彼自身は優れた槍の使い手である。

「この勝負、見事勝利し優勝の栄光を我がマスターに捧げましょう。
 円卓の騎士が一人サー・ベディヴィア参ります!」

駿馬に跨り槍を手にしたその姿はまさしく威風堂々、パートナーたる氷室 カイ(ひむろ・かい)にとっても誇らしいものであった。


対するは北欧神話のサガに起源を持つ勇士、シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)
である。

「この龍殺しのシグルズ、ブリトンの竜王ごとき討ち取ってくれるわ」
とばかりに威勢が良い。
ブリトンの竜王とは無論アーサー王である。
手にした剣は長大なもので、槍と比べても遜色ない。

アーサー王伝説はさまざまなバリエーションをもつが、多くの場合円卓の騎士たちはゲルマン系のサクソン人と対決している。
この戦いは円卓の騎士とゲルマンの勇士の戦いという側面があったのだ。


両名ともが軍馬に騎乗してのこの一戦、今までにない趣向であった。

ヴェディヴィア卿が馬の腹を蹴って走らせる。
馬と槍を用いたランスチャージである。
槍はシグルズに命中し、どすんと落馬した。

しかしシグルズはすぐに起き上がり、両手剣をぶんと振り回す。
これがヴェディヴィア卿の馬にあたり、やはり彼も馬から落ちる。

馬というのはかなり大きな生き物で、落馬すれば騎手の命は奪われかねない。
落馬してなお戦い続けられるというのは、相当な手だれの証拠である。

起き上がろうとするヴェディヴィアに向かい、シグルズが大剣を振り下ろす。
ヴェディヴィアはそれを受け止めようと、篭手をはめた片手を伸ばした。
ぐしゃり、という音がして片手が砕ける。

それは篭手ではなく義手であった。

伝承『マビノギオン』によれば、ヴェディヴィアは隻腕の騎士であったという。
現在の彼は義手をつけていたのだが、それを盾のように用いたのだ。

次の刹那、もう片手に握られた槍が9度繰り出された!

まったく人間業とは思われない、脅威の槍技である。
槍はすべてシグルズを捉え、胸や腹、さらには顔にまで打ち込まれた。

しかしなんたることか!
ヴェディヴィアの槍は、シグルズに傷ひとつ負わせることができなかったのである!

シグルズはやや不快そうな顔をして、足で騎士を蹴りつけた。
数度蹴りつけると、それっきりヴェディヴィアは動かなくなった。
勝敗はここに決したのである。

「その程度の技がシグルズ様に通じるものか。
 今のあの御方は、まさに無敵といっていいのだぞ」
シグルズのパートナー、アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)は満足気につぶやいた。

「あれだけの攻撃を受けて無傷とは……なるほどな」
イルミンスールの瓜生 コウ(うりゅう・こう)は何か納得した様子でうなずく。