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シルバーソーン(第1回/全2回)

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シルバーソーン(第1回/全2回)

リアクション


16 カイン

 それはさしたる予兆も何もなく、突然起きた。
 耳をふさぎたくなるような重い爆発音と揺れが居城を揺るがす。
「一体何事だ!!」
 廊下へ飛び出したバァルの元へ、ばたばたと警備の騎士隊が駆けつける。先頭に立つのは12騎士のオズトゥルク・イスキアだ。
 バァルから一定の距離で足を止めた彼らは、即座にバァルに向かって礼をとる。
「領主! ご無事でしたか!」
「あれは城のどこかが爆発した音だろう。侵入者か?」
「現在騎士をやって調査中です。しかしあの音と揺れから、おそらく中庭に面した壁が爆破されたものと思われます」
「即刻調べて報告しろ。あれは街まで響いたはずだ。民はまだあの夜のことを忘れていない。また爆破事件が起きたとなれば、恐慌状態に陥るかもしれない」
 あのときよりもさらに早く、彼らは陥るだろう。恐怖はあっという間に伝播する。あの虐殺と火を思い出し、逃げようと門へ殺到すれば二次被害へと発展する。死者が出るかもしれない。
「分かりました。では私が直接参ります」
「頼んだぞ」
「はっ!」
 一礼し、オズトゥルクは騎士隊を率いて階段へ急いだ。
 奥宮を出、表の城へ――その通路に、立ちふさがる男がいた。
 ほうきを逆さにして立てたような男。それがオズトゥルクの持った第一印象だった。オールバックのぼさぼさ頭。白い服に包まれたその手足は、オズトゥルクが掴めば一瞬でアメのようにぽきりと折れてしまいそうなほど細い。病的な細さだ。
 先端のとがった耳、釣り上った口端。厚いメガネの下で、狂気めいた渦を巻いた黒い瞳がこちらを観察するようにねめつけている。
 オズトゥルクは初見だったがこの男、名をゼブル・ナウレィージ(ぜぶる・なうれぃーじ)という。何よりもヒトを愛し、ヒトを讃え、ヒトを崇め、完全無欠のヒトを追い求めるあまり、ついには我が手で生み出すことのみに固執し――それゆえに外道に堕ちることすらいとわなかった。
 同じ悪魔にすら変わり種、病質的と呼ばれ、嫌悪される者である。
「てめぇ、何モンだ」
 城にいるコントラクターの顔も名前も頭に入れている。今このとき現れて、それがあの爆発に関与していないはずがない。
 オズトゥルクがクレントアックスをかまえるのを見て、周囲の騎士たちも剣を抜く。いつでも対処できるようかまえる彼らを見て、ゼブルは猫背をやめて背筋を張った。
「静聴、静聴」
 ぱんぱんと両手をたたき、注目を求める。
「んーんー、よいですかな? あなた方は今、無粋な真似をしようとしているのです。この先にあるは時を越えた再・戦! くつがえらぬ過去を上塗りするだけの簡単な突貫工事! んんー、これもまた人間の性なりしかっ!」
 しゃべっている間中、まるで特撮ヒーローの決めポーズのような手振り足振りをつけるものだから、そういったものを知らないオズトゥルクたちには彼は奇妙奇天烈、頭の病に侵されている者のように映る。
「はぁ? 何言ってんだ、てめぇ」
 鼻白み、ますますうさんくさい者を見る目で凝視する。
「今はてめぇの相手をしているヒマなんざねぇんだ。いいからそこをどけ。さもなくば力ずくで排除させてもらう!」
 その言葉を聞いて、ゼブルはニヤリと笑うと両腕を大きく広げて見せた。
「おろか、おろか、おろかなり! 人間! しかしそれもまた人間! ならばこのワタシが、ぜひとも正しき道へ導いてさしあげましょうッ!! 
 【ダークビジョン】で視界は良好! 我がフラワシ【ラブ・デス・ドクトル】も絶好調! イェア!
 全身をぶるぶる震わせ、絶頂の雄叫びのような高らかな宣言とともに『何か』がその背後から現れた。その『何か』はオズトゥルクの横にいた騎士の両腕を一撃で斬り落とす。
「! なんだとッ!?」
 自分の目を疑うオズトゥルクの周囲で、凶悪凶暴な『何か』が猛威をふるう。たちまち数人の騎士が再起不能に追い込まれ、オズトゥルクもまた無数の傷を負うことになった。
「……くそったれがあ!!」
 本能的、オズトゥルクはゼブルに向かっていった。
 フラワシを消すには術者を倒すしかないと知っていたわけではない。『何か』はこの男の宣告とともに現れた、この男が何かしたに違いない、ならばこの男を倒せば、と直感したのだ。
「うらああああっ!!」
 首めがけて横なぎされたクレセントアックスが、彼の首をはねる直前ぴたりと止まる。ぶるぶると震える腕。全力を込めているのに、まるで見えない鉄の柱にでも食い込んでいるかのようにクレセントアックスはそれ以上1ミリたりとゼブルに迫ることはなかった。
「くそっ!!」
 左右に振り、突き崩そうとするが、見えざる壁は完璧にゼブルを防御している。ふっと息をついた瞬間、何かが迫っているのを感じて、反射的、オズトゥルクはクレセントアックスを盾とした。
 ラブ・デス・ドクトルはクレセントアックスを一撃で破砕し、オズトゥルクを壁までふっ飛ばす。
「ククッ。我が華麗なる舞をお見せするほどでもなかったとは、残念、無念、超至極ッ! しかしこれまた多生の縁。い〜いものをあなたにプレゼントしてさしあげましょう!」


 12騎士のカファサルーク・イシュレイマ・アーンセト率いる騎士隊が到着したとき、立っている者は1人もなく、廊下にはもう死んでいる者か、今死にかけている者しかいなかった。
「オズトゥルク! どうしました! 何があったんです!?」
 うつ伏せに倒れた彼を膝に抱き起こした直後、ハッとなる。
 彼はあきらかに毒に侵されていた。


*           *           *


 少し時間をさかのぼる。
 まだ城内のだれも、侵入者の存在に気付いていないころ。中庭の一角には3人の男が立っていた。1人は禍々しい気を発する白いコートをまとい、超重量の巨大剣を背負った男、もう1人は強化スーツの上からブラックコートをはおった男。そしてもう1人は、フードマントで全身をすっぽりおおい隠した年齢・性別不詳の者だった。
「――本当にここにやつがいるのか?」
 白いコートの男白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)が、疑っていることを隠そうともせず訊く。
「おや? 信じないのか?」
 フードマントの者はククッと引きつったように笑って、おもむろに彼らに背を向けた。
「まあそれもいいだろう。わたしがおまえにしてやることはもうないからな。わたしがちょうど行こうと思っていた場所におまえも来たがった。ついでに連れてきてやっただけだ」
「おい。どこへ行く、タルムド」
「言っただろう。わたしにはわたしの用がある。確かめねばならないことができたのさ。まったく面倒なことだ。やつはいつもこうしてこちらの予想外のことをする…。
 片道切符だと最初から言ってあっただろう? 帰りたければ自分の足で帰れ」
 そしてフードマントの者は消えた。彼らの足元に、抜け殻のようなフードマントを落として。
「……ち。これだから魔女ってヤツぁ信用がおけねぇんだ」
 目を細めて凝視すれば、木陰の暗がりに溶け込むように黒い霧の塊が移動して行っているのが分かる。黒い霧は回廊に入り、城のどこかへ消えて行った。
「ここのどこかって……どんだけ広いんだよ? ここは。森か?」
 振り向いて、城の中庭を見渡す。森というのは少々大袈裟かもしれないが、ゆうに野球場2〜3個分はありそうだった。ここを探し歩くだけで数時間はかかりそうだ。しかも、相手がもしもここにいたとして、だ。いなければ全く意味のない、ただの散歩になってしまう。
「出直すか?」
「ったって、ゼブルのヤローはもう行っちまったし。しゃーねえ。こうなったらうちの強者レーダーに任せるさ」
「……私にはそんな機能ないです」
 白いコート姿で竜造に装着されている魔鎧アユナ・レッケス(あゆな・れっけす)がぽそっとつぶやく。しかし当然のようにそのつぶやきは黙殺された。
「徹雄、おまえも今度は遅れをとるなよ。首かっ切られるとこだったんだからな。あんまなさけねーことしてると今度は助けねぇぞ?」
 その一瞬で松岡 徹雄(まつおか・てつお)の気配ががらりと変わった。戦闘モードに入ったこともあるが、威圧感のある重厚な殺意が全身に静かにみなぎっている。彼もまた、竜造がここに来るつもりだと知ったときから決意していたのかもしれない。口には出さないだけで。
(ふん。「いやぁ竜造は痛いとこをつくねぇ」とでも言うかと思ったが…)
「行くぞ」
 2人は同時に遊歩道へ向かって一歩を踏み出し、連れ立って中庭へ入って行ったのだった。
 そして――自覚がないだけで、本当にアユナには強者発見機的な第六感が備わっていたのか――竜造は予想していた以上に早く、目的の人物カイン・イズー・サディクを見つけることができていた。
 しかも相手はくさむらのなかの彼らに気付いていないらしい。
 一見、カインは1人で見回りをしているように見えた。だが同等の距離で3人のニンジャが後方の死角に相当する位置と背後を歩き、彼女をカバーしている。
(おあつらえ向きにカインとその子飼い3匹のみときてる。……ま、あの女がほかの騎士たちとなれ合って談笑してる姿なんざ、想像もつかねーが)
 このまま、気付いていないうちに不意打ちをくらわせるか? ――その案を、竜造は一蹴した。
 この女に限っては、不意打ちなんざコセコセした真似はしたくない。どうせなら前の勝負の続きのように、真正面からぶつかるのが礼儀ってものだ。
 竜造は梟雄剣ヴァルザドーンを両肩に渡らせ、堂々とカインの正面に姿を現した。
「よォ」
 いきなりこんな場所へ現れた彼を見て、カインはどんな反応を見せるか、それが少し楽しみでもあった。しかし期待は別の方向で裏切られた。彼女は何の反応も示さなかったのだ。まるで、彼がだれだか分かっていないように。
(……べつにどうでもいいことだからどうってことねぇが……しかしそんなに印象薄いか? 俺。殺し合ったってーのによ)
 まだしも、彼女の配下の騎士の方が反応が早かった。竜造に向かい、問答無用で三位一体の攻撃を仕掛けてこようとする。小刀を手に跳躍した彼らに向かい、徹雄が先制攻撃で煙幕ファンデーションを投げつけた。
 白煙に視界をふさがれ、目標を見失った彼らは攻撃を止めて着地する。そこに、徐々に地へ下りてきた煙にまぎれるようにして、さざれ石の短刀と女王のソードブレイカーの二刀流で徹雄が突っ込んでいく。
 刃と刃がぶつかり合い、競り合う音が聞こえるなか、カインは先までと変わらず竜造と対峙していた。
 配下の者が戦っているというのに、気にかけている素振りも、戦いに加わろうとする素振りも見せない。一体あの3人とカインの関係はどういったものなのか……奇妙な主従関係に見えたが、それもまた、竜造には関係ないことだ。
「あいつらはあいつらでやらせておくとして。因縁の浅からぬ者同士、どうせなら1対1で殺し合おうぜ。もっとも、拒否なんざさせねえけどな。
 それに、てめぇだってイェサリってやつをぶっ殺した相手をその手で仕留めてぇだろ?」
「………………ああ」
 竜造の用いた名前に、やっとカインは反応を見せた。しかもそれは応じる「はい」という意味ではない。「ああそうか。あのときのやつか」の「ああ」だ。
 なんかもう、だ。なんかもう、やるせないというか、やる気がこそげ落ちていきそうな…。
 しかしここでやめたら何のためにここまで来たのか分からなくなってしまう。竜造は立て直した。
「うらぁあっ!!」
 勇士の薬を服薬して上昇させたスピードで距離を詰め、間髪入れず金剛力でヴァルザドーンを高速に振り下ろす。しかしその剣先は地にめり込んだ。カインは美しい宙返りで後方に跳び、距離をとろうとする。
「させるかよッ!」
 カインの戦法は縦横無尽の動きから繰り出される急所攻撃を主体とした一撃離脱の速攻型――竜造は前のぶつかり合いで、そう読んでいた。だからこそ、前回のように動きが制限される場所であるほど彼女は強敵となる。しかしここは戸外。彼女のトリッキーな動きを増幅する壁や天井といったものはない。
 竜造は彼女の着地点を予測し、走り込むやヴァルザドーンでなごうとした。だが予想以上に速い。彼女は先に着地を果たし、身を沈めてこれをかわした。そしてそのまま間合いを詰め、小刀で死角から突き込もうとしてくる。
「ちッ」
 得物を捉えきれないまま、竜造は百戦錬磨の勘で後ろへ避けた。彼の耳元をビュッと風が走り抜ける音がする。はらりと数本の髪が舞った。
「てめぇ!」
 だが勢いよく避けすぎた。のけぞり、背後へ倒れ込みながらも蹴りを繰り出す。その足を踏み台に、カインは上へ跳んだ。
 これは予想外だった。あんな体勢からの蹴りが決まるとは思わなかったが、けん制となって距離をとると思ったのだ。だが考えてみれば当然だ。ヴァルザドーンはでかい。ヘタに距離をとるよりは懐へ入り込むのが最善の防御だ。
 仰向けに倒れ込んだ直後、カインの小刀が顔面目がけて振り下ろされる。太陽のまぶしさに目をやられながらも首を傾け、皮一枚で避けた――が、ひざ蹴りをかわすことはできなかった。
 龍鱗化によって護られてはいるが、衝撃を完全に殺しきることはできない。慣性で威力を増したひざがしらが肺の真上を直撃し、一瞬息が詰まった。
 ヴァルザドーンで振り払い、よろめき立つ。
「くそ……並の者なら即死しておかしくない技だったぞ、あれは…」
 距離をとったカインは彼が現れたときと全く変わらず、息ひとつ乱していない。昼間の光の下で見ると、色がないのではないかと思えるほど薄い水色の目は彼女の思いを何も映しておらず、無感情で無慈悲。冷徹。
 外見はどこもそんなふうには見えないのに、なぜか天使を想起させた。慈愛だの何だのといったぽわぽわしたやつじゃない、戦う、裁きの天使だ。
「……へっ。らしくもねェ」
 おもむろにヴァルザドーンをかまえ直し、走り込む。避けられるのは承知の上だ。懐へ入り、ふるおうとする小刀が彼の標的だった。彼女が距離を詰めるのを冷静に待ち、ヴァルザドーンを手放して小刀を持つ手を掌打で狙う。そして武術へ持ち込んだ。
(……あれは)
 竜造がカインと激しく肉弾戦を繰り広げていたとき、アユナは草葉の影からこちらを見ている者がいることに気付いた。ほとんど草と木に隠れて見えないが……
(まさか、トモちゃん!?)
 魔鎧形態を解き、そちらへ走り寄る。しかし探し求めていた相手を見つけた喜びは、一瞬で失望へと変わった。それは彼女の探していた人物ではなく、カインと同じ12騎士の1人ミフラグ・クルアーン・ハリルだった。
「あ、ああ、あなただれっ!?」
 突然目の前に現れたアユナに、まるで化け物でも見るように目をむいておびえる。その姿にアユナのなかで失望が消え、むくむくと怒りが沸き起こった。
「どうして? どうして違うの? あなた、私のトモちゃんどこにやったの? ねぇ、答えて……答えてください! さもないと、殺しますよ…?」
 魔女のフラスコを相手の目の前へ持ち上げる。いましもそれを傾けて中身をかぶせようとするアユナにミフラグは悲鳴を上げ、気絶してしまった。
「ミフ!?」
 カインの意識がそちらへそれる。この絶好の機会を竜造が見逃すはずがなかった。
 地を転がりながらヴァルザドーンを拾い、立ち上がる間も惜しんでひざをついたままレーザーキャノンで横一閃を仕掛けた。カインに跳んで避けるだけの時間はないはずだ。殺った! 竜造は今度こそ確信した。
 何を思ったか、カインは避けるかわりに土煙を巻き上げた。ほぼ同時にレーザーは彼女のいた位置を真っ二つにして流れる。レーザーキャノンは遠く、居城の壁まで届き、これを破壊した。激しい爆発音と地響きが起きる。しかし今、そんなことは関係ない。たしかに殺ったとの確証を求め、竜造は土煙の向こうに倒れているはずのカインの上半身と下半身を求めて目を細める。
 だがそんなものはどこにも転がってはいなかった。
 カインは突き刺した小刀を足場に土煙のはるか上を跳躍し、竜造の背後を取っていたのだから。
 そうと気づいて振り返った竜造の右目めがけて突き出されたクナイ。肌は龍鱗化していようとも、目や口のなかといった場所は無防備だ。今しも突き込まれそうなそれを、短刀の投擲が救った。
 新たな敵の出現に、カインはいったん距離をとる。
「竜造、時間切れだ」
 連携プレーに長けた3人の手練れを一度に相手して、あちこちに裂傷を作った徹雄が言う。
「じきにほかのやつらがやって来るよ。退いた方がいい」
「……そっちは?」
「1人殺った。1人は瀕死というところかねぇ」
 少なくとも雪辱ははたせたと、いつもの飄々とした彼に戻って告げる。その声にかぶさって、回廊を走って集まってくる、かなりの数の騎士たちの靴音が聞こえてきた。
「ち。――行くぞ、アユナ」
 呼ばれるまま、アユナは白いコートの魔鎧形態になって竜造の元へと戻る。
 竜造は、少し先で立つカインを見た。
「いつもいいところで邪魔が入りやがる」
 まだまだやれる。やり合いたい、その衝動は大きく、彼女を見ていると流されそうになる。だが、どう考えても今の状況でそれは愚行でしかなかった。
「カイン、ご無事ですか!?」
 竜造たちが去ってしばらくして、カファサルークがこの場へ到着した。カインの足元には配下のニンジャが1人ついていて、周囲を警戒している。
(おかしい。ほかの2人はどこに…)
「カファスさま! こちらに死体が!」
「ミフラグさまが見つかりました! どこもおけがはされていないようです!」
 2人の騎士から同時に報告の声が上がる。指示を出そうとカインから視線をはずしたとき。
 カインがその場にひざを折った。
「カイン!?」
 配下の騎士が支えようとした手をすり抜けて、地面に転がる。彼女のわき腹からは、どくどくと血があふれ出ていた。黒い衣装でパッと見には気付けなかったのだが、かなりの深手だった。
「薬師を……いや、コントラクターのだれかを呼んでこい!! 急げ!!」
「は、はいっ!!」
 カインの血でまたたく間に血の海と化した現場に青ざめながら、騎士は走った。