校長室
死いずる国(後編)
リアクション公開中!
儀式 PM23:30(タイムリミットまであと30分) その部屋には、大仰な装置があった。 一見、呪術的な儀式とは関係の薄そうな機械的な計器やパイプの組み合わさったその中央に、ひとつの窪みがあった。 「ここに、宝珠をはめればいいの?」 「わっちも詳しいことはよく知らないでありんすが…… 多分、そうでありんす」 「ここまで来たんだ、迷う事はない。理子、頼む」 「ええ!」 クローラの声に、理子は宝珠を装置に組み込んでみる。 その瞬間。 ヴ……ゥン! 突然電源が入ったかのように、宝玉と装置全体に光が行き渡る。 計器の目盛は狂ったように踊りだし、パイプは振動し始める。 「わ、こ、これで良かったのかな」 「さあな。後の事は、オッサンの未来予知でも分からねえんだと」 不敵に笑う壮太の横で、宗也が頷く。 「とにかく……頼んだわよ、宝珠と、機械さん!」 その声に応えるように、宝玉からの光が強くなる。 強く、強く、直視できない程に。 振動が、感知できない音のように激しくなる。 それが部屋中に溢れ、その場にいた全員がこれ以上は耐え切れないと思った次の瞬間。 ヴゥウウウウウウ……ッ! 光が、振動が、消えた。 「え?」 「あれ?」 あまりにも唐突に訪れた静寂に、不安そうに顔を見合わせる面々。 「終わった、の? まさか故障ってことないわよね」 不安そうに自身を抱き締める美由子。 しかしその不安は、部屋の外から聞こえてきた声によって打ち消される。 静かな、しかし歓喜に満ちた歓声。 それは、祥子や美羽コハクの接ぎ死体と戦っていた旭やルカルカ、アスカたち生者の声だった。 ◇◇◇ 「ム、グぅううう……っ」 「お、おぉおおお?」 「くぅううううっ」 十面死となっていたハデスらの体から、ぼとぼとと何かが落ちていく。 死人の、手足や顔といった体のパーツだ。 そして、それらは完全に停止した。 死。 それ以上でも以下でもない、完全な存在が彼らの元に訪れたから。 物陰に潜んでいた神楽坂兄弟も、最後の断末魔を残しつつゆっくり倒れていく。 ◇◇◇ 「……そうか、もう、お終いですか。せめて、あなただけでも……」 ずっと大きな『荷物』を抱えてきた貴仁も、自身の限界を知り膝をつく。 貴仁が抱えてきた『荷物』もまた、その動きを止めていた。 ◇◇◇ 「……お兄ちゃん」 「爽麻」 この世界に存在するのは、二人だけ。 爽麻と鏨。 幸せな二人はキスを交わし、そのまま行動を停止した。 ◇◇◇ コームラント・ジェノサイドと戦っていた恭也も、無言のまま倒れていた。 円たちは最後まで彼が死人だと気づかなかった。 戦闘が終わり、イコンとの戦いで死亡したと思われる恭也を丁寧に葬った。 ◇◇◇ 儀式は、終わった。 死人は、停止した。 これですべてが終わったのだ――