リアクション
もうひとつの潜入
PM21:00(タイムリミットまであと3時間)
潜水艦が、音もなく海中を進んでいた。
目的地は、横須賀基地。
「間もなく、研究者たちの脱出口だ。そこからなら内部に潜入することも可能だろう」
「……」
矢代 月視(やしろ・つくみ)と名乗る人物の言葉に、同乗している飛都はただ無言だった。
月視はコームラント・ジェノサイドが解き放たれる前に横須賀基地を出て、つい先程飛都との合流を果たした。
彼は飛都に告げる。
基地への潜入方法を。
しかし飛都は……いや、飛都と名乗る人物には、それよりも驚愕することがあった。
「何故、お前なのか……」
月視は、飛都だった。
そして飛都は、飛都ではなかった。
(おかしい……)
潜水艦の中、月視は終始違和感を感じていた。
潜水艦のハッチの、ロックが解除されていた。
一応内部は確認して問題なかったが、どこか見落としている点はないか……
「『飛都』……ん?」
押し黙ったままの飛都に声をかける。
しかし返事はない。
そのまま、飛都はぐらりと倒れた。
「飛都、飛都……っ!?」
彼の瞳に、生気はなかった。
「一体、どうして……はっ!」
ほんの小さな隙間だった。
本来なら、計器類がある筈の。
それが外され、そのスペースにあったのは……
「死人っ!?」
身構える間もない月視に、死人が襲い掛かる。
「あああああっ……」
生気を吸われているのが、自分が死んでいくのが、そして死人になっていくのが感じられた。
「あ……」
死に際、月視の目に潜水艦の外部の様子が映った。
脱出口は、岩で塞がれていた。
「あ……はは、は」
計器のない潜水艦は、そのままずっと下降を続けている。
中には、死人が3人。
死ぬこともできないまま、沈み続ける。