リアクション
16)
杜守 柚(ともり・ゆず)は、
高円寺 海(こうえんじ・かい)を、
宮殿都市アディティラーヤの自分の家に招待した。
白を基調とした、お城と洋館を合わせたような外観だが、
柚の希望で和室もある。
「お風呂も広いんですよ」
順番に家の中を案内して、
柚がにこにこしながら言う。
「ここが私の部屋です」
天蓋つきベッドがあり、
かわいい家具や小物がたくさんある。
「この間は、友達も泊まってくれたんですよっ。
いつでも、誰でも来てもらえるように、客室もあるんです」
「なるほど、立派な家だな。
雰囲気も、柚らしくていいな」
海が、うなずく。
「海くん、泊まって行きませんか?」
柚は、海をじっと見つめて言う。
「もし海くんが天蓋つきベッドがいいならお部屋を交換しますし、
和室で寝てもいいですよ」
そこまで言ってから、柚は、自分の発言の意味に気づく。
「あ、えっと、その……ち、違っ……!」
友達を誘うような感じで気軽に言ってしまったのだ。
顔を赤くして動揺していた柚だが、なんとか落ち着くと、笑顔を取り戻す。
「夜は星が近くて凄く綺麗なんです。
だからぜひ海くんにも見せたいって思ったから……」
海は、ふっと優しく息をつくような、小さな笑みを浮かべた。
「女の子の家に泊まるわけにはいかないけど、
綺麗な星は見せてもらってもいいか?」
「はいっ! もちろんです!」
柚は、笑顔でうなずいた。
■
夕食を作り、二人で一緒に食べてから、
一緒にバルコニーに出る。
「地球もツァンダもニルヴァーナも星が綺麗なのは変わらないですよね」
手を広げて、星をつかもうとする柚が、身を乗り出しているのを、
海が自然に支える。
「気をつけろよ」
「あ、ありがとうございますっ」
「まったく、危なっかしいな」
海は、穏やかに微笑む。
(今、一瞬でしたけど、すっごく近くに……)
柚が、高鳴る胸の音を感じつつ、頬を赤らめる。
「あ、流れ星」
「本当です!」
海が指し示した先を見て、柚は。
(海くんと両想いになれますように……!)
そう、願ったのだった。