リアクション
黒を基調とした色っぽい魔女の仮装で、パーティーに参加した、
辻永 理知(つじなが・りち)は、
牙とマント、タキシードの吸血鬼姿の、辻永 翔(つじなが・しょう)と並んで歩いていた。
「美味しそうな料理が並ぶと迷うよね」
「そうだな」
はぐれないように、手をつないで、2人は歩く。
しかし、そうしているうちに。
いつのまにか、2人は、変身してしまっていた。
「ねえ、翔くん?」
理知は、そっと、両手で翔の手を取る。
胸の開いた魔女の衣装、
その、胸の上に、翔の手を、そっと重ねる。
「ダメ、かな?
こんなに、大勢、人がいるところで……」
「いや……」
翔は、理知にそっと近づき、ささやいた。
「理知の姿を、他の誰にも見せたくない。
俺だけのものになれ、理知」
「翔くん……」
翔もまた、変身の効果で、吸血鬼のような気分になっているらしい。
2人は、そっと、人目のない場所へと連れ添っていった。
「翔くんは血が欲しいの?
私は翔くんが欲しいの。
血をあげるから翔くんを頂戴」
白い首筋を差し出し、理知が、翔を求める。
「理知……」
吸血鬼の牙が、理知の首に突き刺さる。
熱い、脈動が、理知の胸を襲う。
理知は、そのまま、翔を抱きしめる。
2人の熱が、けして、離れぬように。
翔の吸血が終わった後。
「翔くん……」
理知は、そっと、翔と唇を重ねる。
牙が少し邪魔だったが、そのまま、深く、口づけを交わした。
「ねえ、翔くん。
私、もっと、翔くんのことが……。
翔くんのすべてがほしいの」
「ああ、俺も……頭の中が真っ赤に燃えたぎってる気分だ」
理知の求めに応じて、翔が、理知を抱きしめる。
そのまま、2人は、深く、熱く、愛しあったのであった。
なお、元に戻った後。
「……っ!」
理知は、まともに翔の顔を見ることができなくなってしまった。
そこで、服の裾をつかんで、背中に隠れてしまう。
(恥ずかしい……。
だって、あんな……)
変身していた時のことを思い出し、
あまりにも大胆なことをしてしまった羞恥心で、理知は真っ赤になる。
「……」
一方、翔も、それは同様だったのか、
そのまま、2人は、しばらく顔を合わせることができずに、そうしていたのであった。