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人形師×魂×古代兵器の三重奏~白兎は紅に染まる~

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人形師×魂×古代兵器の三重奏~白兎は紅に染まる~
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リアクション

 
 21 悪の散り際、それは華麗に、そして華々しく

 もう何体倒しただろうか。途方もない数を屠ってきたが、今だ兎達の数は減るどころか増えているようにも見える。
 ガルディアは地を駆けながら数体の兎を斬り飛ばす。胴体を裂かれた兎は小さな悲鳴を上げてその生命活動を停止した。
 彼の前に三体の兎が飛び跳ねながら現れた。口を大きく開け、涎を滴らせながら突撃してくる兎。その姿には既に愛らしさは微塵もない。
「慌てるな、メインディッシュをくれてやる」
 刀を下段に構えると、彼は逆袈裟切りに衝撃波を放つ。床を削りながら進む高速の衝撃波は一体の兎を瞬時に葬り、壁に大きな傷跡を作る。
 返す刃で彼は再び衝撃波を放つと同時に地を蹴る。二発目の衝撃波に捉えられ、足をもがれた兎達は空中で満足な回避行動もとれないままにガルディアの刀に斬り裂かれ肉の塊へと変わった。
 息つく間もなく、別の兎の群れが彼を襲う。
 大して驚いた様子もなくガルディアは刀を振るう。幾重にも重なる剣閃はそれぞれが光の帯に見えるほどに高速で放たれ、触れる兎達を次々に塵へと変えていく。
 その様子を離れた位置から見ていた女性――セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は溜め息交じりに言葉を漏らす。
「……向こうは疲れを知らないって感じね、あのスタミナ分けて欲しいわ、ほんと……」
 背中合わせになったセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がその言葉に反応する。
「そうね、こっちはそろそろ息切れしそうだというのに」
 両手に持ったラピッドショットのマガジンを交換するセレアナはセレンに問い掛ける。
「そっちの残りは?」
「……あと一回分って所かしら」
「奇遇ね、私も方もあと一回分よ。あとは……」
「わかってる、持てる戦力を全て使っての総力戦……フォローは任せたわよ!」
 セレアナの返答も聞かずにセレンは兎の集団に突っ込んでいく。もう返答は分かっているようだった。それは信頼のなせる技なのかもしれない。
 まったくといった表情をしながら、やれやれとセレアナはセレンのフォローにつく。
 兎の群れは突撃してきたセレンに喰い付こうと一斉に飛び掛かる。その動きを予見していたセレンはスライディングでその真下へ。
 群れの真下からサンダーショットガンを斉射する。雷撃が放射状に撃ちだされ、触れた兎を黒い炭素へと変えた。
 エネルギーの切れたサンダーショットガンを放り投げると寝そべった体勢から腰部に装着された3−D−Eを起動。アンカーを天井に向けて射出する。
 アンカーの巻取りにより高速で天井までたどり着いたセレンはフォースタクトを華麗に振った。その動きに合わせるように雷撃が放たれ、残った兎達はまとめて葬り去られる。
 アンカーの固定を外して地上に降り立ったセレンを別の兎の群れが狙う。
 そこに走るセレアナがラピッドショットの連撃をお見舞い。頭部を撃ち抜かれた兎達はばたばたと地に倒れ伏していった。
 生き残った兎達を回し蹴りで蹴り飛ばし、セレンの傍へとセレアナは辿り着く。肩で息する彼女は相当な速さで走ってきたようであった。
「もう、無茶ばかりして……」
「でも、片付いたし結果……ん? あれはッ!」
 セレンの注目する方には先程の倍以上の数、数百匹はいるであろう兎の一団が治療スペースの方角へと向かっている。
 対応しようにもセレン達の位置からでは遠く、その道のりにはまだいくつかの少数ではあるが兎の群れがいた。
 ガルディアも複数の兎の群れに対処しており、その一団の方に向かう余裕はなさそうだ。
 間に合わない……あのままでは治療スペースへの到達を許してしまう。二人がそう思った時、兎の一団の前に颯爽と現れた者がいた。
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)その人である。側らには何やら珍妙な機械ハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)が鎮座している。
「フハハハハハッ! 実演販売をしようと戦闘員を仕込む手間が省けたというものだ! この発明品の取っておきの機能を宣伝するにはこれ以上の舞台はないだろう、行くぞ!!」
 大仰なポーズの後にハデスが一際輝いたかと思うと、次の瞬間戦隊物の敵役の様な姿のロボットが一体仁王立ちしていた。
「フハハハ!うさぎごとき、このメカハデスの敵ではないわ!」
 両肩に装着された女王騎士の銃を連射しながらハデス――もとい、メカハデスはずしんずしんと歩みを進める。
 銃弾の雨が兎の一団に降り注くが数が多く、減ったようには到底見えなかった。
「ほう、これだけの銃弾を喰らってもびくともしないという事か。相手にとって不足無し!」
 大型銃、オニキスキラーを兎の一団へと向け発砲。着弾した部分から黒い闇が円形に広がると、周囲の兎を巻き込んで闇は消滅した。
 兎の一団の中にメカハデスは突っ込む。分厚い装甲に物言わせ、ダメージを物ともせず果敢に戦うその姿は治療スペース前の守護神といった所である。
 兎の嵐ともいえる中で奮戦するメカハデス。次第にその身にダメージが蓄積していく。
 飛びついた兎によって肩部の女王騎士の銃がひしゃげ、使用不可能となった。分厚い装甲と思われた肩にも牙によってひびが入っていく。
「警告? くそ、肩部の銃が使用不可能だと! だが、まだだ、まだ終わらんぞぉぉ!」
 オニキスキラーを連射し、兎の一団へと挑む。よく戦ってはいるが、多勢に無勢。ついにメカハデスは片膝を付き、回避行動すらとれなくなった。
「損傷度……80%か。ふはは……どうやらここまでのようだな、よし撤退だ!」
 後退しようとしたメカハデスであったがその身はピクリとも動かない。
「どうしたというのだ……な、なんだと……脚部がやられている……ふはははは……これでは撤退は不可能か」
 危険を示すアラームが鳴り響き、ハデスの眼前に映る映像には、損傷度を表す全身の色が真っ赤に染まっているのがわかる。
「かくなるうえは最終手段……悪の散り際ッッ! その眼にとくと焼き付けるがいいッ! ふはははははははははははははははーーーッ!」
 光がメカハデスに収束し、強く輝く。直後、大爆発が起きる。眩い閃光と激しい轟音。兎の一団は紅蓮の炎に焼かれ、一匹残らず消し炭となった。
 床には大きな陥没したクレーター様なものが残り、爆心地の炎の凄まじさを物語るかの様に中心部分は黒く焦げ付いていた。
 それを間近で見ていた治療スペースの特異者達から、お前の意思は無駄にしない、いい散り際だったと彼を惜しむ声が聞こえてくる。
 今回ばかりは危ないかと思われたが、こっそりと重傷者として回収され、治療を受け回復したとの事が後々判明した。やはり、しぶとさは折り紙つきのようである。