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リアクション
第5章 装甲列車はしる【2】
先頭車両の戦闘と前後するように最後尾車両でも戦闘が始まった。
屋根の大砲台座、そして機銃台座から放たれる砲撃と銃撃の雨をかき分けるように一頭のペガサスが飛ぶ。
股がるのは、規格外の筋肉と巨体を持つ規格GUYジェイコブ・ヴォルティ(じぇいこぶ・う゛ぉるてぃ)だ。
「……ったく、熱烈な歓迎ありがとうよ」
浴びせられる銃弾を盾でしのぎながら、ジェイコブはペガサスの首を撫でた。
「すまないな、初めての戦場で苦労かけちまって。もうすこし辛抱して飛んでくれ」
そう言って、装甲列車に乗り移る隙を窺う。
銃座を操るのはゴーストライダー……の上部分を担当する死人。
馬を駆るからこそライダーなのであって、上の人だけだとゴーストとなる。つまりただの亡霊である。
けれども、ゴーストだと字面上トホホな感じがするので、ここでは便宜上『ゴーストナイト』と呼ぶことにする。
「ともあれ、どう攻めたものか……。ん?」
視線の先に飛行翼せ接近する榊 朝斗(さかき・あさと)とそのパートナーの姿が見えた。
攻撃がジェイコブに集中する隙に、彼らは滑り込むように屋根に着地した。
「よし、一気に片をつけるぞ! 体制を立て直されたらこっちが不利だ!」
「かしこまりました。40秒で制圧します」
朝斗の言葉と同時に、アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)は魔銃レクイエムの引き金を引いた。
近距離に攻撃不能な大砲台座はあと回し、銃座に着くゴーストナイトを無駄のない動きで撃つ。
正確に人体の急所を撃ち抜かれた彼らは次々に屋根から転がり落ちていった。
「いいぞ。次は大砲のほうを……」
言いかけた朝斗だったが、突如目眩に襲われた。
「う、うう……リングもつけているのに……。なんだ、この苦しさは……?」
「しっかりしてください、朝斗」
ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)はよろける彼を支える。
「ナラカに来てから調子が悪そうでしたけけど……どうしたのですか?」
「……わからない」
正体不明の体調不良。ナラカの腐敗した空気にあてられたのかとも思ったがそれは違う。
原因は朝斗とルシェンが結んだ『仮契約』にあった。彼女が彼を吸血鬼にするのを拒んだため、血を提供される形で仮契約が結ばれた。その不安定な契約が異変をもたらした……しかし、彼らがそれを知るのはもう少し先のことになる。
「パラミタに戻りましょう。今ならまだ引き返せます」
「それはできないよ。あの塔が各地で起こってるナラカ化事件の手がかりになるかもしれないんだ……」
「ですが、その身体で無理は……」
はっとルシェンは顔を上げた。
大砲台座を放棄したゴーストナイトが槍を持ち、こちらに向かってくるのが目に入ったのだ。
「朝斗を庇うように抱きしめる……」
その時だ。
「させるかっ!」
凄まじい速度で飛び込んだジェイコブの栄光の刀が一閃。
肩から脇腹にかけて袈裟斬りにされ、墨のように黒い血を噴き出す騎士に、駄目押しの掌底を叩き込む。
持ち前の怪力を鬼神力でさらに底上げした一撃は甲冑を粉砕した。
空高く打ち上げられた騎士を一瞥し、ジェイコブは二人に目を向ける。
「危ないところだったな……。大丈夫か、おまえら?」
「ありがとう。助かったよ」
朝斗に肩を貸して起こしてあげる。
最後のゴーストナイトをアイビスが屋根からたたき落とし、最後尾車両の屋根は制圧完了した。
あとは中に侵入するだけだが……。
「む?」
後方から尋常ではない速度で突っ込んでくる小型飛空艇が見えた。
操縦者は如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)、後部座席にアルマ・アレフ(あるま・あれふ)も乗っている。
彼らが何をしようとしているのか勿論わからない。
わからないがわからないなりに、何か無茶をしようとしていることは察知出来る。
「なあ、朝斗……。俺にはイヤな予感しかしないのだが……」
「僕も同感だよ、ジェイコブさん」
二人が顔を見あわせた瞬間、アルマの光条兵器ランチャー『レッドラム』が火を吹いた。
「に、逃げろ!」
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