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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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雲賊出撃
 
 ヒクーロ雲賊のアジトでは、ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が改めて雲賊どもに、動くなら今しかないと畳みかけていた。
「このヒクーロにも教導の奴らは来てるハズだぜ。
 おまえらが築いてきたしきたりやルールのことなんか何も考えないで統一しちまうだろうなぁ」
 黙って真剣な面持ちでナガンの話に聞き入る雲族ら。
「証拠に、ホラこれを見ろ」
 ナガンは、足もとでばったと戯れていた女子をつまみあげた。さらわれてきた教導団の真白 雪白(ましろ・ゆきしろ)だ。真黒 由二黒(まくろ・ゆにくろ)の方は床にへたりこんだまま「ぱんつははかない主義なの……ぱんつははかない主義なの……」とずっと寝言を呟いている。
「おい武器商人。こいつぁ、ホントに教導団からさらってきたんだろな」
「そうだ」アルハザード ギュスターブ(あるはざーど・ぎゅすたーぶ)が答える。「証拠に、教導団女子プロファイルNo.34407にきちんと載っている」
「おら、吐け。子ども」
「教導団の目的はコンロン地方を教導団の影響下に置き、エリュシオン帝国との緩衝地帯とする事……」
「むぅ……?」「どういう意味だ? 難しくてわからん」「支配するわけじゃあねえのか?」雲賊らがざわつき出す。
「と、とにかく!」ナガンは、強調した。「教導の、いいように使われるってことだよォ!」
 ナガンは弁舌を続ける。
「いいか?
 コンロンの奴だけで統一や領土拡大を目指すならラストチャンスだぜ? このまま指を咥えて引きこもってたら、教導にコンロン全土を支配されちまうぜ? シャンバラと同盟? いやいや帝国への兵士として使われるぜ」
「うぬぅぅ」
「どうすればいい。とにかく教導を攻撃に行くか」
「帝国への兵士……そうだ帝国はどうする。帝国もヒクーロに」
 そこへ一人の雲賊下っ端が駆け込んでくる。
「情報が入りましたぜ。ヒクーロ方面に来ていた教導の連中が、国境で帝国と接触し交戦になりやした!」
「何だと。よし、チャンスだろ? ピエロ」
「ここで、俺らの力でやつらをヒクーロから撃退すれば、親父を動かせるだろ」
「おら、船を出せ! 雲賊の力、見せたれや!」
 雲賊どもはばたばたと戦闘準備に乗り出した。
「今日からわしゃあ雲賊じゃーい! 諸先輩方まじでよろしくおねがいしやーっす!」
 真白も雲賊の一員に加わった。
 ヒィーハ……。ナガンは少々思案した。そうか、帝国の奴らもいやがった。どうする。一緒におっ払っちまうのか。できるのか。まァ いい。とにかくやっちまえ。
「派手にいこうぜ派手に。ウジウジ引きこもってないで派手に白黒つけようぜェ!」
 ナガンは自身の降霊能力フラワシを撒き散らしながら、雲賊アジトのある裏町を走り回った。僥倖のフラワシ効果でニコニコ顔になった賊やならず者やヤクザたちが得物を手に持ちぞろぞろと出てくる。
「皆で教導も帝国もコンロンから追い出しちまえやぁぁ」
 
  


 
 
 ヒクーロは、接触してきた帝国側の態度が気に入らず、親父がはねつけていたということはわかった。
 しかしまた、教導団側が領内に入るということも拒んだ。自らの土地は自らが守るという。

 それから、増え続ける魔物には対処しきれていないことは事実のようである。このことには、帝国がヒクーロの国境付近に駐屯し圧力をかけているということが関連している。ヒクーロ側もそちらに兵を置き固めているのだ。
 刀真が、また孔中尉(教導団側)が言ったそれぞれ思いのため魔物の脅威を取り除きたいと思っている……ということには、親父の義憤は動かされ心は傾いたようではある。
 しかし協力する、という姿勢・申し出には拒むか、勝手にせいとあくまで頑なに言うのみ。
 (謎の聖女らのもたらした提案にヒントを受け、魔物問題を帝国・教導団への交渉の鍵にすることはできるのではないか、という案は上がった。三者、武力で衝突することは避け、まずは魔物の排除にあたる。しかし、これを帝国が聞くだろうか。帝国は威圧的だし、ヒクーロの親父も戦うなら戦ってやろうという意気込みなのだ。)
 教導団の艦隊が国境(南側)に近づいたとき砲撃を加えたように、東の国境付近に駐屯する帝国の龍騎兵団に対してヒクーロ側も再三警告を行っている。親父は、尚威圧的である駐屯軍に対し砲撃を行い、それで去らなければ一戦交える、ということに心を決めつつあるようである。
 
 
 そして、章頭に見た国境の戦いはどうなったのか。雲賊たちもまた、そこへと向かった。