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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第十一章 シクニカの戦い

 
 

 東のシクニカは外部勢力によって一時制圧され、 帝国はまずこの拠点を奪回すべく、シクニカを大量の龍騎兵団をもって包囲した。さらに、密林を越えて帝国の軍事基地より多くの兵がコンロンへ向かって おり、帝国はシクニカを奪回後、いよいよ教導団との全面対決に乗り出すつもりらしい。
 このことは、シクニカに入った教導団員のジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)から本営にも報告があり、外部勢力については、百合園の生徒と蒼学の生徒が混じっているということ。しかしその盟主については吸血鬼だという話など、未だ明確ではなかった。
 本営のクレア中尉は、これがシャンバラの生徒による行動であれば、他国に対するテロ行為と判断せざるを得ない、との見解を示し、部下のハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)を遣わせシクニカへの対処について、上層部及び所属校への確認を行うこととした。
「この事実を容認してテロ支援国家となるか、後付けで『あれは国家的軍事行動の一部』として大義名分の立てようも無く侵略国家となるか。あるいは個人によるテロリズムとして扱っていいのか。他校生のことですから一応確認はとる必要がありますね。クレア様。ではわたくしは一度本国へ行って参ります」
「うむ(……私とて、事を荒立てたいわけではないのだが。……私たちは教導団の軍事的な任務として規律のもと動いている。処罰がないからと好き勝手に動いてもらうのでは困る。行動の責任は問わせてもらわねば。……)」
 一方で、このシクニカに近い教導団の基地クレセントベースには、この外部勢力からの書面が届くことになるのだが……?
 
 
※第1回リアクション・第2回ガイドでシクニカにおける対立図を「帝国と百合園の戦いに」と書いてしまったのですが、シリーズ開始当初のゲーム全体の情勢(対立や結び付きなど)から、百合園が帝国に牙を剥くことになるかもしれない、百合園と帝国との衝突、と私が対立図式を意識しすぎてしまいそう書いてしまいました。この部分については修正させて頂きたいと思います。申し訳ございません。今回の占領はあくまで学校というより個人らの目的で組まれたグループの動機によるものです。(なので学校単位の対立にはなりませんし、影響しないものとします。)
 
 
 
シクニカ包囲 ラスタルテと謎の女性
 
 シクニカを包囲した帝国龍騎士団。指揮を取るのは神龍騎士ラスタルテ
「ラスタルテ様。一体、いかなる勢力なのでしょうか?」
「むう。……」
 シクニカの王城に掲げられた旗に記された文字『頁』。
「頁? ですか……頁?」
 実際には、ここから見えている『頁』の字は、読者の方々が見ているよりもフォントサイズが小さく、潰れている感じのフォントではっきり判別は出来ない。
「頁……違うのかな?」
「どうでもよい。とにかく、潰す」
 帝国側にとっては、彼らに協力する同盟国であり彼らのコンロン平定のための拠点であるところのシクニカ奪回、ということであるが、対抗勢力の彼女らは「圧政に苦しむ民を暴君から解放した」といい、「帝国はシクニカを搾取していたので、解放したことが気に入らないみたい」という。奪回にきたという帝国を撃退するのは、彼女らにとっては「正当防衛」であるといった論理を展開しているのであった。帝国側は知る由もないのだが……これは後、本校に報告書として提出され、彼女らの行為における是非の判断材料となる。
「ラスタルテ殿。お待ちください」
「何だ。……ほう、おまえは」
「攻撃の前に、どうか私の意見をお聞きください」
「あのような経緯はあったが、私はおまえのことは信頼している。しかし、な。それほど厄介な相手か?」
 神龍騎士ラスタルテに信頼されたという、女。帝国の者でもコンロンの者でもないらしい。中東系の端正な顔立ちの、髪を後ろに結んだ女性だ。冷ややかで静かだが鋭さを隠した眼差し。この女性は……
「はい。あの者ら、個々の強さが尋常ではありません。コンロン内地で消息を断ったという龍騎士。おそらく」
「やはりやつらがやった、のか。むう……」
「はい……とにかく、敵対するよりは利用するべきでしょう。中立にさせる形がベストだと私は思います。あの者ら、教導団とのつながりも薄く、命令に従う義務も持っていないでしょうし、シクニカの自治権など、くれてやればいいのです。ラスタルテ様。帝国にとっての一番の敵であり邪魔になるのは間違いなく教導団です。彼女らと剣を交えれば喜ぶのは教導団」
「……」
 ラスタルテは仮面を付けたまま暫し黙した。
「しかしこちらも部下を殺されている。それが教導団でなくやつらの仕業であるなら、易々許すわけにもいかぬと思うていたが」
「ですから、利用するのです。利用した後は、お好きに……」
「ふむう。教導団にせよ名の知れぬ勢にせよ策を弄する程の相手か」
「ラスタルテ様、……もし、どうしても戦う場合は、龍騎士の機動力が生かせる平野での戦いに持ち込み全兵力をもって叩くことを進言します。教導団はイコンを導入してくる……その前に!」
「イコン……」
 そこへ包囲の前線から、飛龍を飛ばし兵が来る。
「ラスタルテ様! や、やつら打って出ました!」
「何」
「しまった。遅かったわ……」
「前線の方々で、奇襲の被害を受けています!」
「おのれ。まあ、当初の通りだ。潰すのみである」ラスタルテは舞い上がった。それに続いて精鋭の龍騎士団が一人二人と空に舞っていく。