校長室
インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)
リアクション公開中!
【4】 GURDIAN【2】 「く、なんだこの妙な空間は……。力が沸いてこない。これが噂のマクー空間って奴か」 クルセイダーに備え、仮面ツァンダーに変身してパトロールしていた風森 巽(かぜもり・たつみ)だったが、シャドウレイヤーに適応出来ずにいた。 全身にのしかかる空気の重圧に、ツァンダーは膝をついたまま、身動きがとれない。 「目の前で戦闘が行われているのに……!」 目測で100mほど先、ランの銃弾が乱れ飛び、ラインオーバーの電撃が走り、グレゴが剣を振り回していた。 「この程度で諦めるか! あばよ涙、よろしく勇気だ!」 気合いとともに立ち上がる。 膝はガクガク震え、生まれたての子鹿のよう。1分と持たず、またぺしゃっと潰れた。 「ま、マクー空間め!」 「マクー空間じゃなくて、シャドウレイヤーだよ、タツミ!」 ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)がやってきた。 「ティアか、遅いぞ……って、なんだその格好は?」 「春風の魔法少女! ティア☆スプリング!」 シャキーンとポーズを決めた。 「この空間じゃ魔法少女じゃないと戦えないの。アイリに貰ったこれを取りに行ってたんだよ」 「”魔法少女仮契約書”……?」 「さぁ、名前を書いてエンゲージして! それからベルトの前に、左手に嵌めた指輪を近づけて、こう!」 「こう、と言われても……はっ!?」 クルセイダーにグレゴが薙ぎ倒された。 ラインオーバーが回復魔法で手当しているが、多勢に無勢、回復が追いついておらず、彼は満身創痍で戦っていた。 「このままではいけない! シルフィーリングを嵌めて……こうか?」 その瞬間、変身ベルトと契約書が反応を見せた。お洒落な言い方をするとケミストリーと言うやつである。 契約書に秘められた不可思議パワーを受けて、変身ベルトが喋り出した。 『シャバドビタッチヘンシーン! シャバドビタツミヘンシーン! シャバドビタッチヘンシーン』 『シルフィー・プリーズ』 『ラライ! ライ! ラッラッ! ラーイ!』 「走る雷のエレメント! ビートな魔法少女! 仮面ツァンダーウィザードたん! ……ってなんじゃぁこりゃぁぁっっっ!?」 ノリに身を任せ、変身ポーズを決めたところ、黒髪ツインテールのミニスカ&へそだしコスに早変わりした。 「こ、この格好はちょっと……」 「動揺してる場合じゃないよ!」 「く、いたしかたあるまい!」 ティアが前に出た。 「春の訪れを告げる雷! スプリング・サンダー!」 稲妻の間隙を縫うように、クルセイダーは散開した。 一人は短剣、一人は長槍。聖剣アシュケロンを変化させると、ティアを目標に定めた。 「我等の理想の前に立ちはだかる悪しき魔法少女め」 「安らぎを与えてやる」 「安らぎの押し売りはお断りだよ! スプリング・バリアー!」 剣の結界に、クルセイダーは攻撃を防がれた。 僅かな隙を見逃さずに、ツァンダーは風銃エアリエルの弾丸に氷術を付加。 『アイシクル・プリーズ!』 「……これ、毎回鳴るのか?」 戸惑いながらも引き金をひいた。 「アイシクル・シューティング!」 「なに……!」 敵の足元に撃ち込まれた弾は、地面と足をまとめて凍結させた。 行動の自由を制限したところで……、 『ファイアー・プリーズ!』 爆炎波を利き足に纏った。 「これで、幕引きだ! フレイム・ストライク!」 空を斬り裂く必殺の蹴り。爆炎とともにクルセイダーを吹き飛ばした。 とその時、小さな影が爆炎に紛れて、参戦した。 仮契約書の力によって、アライグマのマスコットととなったリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、肉球に気合い充填。 「激刹の拳・ポンタスタンプ!!」 「ぐふぅ!!」 柔らかな肉球が牙を剥く一瞬。鳩尾に打たれた敵は、くるくると回転して地面に叩き付けられた。 「……どこから出てきた、このアライグマ!」 「あ?」 瞑らなアライグマの瞳が、獲物を完全に殺す時の虎の目に変わった。 「人がわざわざ”ポンタ”つって、タヌキアピールしてんのに、おまえの耳はどうなってんだ、ぁあ?」 「タヌキもアライグマも大して変わらん」 「全然、違うわァ!!」 クルセイダーの繰り出す大刀を、ひらりかいくぐり、リカインはポンタスタンプで敵のヘルメットを叩き割る。 「〜〜〜〜ッッ!!」 声にならない悲鳴を上げて、敵は膝から崩れ落ちた。 それを見ていたツァンダーは思わず感心してしまった。 「なんてスピードとパワーだ。見た目に反して凄まじく出来るな……あのア」 「それ以上言ったらコロス!」 彼女的にはこの姿、超絶不本意のようだ。 「そうよ、そうなのよ。元はと言えば、クルセイダーが悪いのよ。あんた達さえ行なければ、こんな身の毛もよだつ姿にならなくてすんだのに!」 「訳のわからぬ事を……!」 クルセイダーの長剣が、リカインに迫った。 「させません!」 中原 鞆絵(なかはら・ともえ)は、斬撃からリカインを守った。 あと50年若ければと誰もが惜しむ、生涯現役・魔法老女だ。 「あなた方の相手はあたしがしてあげましょう」 刀を下段に構え、防御に入った鞆絵は、打ち込まれる斬撃を次々に捌いた。 「”守りだけ”を考えてれば、このぐらいそう難しい事じゃありません」 「この姿のうらみ&つらみ!」 「!?」 リカインのぷにぷにの掌打が、敵を吹き飛ばした。 鞆絵が攻撃を防ぎ、リカインが攻撃すると言う戦術だ。とは言えそれは、鞆絵が意識的に作った状況だったりする。 (……ま、あたしが防御しかしなければ、リカさんもこの場から離れられないでしょう。目の届かないところに行くと、どんな無茶をするかわかりませんからね。こうでもして、ここに留めておきませんと) 「スーパーロボット理論研究会は部員を募集してるんだぜー!」 童子 華花(どうじ・はな)は部員募集のプラカードを掲げて、緊張感の”き”の字もなく、クルセイダーの前に現れた。 無邪気すぎるにもほどがある彼女は、恐るべき暗殺者ともお友達になれると思っていた。そして、最近入った同好会への勧誘を始めたのだ。 「オラと一緒にいい汗流して、全国大会を目指そうぜー! スパロボ研に全国大会ってあんのか知らないけど!」 「我等、神に祝福されし理想の尖兵。我等が理想のため、粛々と目の前の事物を排除する」 しかし、クルセイダーは案の定、襲いかかってきた。 目にも止まらぬ速さで放たれた拳が、彼女の顔面を殴り飛ばす。 「ぎゃあ!!」 鼻血を流して涙目で、華花は顔を押さえた。 「な、何するんだよぉ……」 「眠れ、永遠に」 クルセイダーは戦斧に形状変化させたアシュケロンを振りかぶった。 その時だ。 「おおおおおおおおおおーーっ!!」 雄叫びを上げながら、全速力で走ったリカインは、怒濤の回し蹴りを、側頭部に叩き込んだ。 「がは!?」 激しく身体を回転させ、クルセイダーは転がった。 「子どもを泣かすような奴が未来や理想を語るんじゃないわよ!」 「……理想の敵は排除する」 敵は頭を押さえながら、立ち上がった。 「だったら……、来なさい”キャロリーヌ”!」 「む……?」 次の瞬間、頭上を大きな影が覆った。 禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)の駆るキャロリーヌと言う名の謎の巨大生物だった。 上半身だけ、魔法少女コスチュームを着た謎な風体。 そして生物の首には『魔法巨大性物トゥインクル★ロリロリ推参』と書かれてあるが、この生物の名はキャロリーヌなのだろうか、トゥインクル★ロリロリなのか、まずその辺が大いに筆者を悩ませる。謎。 「キャロ〜〜〜〜!!」 キャロリーヌはクルセイダーを見下ろすと、”三下はお呼びじゃねぇんだよゴラァ”とでも言わんばかりに睨み付け、ビームアイを発射した。 光線は地面を抉りながら薙ぎ払い、クルセイダーを蹂躙する。 死の恐怖を乗り越えた彼らだが、流石にイコンクラスの敵に立ち向かうほどの蛮勇は見せなかった。卓越した戦闘者である彼らは、それはもはや勇敢さとはほど遠い愚鈍の域である事を知っている。 「……かくなる上は」 突如、クルセイダーの身体が、倍の大きさに膨れ上がった。 「うおおおおぉぉぉぉ……!!」 骨を軋ませ、筋肉が瞬く間に発達し、別の生き物に変貌を遂げる。 クルセイダーの……いやグランツ教の開発した超兵器、異形の天使の姿を持つ守護者”ガーディアン”! 「キャロ〜〜〜〜ン♪」 キャロリーヌはようやく遊べそうな相手が出てきたと、甘えるような声で鳴いた。 ツァールの長き触腕を喚び寄せ、”触手で一緒に果・て・よ?”と迫るが、ガーディアンは触手を収束熱線砲”メギドファイア”で瞬時に蒸発させた。 「キャロ……!?」 「邪教の獣に制裁を下さん!」 キャロリーヌの首根っこを掴み、地面に激しく叩き付けた。 その一撃で、キャロリーヌは戦闘不能に陥った。 『我等の敵に鉄槌を! 我等は神の祝福を受けし理想の守護者なり!』