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リアクション
第十八章:ならず者たち
その頃。
「まさか、真王寺先生が、変な決闘に応じるとは思っていませんでした」
特命教師、真王寺写楽斎の部下の一人、布施(ふせ:♂)は、戸惑いを隠せなかった。
防災訓練は、計画通りに行われている。
混乱を引き起こすための下準備も整っているし、武器を売ったテロリストたちも続々と集まってきていて、仕掛け時を待っていた。彼らとの関わりを悟られることのないように直接指示することはない。実践慣れした凶悪犯たちには、自主的に動いてもらうつもりだ。彼らには期待している。これまでの実戦経験と謂れのない憎しみと怒りでもって、さほど苦もなく致命的大混乱を引き起こすことができるだろう。
機晶エネルギーを使わないという前提の訓練であることを事前通達してあったために、周辺地域では生活環境が最小限にしか機能しない上、イコンの使用も控えることになっている。行動も制限されていて、特命教師たちの思惑通りに打撃を与えることができる可能性は高かった。
しかし、肝心のリーダーがいないのだ。写楽斎は、避難訓練の仕切りを布施に丸投げして行ってしまった。そんなに決闘が重要なのだろうか。
「ふふふ。俺が組織でどれだけ有用な人物か、実力を示すときがきたようだ」
まあいい、と布施はすぐに気を取り直し、腕を組んで含み笑いをした。これは千載一遇のチャンスだ。写楽斎の忠実な部下として支えてきた彼の真の実力を発揮出来る時が来たのだ。
布施が待機しているのは、写楽斎の秘密研究室である。巨大なコンピューターが、ツァンダ一帯のネットワークを監視している。多くのモニターには防災訓練の模様が映し出されており、様々な角度から分析することが出来るようになっていた。操っているのは、写楽斎が連れてきた優秀な作業員たちだ。それぞれが自分のなすべき作業を的確にこなしており、新たな指令が下るか計画変更になるまでは支障なく運営できそうだ。
布施は、張り切って写楽斎に定時連絡を入れる。
「……俺に任せておいてくれれば、全てがうまくいくでしょう。真王寺先生は大船に乗ったつもりで決闘に専念していてください」
「……そうしようと考えていたのですが、気になって様子を見に来ました」
写楽斎は、ケータイを耳に当てたまま研究室へ入ってきた。すぐ傍まで来ていたらしい。布施はいささか脱力した。
「決闘はボクがいなくても、滞りなく進行しています。順調に作業を続けることが出来れば、負けることはありません。なので、個人的に小休止も兼ねて戻ってきたのです」
写楽斎は、研究室の定位置の椅子に腰掛けるとくつろいだ表情で言った。
「来客もあるようですしね。……どうぞ」
「お忙しいところ、わざわざ時間を取って頂けるとは、恐縮です」
全く恐縮していない表情で研究室に入ってきたのは、オリュンポスの主要メンバーの一人である天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)だった。
彼は、オリュンポスのオーナーミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)との密談の後、必要な準備を終えてここに来たのだ。本来の指導者であるドクター・ハデス(どくたー・はです)がいない間にオリュンポスを乗っ取るために、特命教師たちが用意した環境を全て使うつもりだった。
「ようこそ、我が研究室へ。ドクター・ハデス氏には、失礼な物言いをしてしまったかもしれません。お詫びを申し上げますよ」
写楽斎は、慇懃無礼な口調で十六凪を出迎えた。
「お気になさらず。もはや彼の意思など考慮するに値しないということです」
十六凪は、今やオリュンポスの指揮権は自分にあることを示唆した。
勧められた椅子にゆったりと腰掛けた彼は、研究室を見渡す。
なるほど、設備が整っておりなかなかいい。支配者の変わった新生オリュンポスにも使えそうな施設だ。『バビロン』も利用して世界征服をしてやろう。十六凪は、内心ほくそえむ。もちろん、そんな様子はおくびにも出さないが。
「話は伺っておりますよ。ゲームのような世界征服ですか。洒落っけが効いていて気に入りました。真王寺写楽斎さん、どうやらあなたと僕は気が合うようですね。……いかがですか、共に世界征服を目指すというのは?」
「断られたのかと思っていましたが?」
招き入れておいて、写楽斎はしゃあしゃあと言った。
「組織の意思は別のところに有る、ということです。我々のオーナーも計画を楽しみにしておりますよ」
十六凪は、すでにオリュンポス乗っ取りの準備を始めているということを、再び強調した。
写楽斎は用心深い。組織の責任者以外には重要な話をしないことは、十六凪にも理解できている。なので、存在をアピールする必要があった。
「今まではハデス君を隠れ蓑に、オリュンポスを影から操ってきたのですが、そろそろ本気で世界征服に出たいと思っていたところなのですよ。僕がオリュンポスを乗っ取って、ね」
実際に、十六凪は『秘密結社・真オリュンポス』という組織も密かに作っている。ただの組織の使者というわけではないのだ。
「願っても無い申し出ですね」
写楽斎は、興味深そうに頷いた。
「実のところ、我々の企業の難点は、せっかく苦労して開発製造した物を使ってくれる人々が少ない、ということなのです。『バビロン』は、誠心誠意顧客のニーズに合わせて研究に携わり、お客様満足度No.1企業を目指していますが、魅力を伝える機会がなかなかありません。まさか、お茶の間にTVのCMを流すわけにもいきますまい。なので、今回の訓練を企画したのですよ」
彼曰く、テロリストたちに『バビロン』製の武器を使用させることによって、その威力や有効性を広く知らしめ、需要を喚起しようとしているとのことだった。つまりは、訓練は単なる名目で主役は武器のデモストレーションなのだ。
「それは素晴らしい。熱心な企業なのですね」
十六凪は感服した様子で同意した。
「僕としても、写楽斎さんたちのような軍事企業がバックについてくれると、オリュンポスの乗っ取りと世界征服を実行に移す上で、資金や組織力の面で非常に助かるのです。逆に僕からは契約者としての能力や、これまでハデス君を利用して集めてきた各学校の情報、契約者達の戦闘データなどを提供できます。
どうです? お互いにメリットのある契約だと思いますが」
「悪くない条件ですな。実行に際して武器がお入用でしたら、いくらでも用立てできます。ただ、一つお願いがありまして……」
写楽斎は、乗り気ながらも遠慮がちに提案してくる。
「なんでしょうか?」
「『バビロン』の提供ということで、使用する機器類には企業ロゴをつけさせていただきたいのです。自画自賛ながら、なかなかにカッコいいロゴマークですので、オリュンポスの名に傷はつけないと思いますよ」
「結構ですよ」
十六凪は、面白そうな笑みを浮かべながら答えた。彼らは、なかなかにジョークのセンスにも富んでいる。組んで退屈することは無いだろう。
「では、契約ということでよろしいでしょうか?」
彼は、普段どおりのクールな表情に戻って握手を求めた。
「名高い組織とお近づきになれて、光栄です」
写楽斎は、十六凪の手を握り返した。
しばし、そうしたまま……。二人は、それぞれに腹黒い胸の内は隠したまま、表向きは友好的に手を結ぶことになった。
「では、さっそくですが」
十六凪は、自分たちが『バビロン』にとってどれほど有用であるかをアピールしようと動き始めた。企業がオリュンポスを頼らざるを得ないほどに懐に入り込むことが出来れば、自由に操ることも出来る。
「“Xルートサーバー”への攻撃は僕たちが引き継ぎます。アクセス権と機器使用の許可をいただけますね?」
十六凪は、決定事項のように言った。拒否されるとは考えていないし、反対されても押し切るつもりだった。
「施設はご自由にお使いください」
写楽斎は、あっさりと受け入れた。コンピューター以外にも、彼が連れてきているスタッフたちも協力してくれるようだった。
「快く任せていただいてありがとうございます。僕たちが力を貸すからには、決して損はさせませんよ」
「それは頼もしい」
十六凪と写楽斎は、ちらりと視線を交し合った。
一体、どこの世の中に悪の秘密結社を無条件で信用する人がいるのだろうか。写楽斎にも何か目論見があるのは明白だ。それとも、よほど自信があるのか?
早くも悪同士の駆け引きは始まっている。
「仲間を紹介しておきましょう」
十六凪は、パートナーの一人であるデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)を研究室へ招き入れた。
「彼女がサーバールームを守ってくれます。誰も通しませんので安心してください」
「りょーかいっ! なんだかわかんないけど、コンピューターを守ればいいんだね! デメテールにお任せだよっ」
ドーナツの入った小箱を大切そうに抱えながら、デメテールは返事した。十六凪にドーナツを10個ももらって買収されたからには全力で任務を遂行するつもりだ。
「おやおや、これは可愛らしいお嬢さんですね」
写楽斎は、デメテールに気さくに声をかけた。
「何でも買ってあげますので、欲しい食べ物があったら言ってください」
「うん、約束だよっ」
「デメテールさん専用のパシリをつけてあげましょう。彼女になんでも言いつけてください。ドーナツの追加も買って来させていいですよ」
写楽斎は、女性研究員の一人を呼んだ。
「デメテール、一人で大丈夫だよ?」
「もちろん、あなたの能力は素晴らしいと確信しています。しかし、何があるかわかりません。暇な時にイジって遊んでやってもいいですね」
「そうなの? いらないんだけどなぁ」
「……」
十六凪は視線だけでデメテールに合図をした。
なるほど、手を組むことは了解したが、彼らを自由に泳がせておくつもりはないらしい。写楽斎は彼女を一人にさせておくと何をするか分からないと警戒しているのが分かった。
ここでモメても仕方が無い。十六凪もデメテールもこんなところで変な小細工するつもりはないのだが、相手に深い疑問を与えてしまってもいい事は無い。助手などいざとなればどうとでもなるし、安心させるために受け入れてやろう。
「まあ、いいか。一緒に頑張ろうね」
デメテールは、十六凪の視線と意図に気づいて女性研究員に挨拶した。
「よろしくね」
「こちらこそよろしく」
「じゃあ、行こっか」
デメテールは、手を振りながらサーバールームへと去って行った。その後ろを、女性研究員がついていく。彼女らの活躍は後ほど見てみよう。
「さてそれでは、我々の特別ショーをご覧に入れよう」
近くに控えていた、助手の布施が室内の大画面スクリーンを指した。
『バビロン』製品のデモストレーションを見せてくれるようだ。その威力を気に入ったら買ってもらおうという営業努力だった。
「拝見させていただきましょう」
十六凪はそつなく対応することにした。とりあえず市販の武装類など必要なかったが、この布施という特命教師にも機嫌よく計画を進行してもらうことにした。警戒心を解き、企業の内情なども聞きだせるかもしれない。
いや、むしろ付け込むとしたら、この助手の方に隙がある、と十六凪は判断していた。
写楽斎は農場での決闘にも参加していて、今後席を外す可能性が高い。彼がいない間に布施を篭絡して研究室を手中に収める。あるいは、布施を支援して担ぎ上げ、写楽斎を追い出してもいい。無能な神輿は担ぎやすのだ。
「ふふ」
いずれは、目の前の武器屋たちも含めて、兵器購入を検討しているような悪党どもなどまとめて一掃してやるつもりだ。オリュンポスの目指す世界征服とはそういうこと。
「さあ、始まったぞ。その威力と効果をご覧になって、よろしければ購入に結び付けていただきたい。きっと満足していただけるでしょう」
布施は、蠢くテロリストたちが映し出されたモニターを見ながら得意げに使用武器を紹介してくれた。いよいよ、闇夜に乗じて攻撃が開始される。たくさん死んでくれるといいなー、とその表情は語っていた。
「楽しみですね」
十六凪は、端末から工作員へ指示のメールを発信しておいた。
防災訓練の現場には、手練の契約者たちがいるだろう。深刻な被害は、彼らに防いでもらおう。訓練に同調しながら隙を伺い、付近一帯を一気に制圧するのだ。武器商人たちも、役に立つところでは使い倒してやればいい。
「では、世界征服を始めましょうか」
「ええ、ゲームのように楽しく世界をいただきましょう」
写楽斎もほくそ笑んだ。彼の場合は、油断の無い目つきで十六凪たちの動向を注目しており、見られている間は下手な行動で刺激しない方がいいだろう。
お互いに、信頼などしていない。悪党同士、いかに相手を出し抜き自分たちだけが成果を手にすることができるのか。
彼らが見守るモニターの向こうで、凶悪な武装が火を噴いた。
「くくく……」
悪のパーティーが幕を開ける。
○
だが、彼らはまだ気づいていなかった。
彼らとはまた異質の悪が蠢いていることに。
何者も寄せ付けない孤高のフリー・テロリスト。彼女は……。
「今日はいい日になりそうでありますな」
その日、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は人畜無害の笑顔を浮かべて分校近くの街へとやってきていた。決闘や防災訓練が行われているというのでちょっと挨拶していこうと思い立ったのだ。
街はにわかにざわめいている。住人たちもイベントに参加するらしいので、皆で盛り上がっているのだろう。
ちょうど空も晴れ上がり絶好のお祭り日和。いや、血祭り日和だ。返り血を浴びた彼女の衣装がそれを物語っていた。
「ところによって血の雨が降るでしょう。爆風には十分注意してください」
吹雪の天気予報は当たっていた。
先ほど、あまりにもいい天気だったのでついうっかり、近くにいたならず者たちを襲撃してしまった。どうやらテロを企てていた一団だったようだ。ちょっといい気分だったので奴らの持ち物も全てもらっておいた。質の良い武装類は、奴らには勿体無い。彼女が有効的に活用してこそだ。
「しかし、所詮パラ実でありますな」
さてと、と吹雪は街を見渡した。両手に特性装備の【ミリタリーマチェット】を装備し拳銃まで用意してきたのだが、襲撃意欲を刺激してくれそうな標的があまりいなかった。まあ、自分以外は全て敵なのでまもなく全員に恐怖を味わってもらうことになるのだが、彼女は内心いささかがっかりしていた。主に爆発してもらう標的が少ないのだ。
リア充は、いることはいる。ヤンキーとギャルのカップルなら大勢いる。バカとビッチの恋人同士ならうようよしている。キモ男とブスのデートならあちらこちらで見受けられる。だが、そんな連中を好んで襲撃してどうするというのだ。
吹雪を突き動かしている、リア充爆発しろ! の怨念は妬みが原動力になっているのはいうまでも無い。品質の悪いカップルには嫉妬心すら沸いてこない。高いモチベーションを保つのが難しかった。
仕方が無い。ゴミどもを焼却処分するのも吹雪に課せられた使命なのだ。
とりあえず機晶エネルギーは使用禁止らしいので、プラスチック爆弾『C4』を使用する。あくまで訓練の一環として参加するのだ。
「はい、ちょっとごめんなさいよ」
バイクでタンデムしているカップルが信号待ちをしていたので、すれ違いざまに二人に向かって発砲した。カップルは驚いて転げ落る。作業効率を上げるために、乗り物を借りて行くことにしよう。吹雪は、バイクにまたがるとすぐに発進させた。追いかけてくる持ち主にレンタル料として、爆弾をばら撒いておく。これは機晶爆弾を偽装してあるのだが、ぱっと見ではわからないし、どうせ爆発して木っ端微塵になるのだ。誰も指摘してくることは無い。いつも通りに大量に持ってきてあるので惜しげなく振舞った。
ドドドド〜〜ン! と背後で爆発が起こり周囲の建物ごとカップルを吹き飛ばしていた。
「ツーリングは気持ちがいいでありますな」
吹雪は爽快な風を感じながら、辺りに爆弾を投げ始めた。カップルを建物ごと爆破していると、あっという間に街中が大混乱に陥る。街の被害は他のテロリストの仕業にするので、何がどうなろうと気にすることなく手当たりしだいに破壊していく。
「ん、なんだあれは?」
その時、そのイケメン男はその場にいた。
彼の名前も存在も、ほとんどの人が気に留めることはない。だが、彼はあの蒼空学園の“Xルートサーバー”混乱事件のカギを握る男だった。
内部からの侵入を容易にするために、サーバーの女子管理スタッフをたらしこんで手伝わせた。役目を終えた女子スタッフはポイ捨てして、彼は今任務達成の報酬を受け取るために分校へと向かっているところだった。蒼空学園の関係者は血眼になって彼を探していることだろう。無駄なことだ。誰もパラ実出身の彼を捕まえることはできない。大荒野は、あそこに住んでいる者しかわからない場所もあり、巧妙に隠れてしまえば、蒼学生たちごときがたどり着けることはないのだ。
「まあ、楽しませてもらったし女には貢がせたし、悪くない仕事だったかな」
しばらく遊んで暮らせそうだ。彼はご機嫌で街を散策する。生粋のナンパ師である彼は、いい女がいたらついでに引っ掛けていこうと考えていたところだった。
ドガ〜ン!
そんな彼は、何が起こったかわからないまま、吹雪のまき散らした爆弾にまともに命中し木端微塵になっていた。一瞬で灰になったので、誰にも気づかれることなくこの世から姿を消したのであった。
「なんだか今、無意識に悪を滅ぼした気がするでありますな」
蒼学での事情を知らない吹雪も全くの無関心で、そのまま通り過ぎていく。それは、それだけのことだった。引き続き活動を続ける。
出来れば他のテロリストたちをリア充ごと吹き飛ばしたいので、彼女は進路を変え、ならず者たちの頻出ポイントへと向かうことにした。
今はまだ準備運動。他のテロリストたちを大勢発見できた時からが彼女の活動が本格的に始まるのだ。
さて……。
○
同じころ……。
「また敵がきたよー」
ハデスのパートナーデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)は、サーバールームを奪還しようとしに来る侵入者と戦いを繰り広げていた。
ドーナツ十個で十六凪にここを守るように言いつけられてから、結構時間はたっている。どういうことか、他校生の契約者をはじめとして、パラ実のモヒカンまでが集団で攻撃を仕掛けて来ていた。
「なんだかなー。どーなつ、あと十個もらっておけばよかったな」
これはちょっとしんどくないか?
デメテールはサーバールームに【隠形の術】で潜み【殺気看破】で侵入者の気配を探り当てていた。
「……」
【疾風迅雷】による【ブラインドナイブス】で死角から【先制攻撃】で侵入者を撃退する。このコンボで大抵倒せるはずだったが、いかんせん数が多い。
サーバーは相当重要であることは確かだった。誰が狙っているのだろうか……?
「十六凪からは、時間稼ぎでいいって言われたからねー」
だが、彼女は無理せず撤退することを決めた。
「じゃね」
デメテールは付き添いだった女性研究員に別れを告げ、【壁抜け】であっさりと姿を消す。
「え?」
取り残されて困惑する、女子研究員。
「え、え!?」
更なる侵入者が近づいていた。
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