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【2020授業風景】理科の授業は白い子ギツネ

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【2020授業風景】理科の授業は白い子ギツネ

リアクション

1.

「肉食に近い雑食だから、柔らかい果物なんかあげると良いんじゃないかな」
「果物、ですか」
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は頷くと、八森博士へ頭を下げた。
「ありがとうございます」
 そしてすぐに子ギツネを探しに向かう。
 次に八森博士の元に来たのは、同じく百合園の生徒であるシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)だ。
「八森博士、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何か質問かい?」
 聞き返すと、シリウスは言った。
「いや、キツネを捕まえた後はどうするのか聞きたくて」
 ああ、と彼女の言葉を飲み込む八森博士。
「捕まえたら僕がちゃんと――」
「オレら、百合園生で保護するってのは、駄目かな?」
「……え?」

 ヴァイシャリーの路地裏を探している椿薫(つばき・かおる)は、物陰に白い塊がうずくまっているのを見つけた。
 慎重に歩み寄っていけば、小さな子ギツネがこちらの気配を察して振り返る。
 薫がはっとした直後、路地裏をものすごい風が吹きあげた。どうにかその場に踏みとどまりながら、薫は言う。
「拙者は敵じゃないでござる! 仲良くなりたいだけで――っ」
 子ギツネはしばらく彼の方を見つめていたが、ぷいと顔を逸らし、風も止む。
「わ、分かってくれたでござるか?」
 表情を明るくする薫に構わず、子ギツネはとことこと歩きだす。薫はすぐにその後を追った。

 百合園の生徒ではなかったが、ルーナ・フィリクス(るーな・ふぃりくす)は街に子ギツネが迷い込んでいるのを耳にし、街の人たちの為にも、子ギツネを探し出すことにした。
 あちこち歩き回っては、それらしき小さな影を探す。
 空から探していたセリア・リンクス(せりあ・りんくす)は、そんなパートナーの姿を見て呆れてしまった。ルーナは、先ほどから同じところをぐるぐると回っていた。だがきっと、彼女はそのことに気付かずにいるのだろう。ルーナは極度の方向音痴だ。
「迷子にならないだけ、マシかな……?」
 と、呟くセリア。
「子ギツネさん、どこにいらっしゃいますかー?」
 同じ角を八回曲がったところで、ルーナは足を止めた。先ほどから同じ景色ばかりが続いて見える……きっと、こんな街だから子ギツネさんも迷い込んでしまったのね。
「待つですぅ、キツネさーん!」
 背後からそんな声がしたかと思うと、咲夜由宇(さくや・ゆう)が白い動物を追いかけていくのが見えた。由宇はルーナの横を通り過ぎ、はばたき広場の方へと向かう。
「……あ!」
 ルーナもすぐに彼女の後を追いかけた。
 広場にはまだ何名かの生徒が残っており、八森博士の姿もある。
 子ギツネは一直線に彼の方へ向かうと、強風を巻き起こしながら地を蹴った。そして八森博士の顔面を踏み台にし、逃げ続ける。
「あぁ、キツネさ……きゃあっ!」
 どんっとぶつかって由宇は地面へ尻持ちをついてしまう。子ギツネしか見えていなかった由宇が八森博士に激突したのだ。
「大丈夫ですか?」
 と、追いついたルーナが由宇へ手を差し伸べる。
「あ、ありがとうですぅ」
 にこっと笑みを浮かべ、手を取る由宇。