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リアクション
第三試合
天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)
アルマ・オルソン(あるま・おるそん)
ネルソー・ランバード(ねるそー・らんばーど)
順堂 権兵(じゅんどう・こんぺい)
+α
対
影野 陽太(かげの・ようた)
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)
ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
合身戦車 ローランダー(がっしんせんしゃ・ろーらんだー)
海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)
◇
「天御柱側に連絡。今から第三試合を始めるが、こちらに人数の不足が出ている。増援が来る予定だが、まだのようだ。だからそれまでは4機で……」
「翔。俺が出てもいいか?」
「聡??」
「まあ、その、なんか体がうずうずしてきちまってよ……サクラ! おーい!」
言いながらも、聡の目は、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)一行に釘付けだった。何か彼の本能を刺激するものがあったらしい。
「……まあ、問題なかろう」
翔がそう呟いたときには、既に聡はパートナーを探しにどこかへ消えた後だった。
◇
開始と同時に動いたのは影野 陽太(かげの・ようた)。
といっても戦闘ではなく、周囲のビルを破壊し、そのデータを元にイコンの能力を分析しようとしているようだ。
「すごい……全く現実と一緒と見ていいですね。どんな物理演算エンジン積んでるんでしょう」
ひとしきり銃型HCのキーを叩くと、立ち上がる。
「これは良いデータが取れそうです」
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、ビルの窓ガラスに映る自らの姿に、嫌が応にもテンションが上がる。
「よおおおし! 蒼空の騎士パラミティール・ネクサー、10メートルで参上!」
……という喜びもつかの間、彼はいきなりビームの嵐にさらされた。
「うおおおおっ!?」
遙か後方のコームラント陣、順堂 権兵(じゅんどう・こんぺい)の指示である。
「そこだけやたら温度が高いので、不意打ちのつもりでしたが……案外惜しかったですね」
「エヴァルト!」
パートナーのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が駆け寄ってくる。
全身に漂うメカメカしさ。むしろ今のサイズの方が違和感がない。
「大丈夫だ。まず後衛を何とかしないとな」
「了解! ボクにまかしといて!」
そこへ、空中からビームライフルが次々と発射される。
天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)とネルソー・ランバード(ねるそー・らんばーど)の駆るイーグリット2機だった。
「固まってるよ! 撃て撃て! ……あの子、パーツ取りさせてくれないかな」
物騒なことを交えながら、沙耶の声がマイクに響く。
「ロートラウト、作戦変更だ!」
「うんっ!」
ビルの壁を蹴り伝い、空中に踊り出るエヴァルト。
「おおりゃぁっ!」
ドラゴンアーツを乗せたキックが、ホバーしていた沙耶機を襲う。
「きゃあっ!」
間一髪、上に逃げる沙耶機。
「隙あり!」
今度はネルソーのサーベルが、体勢を崩したエヴァルトに斬りかかる。
そこへ、加速ブースターで飛んで来たロートラウトが遠当てを放つ。
「させないよっ!」
直撃をくらい、落下してビルに突っ込むネルソー機。
「くぅっ、やるじゃねえか……そらよっ!」
ネルソーは突っ込んだビルの中の、巨大な瓦礫を拾い上げた。
そのままブーストし、着地したロートラウトに投げつける。
舞い上がる埃と煙。
「ひぇえ! ぺっぺっ」
沙耶が叫ぶ。
「今だっ、順堂!」
「了解!」
順堂機から放たれたビームキャノンが、ロートラウトを直撃した――が。
普通なら一撃必殺の威力だが、単独搭乗のため、キャノンの出力は通常の3割ほどである。それでもダメージは低くはないが。
「いてててて……この装甲じゃなかったらヤバかったよ……」
「思ってたよりやるじゃないか。よし、こっからは本気で行くぜ!」
エヴァルトが再び地面を蹴る。
遅れて前線に到着したが、ロートラウトのキャノン被弾に見とれていた影野が我に帰る。
「すみません、初めて見る光景ばかりなもので……ええと、イーグリットが2機、コームラントが2機……ん、足りない?」
「おお、シミュレータの空も……青いですなぁ」
コームラント、アルマ・オルソン(あるま・おるそん)の真横に突如現れたのは海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)。
彼はビルの陰に隠れつつ、ゆったり歩いてここまできたので、逆に誰にも気付かれなかった。――それも計算の内だったのだが。
「うそっ!?」
アルマが振り向きざまにキャノンを放つも、こちらも単身搭乗のため、ビームに巻き込むことができない。
「隙あり!」
海豹仮面の投げた鉄骨が、アルマ機のブースターを直撃。転んだところで、脚に斬撃を受ける。キャノンの再装填は――とても間に合わなかった。
◆
「アルマ・オルソン、離脱」
◆
エヴァルトは、新たに加わった影野と共に、天王寺とネルソーを相手にしていた。近接でまともにぶつかればやられる、と踏んだイーグリット2機は、空中からのライフルとサーベルの一撃離脱戦法に切り替え、戦闘は膠着しつつあった。
しかし、その均衡は意外なところから破られる。
「そこのロボット!! 俺と戦ってくれ!!」
「……聡さん、嬉しそう」
追加のコームラントが到着したのだ。パイロットは山葉 聡とサクラ・アーヴィング。
先の実戦で「黒いイコン」を相手に戦った2人だ。
色めき立つエヴァルト。
「おおっ、お前らの噂は聞いてるぜ! ……俺はロボットじゃないが」
そして何の違和感もなく戦闘に入る2人。言葉は既に、いや最初から必要ないのか。
コームラントも、2人乗りであれば音速で飛行することができる。
単独で乗るイーグリットよりも、倍近く速い。そして聡の射撃は群を抜いて正確だった。
ドラゴンアーツとパワードアーマーでなんとかしのぐも、徐々に押されるエヴァルト。
「ランダー、ランダー! どこ!」
「ここであります!」
戦場を所狭しと走り回り、敵の攪乱……にはあまり成功していなかった合身戦車 ローランダー(がっしんせんしゃ・ろーらんだー)が、ロートラウトの元へ駆け寄る。
「合体行くよ!」
「了解であります! 機晶石エンジン、連結準備! 合体可能であります!」
――身長15メートル。各部装甲強化、ロケットパンチを装備する戦闘ロボ。
ロボット・オブ・ロポットと呼ぶにふさわしい偉容。
これがロートラウトの真の姿、「フォルセティオン」である。
その姿は、その場にいた全員の視線をかっさらった。
「なんと神々しい」
近くを歩いていた海豹仮面が、フォルセティオンに向って駆け寄る。
「ロートラウト、いや、フォルセティオン。こんな所でなんですが、海豹村の公式勇者ロボになる気はないですかな」
「こ、公式勇者ロボ??」
「そうです。大っっっ人気まちがいありませんな」
「そ、そう?」
驚きながらも、ロートラウトはまんざらでもない様子だ。
「うーん……その、エヴァルトとも相談してみないと……って、あああ!!」
沙耶のイーグリットが全速力で突っ込んでくる。
「中! 見せてーっ!」
どこからどう見ても的と化していたことに、ロートラウトは気付いていなかった。
沙耶とネルソーのライフル、さらに順堂のキャノン。さらにエヴァルトの横から聡のキャノンも飛来し、フォルセティオンの周囲は巨大な火柱のようになった。海豹仮面はもろに巻き添えになり離脱、フォルセティオンも瀕死に。
「ううう……」
聡が呟く。
「お前の身内……すごいな、色々と」
「ああ、最高のパートナーさ」
そこで時間切れとなった。
◇
「第三試合――4対3、天御柱の勝利」
◇
天御柱の生徒がコクピットから降りると、シミュレータルーム一面に「来たれイコンパイロット! 〜あなたとあゆむ あざらしのあす。〜」と書かれたポスターが貼られていた。そして海豹村のたすきを着けた海豹仮面が、既に試合を終えた生徒にもあざらしチラシやあざらしパンフを配っている。意外にもサクラが興味を示し、海豹仮面に訪ねる。
「あなたの血、あざらしの味がするのかしら――」
さすがの海豹仮面も、これには首を振るしかなかった。
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