リアクション
◇ ――御神楽音楽堂。 「皆、ありがとう! そして、お疲れ様!」 マイクを手にステージで瑛菜が手を広げると、音楽堂は割れんばかりの拍手で溢れ返った。 そして、待望のライブが幕を開ける。 静寂の中、エリシュカがスティックを合わせてカウントを取る。 走り出したスネアの音と共にグロリアーナがベースの弦を指で弾き出し、ローザマリアがギターを鳴らす。 そこに足でリズムを取りながらキーボードを演奏する菊のメロディが混ざった瞬間、 「みんな、私の歌を聴きなさい!」 と、ツインテールを揺らして美羽が歌い出す。 そんな美羽に負けじと、瑛菜も笑顔でステージ上を駆け回り、声を合わせながら観客を煽る。 「約束だからな、今日は付き合ってもらうぜ!」 大音量で曲が流れる客席で、トライブが隣に立っているシズルへ笑いかける。 手伝いに来る報酬として、シズルにデートを要求していたのだ。 「約束はちゃんと守るわよ。今日は本当にありがとう。思いっきり楽しみましょう!」 曲の音量に負けないようにトライブの耳元で礼を言ってから、シズルは笑顔でトライブの手を取って持ち上げた。 ユベールは、ステージで笑顔で歌う瑛菜達を見ながらも、まだ頬を膨らませていた。 (デートしに来たら戦う事になるし、戦ってる最中は鴉の剣が当たりそうになるし、 それなのに鴉は謝りもしないし……ああっ、もう!) 今日一日の鬱憤を頭の中で駆け巡らせて、もうこれ以上は無いんじゃないかというぐらいにユベールが頬を膨らませている。 (何か不機嫌だな……とりあえず手でも繋いでみるか) 原因はわからないが何となく、と鴉が唐突にユベールの手を握る。 「なっ……ちょ、何!? こ、こんなんじゃ誤魔化されないんだからねっ!」 耳まで赤くして顔を背けるユベールを不思議そうに見て鴉は瑛菜達に視線を戻した。 「皆さん、ぜひ海豹村へお越し下さい……んー。 ……いや、違うなぁ。海豹村に来てね? ……何か違う」 海豹仮面は歌を聴く事もそこそこに、このライブを利用して自らの海豹村を宣伝しようと、勧誘方法を考え込んでいる。 ◇ 楽しい時間は過ぎるのが早く、夕日が沈もうとしている中で瑛菜達のライブは終わりを迎えようとしていた。 「あ、あのっ! ……最後に、一曲だけでも、環菜の為に何か演奏してもらえませんか?」 客席の一番前に陽太が姿を現して、丁寧に手を上げながら提案する。 「……わかった。じゃあ、最後の曲は環菜に捧げるよ」 そう言って、環菜がステージの上にいるメンバーを見ると、全員が頷いた。 曲が始まると、陽太は首から提げたロケットを見つめながらそれに聞き入る。 やがて、音色の余韻を残しながら、最後の曲が終わる。 曲が終わった静けさの中、陽太が静かに口を開いた。 「この御神楽音楽堂自体が……環菜の埋蔵金そのものなのかもしれないですね」 ――その言葉に、誰もが夕暮れの中、黄金色に染まる音楽堂を見上げていた。 担当マスターより▼担当マスター 歌留多 ▼マスターコメント
はじめまして、歌留多と申します。 |
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