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リアクション
1.結成水飴捜索隊!
蒼空学園のカフェテリア。
十人がけの大きなテーブル席で学生たちがくつろいでいる。
「最近、キャンディーの原材料が入荷しなくなって〜。このままでは、キャンディーの在庫もなくなりそうなんです〜」
カフェテラス『宿り木に果実』の看板娘ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)が眉を寄せる。テーブルに置かれたカップから立ち上るフレーバーティーの甘い香りも、彼女の不安を和らげることはできないようだ。
ミリアは、宿り木に果実の看板商品の一つであるキャンディーを蒼空学園でも販売してほしいという学園長・山葉 涼司(やまは・りょうじ)からの依頼を受け何度か打ち合わせのために蒼空学園を訪れている。
「キャンディーの材料というと?」
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、ミリアの力になりたい一心で彼女に同行している。そんな涼介だが、お菓子作りに詳しいというわけではない。
「水飴が〜、納品されないんです〜」
ミリアの話を要約すると、ジャタの森の水飴職人ゼーフェルト翁が、最近になって水飴を納品してくれなかったという。
宿り木に果実のキャンディーには、至高の水飴とも呼ばれ珍重されている水飴が欠かせない。このままでは、蒼空学園カフェテリアでの販売どころか、宿り木に果実での販売も難しくなってきそうだ。
「なるほど」
涼介は、大切な人のために何ができるか考えを巡らす。至高の水飴と呼ばれるほどのものなら、代替品を見つけることは容易ではないだろう。
「いったいどうすればいいのでしょうね?」
長原 淳二(ながはら・じゅんじ)は、緑茶の入った湯飲みを前で腕組みをする。カフェテリアが込んでいたためにたまたま相席になったのだが、人が困っていると放っておけない性格の淳二としては何か力になりたいと考えてしまう。
「兄上、簡単ですわ!」
ルル・フィーア(るる・ふぃーあ)が背後から淳二に抱きつく。
「職人さんのところに行って、直接水飴をゆずってもらえばいいのですわ!」
「カフェの中だから、静かめに、ね」
「ちぇー……でも、兄上がそういうなら」
淳二にたしなめられたルルはおとなしく元の席へと戻る。言動からすれば幼子のようなルルであるが、見た目でいえば二十代前半の美女。淳二より四歳ほど年上に見える。しかし、ルルが強化人間であることが影響しているのか、ルルは淳二のことを兄上と呼んで慕っている。
「さて……確かに、直接お願いすれば」
涼介もルルの言葉に頷く。
「あのあたりは蛮族も多いと聞く! 職人の身に何かあったのかもしれないなッ!」
黙って話を聞いていた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)が、椅子を蹴るような勢いで立ち上がる。
「あ、あの健闘くん? 落ち着きましょう?」
天鐘 咲夜(あまがね・さきや)が、正義の心に火がついてしまった勇刃をなだめようとする。
「健闘様、ご立派ですわ」
セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)は、瞳を輝かせて勇刃をみあげる。
咲夜の言葉でほんの少しだけトーンダウンした勇刃が再び勢いを取り戻す。
「ハハハハ!! 全パラミタの甘党よ、待っていろ!」
「あはは、仲がいいね」
彩祢 ひびき(あやね・ひびき)は、ストローを左手でくるくると回転させながら笑みを浮かべる。彼女は、現在痛み止めを服用しているため、ミネラルウォーターとクッキーを頼んでいる。
「実はボクもホワイトデーに宿り木に果実の特製キャンディーを買おうと思ってたんだ。みんなで職人さんを訪ねてみようか」
「ミリアさん、きっと水飴を譲ってもらってきますからね」
涼介は、ニコニコと学生達を見守るミリアの手を取る。
「はい、お早いお帰りをお待ちしておりますわ」
彼女の言葉を聞いた涼介は顔を赤くする。
「あらあら、まぁまぁ」
咲夜がその様子を見て口元に手を当てる。
「くぅ! 一番最初におかえりなさいを言いたいけど、兄上と一緒にいたいから私も職人のところに行きますわ」
ルルが淳二の腕に抱きつく。
「よーし、じゃあ善は急げだ!」
「行こう!」
「行こう」
そういうことになった。
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