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【新入生歓迎】特盛り? 愛の詰まった校外学習

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【新入生歓迎】特盛り? 愛の詰まった校外学習

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 それぞれの場所で材料を入手してきた新入生を眺め、一足先に持参していたお弁当を広げていた黒崎 天音(くろさき・あまね)は、わたげうさぎにパラミタペンギン、さらにはサラマンダーやゴーレムまでと沢山のペットを連れてピクニック気分のようだ。しかし、朝早くから弁当を作ることになってしまったブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は、うたた寝をすることなく誰かが通る度に薬箱を天音から遠い位置にあるか確認する。
「まるで、それは僕が触れてはいけない箱のようだね。薬以外の物でも入っているのかい?」
「……薬が入っているから、遠ざけるのだ」
 また怪我の無さそうな生徒が通り、安堵の息を吐くブルーズの肩にはピンクのナース服の着ぐるみを着たゆるスターのスピカが、お弁当が気になるのか風が吹く度に鼻を動かしていた。
「ふふっ。もしかしてそれは、懐かしい話が原因だったりするのかな」
「新入生に恐ろしい先輩だと思われても困るだろう」
 だってさ、と駆け回るわたげうさぎに声をかけても、野生の人参でも見つけたのか、ある植物の周りを熱心に回っていて同意してくれそうにもない。残念だと肩を竦めようとしたとき、見知った顔がガタガタと震えながら草原を歩いている。
 変熊は変質者と判断されたおかげで、手加減なしの攻撃を一身に受けズタボロだ。1人でいるところを見ると、どうやらイオマンテはふて寝でも決め込んでいるらしい。
「さて、新入生じゃない怪我人が来たみたいだけれど……どうしようか?」
「天音はゆっくりしているといい。我が責任を持って治療しよう」
 腰を上げ変熊を呼ぶブルーズの邪魔をすることなく、天音は出し巻き卵を摘む。どうせなら新入生と話してみたかったかな、と思いつつも、嬉しそうに収穫物を掲げて走り回る様子を見て、彼らに怪我が無くて良かったと安心するのだった。

 そこから少し離れ、調理場となったスペースでは次々に持ち帰られた材料をスピーディに捌く腕に自信のある者が多くをしめていた。その片隅では度会 鈴鹿(わたらい・すずか)が持ち寄った材料で頑張った新入生のデザートになればと蓬餅を作っていたようだ。疲れを癒す甘い物を食べてもらおうと小倉餡を包んだ物と、苦手な人にも食べて貰えるように餡を包まずきな粉をつけるものと。無事に2種類作り終えた鈴鹿は、その仕上がりを確認するために1口つまんでみた。
「どうじゃ鈴鹿、上手く出来たのかえ?」
「ええ、イル様も味見されますか? 一工夫してみましたので、青臭さも抑えられて歯切れを良いですよ」
 数個皿に盛りつけて、背後にいるであろう織部 イル(おりべ・いる)に渡そうとお茶の準備を始める。お湯が沸くまで待っててくださいと、先に休憩スペースで待つようお願いするつもりが、振り返った先にあったのは男性と思しき胸元。
「きな粉の良い香りがすると思ったら、ここだったんだね。確かに君が言う通り、美味しそうだ」
「え、あ……ルドルフさんっ!?」
 ルドルフの影から顔を出したイルは、鈴鹿もパラミタに来てからめまぐるしく成長したので、このようなことにはひっかからないかと思っていたが、先日も知り合いを見抜けなかったこともあり、まだまだ自分がついていないといけないか、と少し嬉しそうな顔をする。
「そろそろ調理場が混沌としてくるんじゃないかと思って立ち寄らせてもらったよ。今のところ問題はないかな?」
「はい、大丈夫です。イル様は薬学に詳しいですし、他にもサポートの方がいらっしゃってますので。……ルドルフさんは、今日もお忙しいですか?」
 まだ静かなヤカンは、お湯が沸くまで時間がかかってしまうだろう。長く引き止めるのも迷惑かと、鈴鹿は遠慮がちに問いかけた。
「そうだね……ここを一回りしたら、ゆっくり出来るとは思う。その頃にはお湯も沸いているかな?」
「そうじゃの。そなたには尋ねたいこともあるゆえ、3人分の席を確保しておくとしようかの」
 約束が出来たことで一層笑みを濃くした鈴鹿は、お湯が沸くのが今か今かと楽しみにしながら調理台を片付け始める。そこへ、ハーブや自生していた野菜を収穫してきたグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が、誰かを捜すように調理場へとやってきた。
「これ、そこの。何を探しておるのかえ?」
「……とってきた。毒草はないけど、薬師の書、ある?」
 薬師の書、と言われなんだったかと記憶を巡らせたイルは、それが新入生を対象に配られた書物だと思い出し、つい笑い出してしまった。
「ホッホッホ、妾たちはそのように若く見えたかえ? そういうものは、あちらの殿方が持っているんじゃないかの?」
 既に洞穴や湖から材料は運ばれてきており下処理を済ませていた神条 和麻(しんじょう・かずま)は、これだけの材料があれば何だって出来ると頭の中にあるレパートリーから何を引っ張り出すか思案していた。その手元にはグラキエスが求めていた薬師の書があることを確認すると、アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)はわざと音を立てて近づいた。
「失礼する。俺たちは周囲でハーブなどを摘んできたのだが、より良い収穫のためにおまえの持つ本を貸しては貰えないだろうか」
「あ、野菜も来たんだ? 良かった、これで料理の幅が広がったぜ。本のついでに、こいつも連れてってくれていいから」
 まるで道具か何かのように東雲 レン(しののめ・れん)を指す物だから、料理をする気満々で袖を捲ろうとしていたレンはショックを受けたように和麻を見る。
「……いらない」
「何よっ! オカマだからってバカにしてるの!? 料理だって出来るけど、材料探しだって出来るんだからねっ!!」
 露骨に訝しむ表情をするものの、グラキエスは見る機会などほとんど無かったであろう新しいタイプの人に興味を示したのか、見たかった薬師の書もあることだしと文句は言わず3人でもう1度収穫に行くことにした。
 エリス・スカーレット(えりす・すかーれっと)も話し相手を求めてフラフラとどこかへ行ってしまったが、遠くへ行かないように言ってあるので大丈夫だろう。
「さーて、やるかっ!」
 気合いを入れた和麻には、美味しいと笑ってくれる皆の顔が見えているようだった。

 和麻の側を離れていたエリスは、真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)が器を作るというので楽しそうだとくっついていくことにした。孟宗竹に似た植物を探す真名美もまた、エリスの持つ薬師の書があるおかげでイメージしていたものを探しやすく、目的の植物を見つけることができた。
「んー……ここからが問題みたいね」
 薔薇学の制服を着ていた関谷 未憂(せきや・みゆう)らとも合流し、これで竹を切り器にすることが出来ると思っていたのだが……彼ら、いや彼女たちは他校の制服を着てこのイベントに参加しただけで、特別ナイフのような物は持ってないという。未憂はちらりとリン・リーファ(りん・りーふぁ)を見て呟いた。
「リンが女性が苦手な人が居るかもしれないなんて言うから……」
 長い髪は束ね、眼鏡もして。旧薔薇学制服に身を包んでやってきたのは、薔薇学生を思ってのことだ。立派な竹を目の前に、誰1人として切る道具を持っていないというこの状況に、助けを呼びに行く以外妥協案は見つからなかった。
「ごめんなさいです、エリスが竹槍なんかよりもっと鋭いものを持っていたら良かったんですけどぉ……」
「鋭い物……そうだよみゆう! 氷術でなんとかならないかな? 落ちてる物を凍らせて、氷の刃! みたいに」
 無茶なことを言うと思いながらも、とにかくこれを切り倒してみんなの所へ運びさえすれば、協力し合って器を作ることが出来る。けれども、仮に成功したとしてもこの気温では氷の刃が持つのは1度きり。未憂の体力を考えれば10本も収穫は出来ないだろう。
「もー……出来なかったら、リンがダッシュでナイフ借りに行く係よ?」
 適当な枝を拾い、それが含む水分と空気中の水分をかき集めるように周囲の温度を下げていく。皆が期待して自分を見ているというプレッシャーのせいで、少しでも気を抜くと凍り付いた端から溶けてしまいそうだ。
「えいっ!!」
 ある程度の氷が出来た所で、勢いよく横に振り切ってみる。確かな手応えと共に竹に刺さったものの、貫通させるにはおよばず氷の刃は周囲の熱に負けて溶け落ちてしまった。
 しかし、半分以上切り込みを加えられたおかげで、竹はゆっくりと傾き繋がっていた部分も折れて、結果的に切り倒すことに成功したのだ。
「わーっ、未憂さん凄いですぅ! エリス、こんなに凄いの初めて見ましたよぉ」
「うんうん、これで器はどうにかなりそうだもんね! あともう少しだけ頑張って!」
 エリスや真名美に褒めちぎられ、リンもパートナーを褒められ自分のことのように喜んでいる。こうなっては、やっぱりナイフを取りに行こうなどとは提案し辛い。
「よーし、私に任せてよ! 出来るだけ多くの竹を切り倒してみせるわっ」
 ここでギブアップしたら、何かに負けた気がする――そんな刺激もまた、未憂を奮い立たせるのだった。

 再び収穫へ繰り出したアウレウスは、主との慣れない距離感に戸惑っていた。人型をとることは少なく、鎧としてグラキエスの側にいることの多い自分は彼の信頼を得ているとは思う。しかし、それだけではない物を他のパートナーと築き上げているのを見ていると、主従の間柄とは言えこのままで良いのかと自身に問いかけてしまう。
「アウレウス、この辺りは、大丈夫」
「ありがとうございます、主のためにもより多くの収穫をしてみせましょう」
「…………ん」
 サバイバルの知識があるグラキエスは、最低限の口に出来る物としての区別はつく。しかし、料理の場でどんな物が求められているのかわからないので、先程の収穫もこのようにざっくばらんとした感じだった。しかし、今回は違う。レンが同行したことによって、必要な物を収穫するために場所を転々と変えているのだ。
「もしや、歩き回ってお疲れではないのですか? ここは俺に任せて、主は休息を」
「違う。主、違う。今日は人、鎧じゃない……対等」
「何を仰るんですか、俺は主のために」
「グラキエス」
 じっと見つめ返す瞳に映るのは、紛れもなく人型の自分。戦闘に必要な鎧ではなく、アウレウスという人を求められているのかと思うと、感極まって涙ぐみそうになってしまう。
(なんなの!? 調理場では和麻が構ってくれなくて、収穫にきたら良い空気になっちゃって! 戻ったら料理で発散してやるんだから!)
 怒りにまかせて野菜を籠いっぱいに収穫するレンは、何を作ろうかと別のことを考えることで怒りを静めようとするが、怒っていようがいまいが彼の料理は8割は殲滅兵器となることだろう。
 そんな恐怖を感じ取ることもなく、和麻は佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)と共にかまどで炊き込みご飯を作り、和麻は魚を煮付けに弥十郎は塩焼きにと多くは無いが品数を増やそうと2種類の調理法で辺りに美味しい香りを振りまいた。近くでは神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が既に作られたソースと野外であることを活かそうと、バーベキューの準備を整えている。肉や野菜を刺すその串も、炊きあがったご飯を入れるために積み上げられている器も、先程真名美たちが切り倒してきた竹で作ったものだ。
 熱に強く食器にも籠にも日用品としては大活躍できる竹を利用出来たことで、学校側が最低限として用意した食器類をたらい回しにすることなく、一同に食事へありつける。真名美は竹の利便性に感謝をすると同時に、とても嬉しそうだった。
 働かざる物食うべからず。そんな気持ちを胸に湖へと向かったレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)はと言えば、罠のとばっちりを受け荒れ狂う湖の被害に遭い、結局ボーズのまま翡翠の元へと戻って来ていた。
「良かったですね? 働いたおかげで食事にありつけそうじゃないですか」
「何が良かっただ。こんな面倒な作業より、待ってるだけの釣りのほうがどれだけ楽か……」
「レイスさーんっ、お箸、足りないみたいですよぉ〜」
 暫しの休憩と思って翡翠の元を訪れたものの、エリスの声に再び駆り出されるのかと重い腰を上げる。しかし、その顔は文句を言うほど嫌がっているようには見えない。
「じゃあ俺は行くが、慣れない事すると疲れるぜ。合間を見てお前も食べておけよ? 元々食わない方だが」
 ひらひらと手を振って場を離れるレイスに曖昧な返事をするも、料理を待つ生徒の数に、果たして食べ物は残るのかと翡翠は苦笑する。弥十郎たちも、最後のひと仕上げに入ったようだ。
「うん、ワタシのほうは大丈夫かなぁ。和麻くんのも毒味、しておこうか?」
「本で確認はしたんだが、念のためお願いしとこうか。それにしても……」
 和食なら自信のあった和麻も、目の前で次々と弥十郎が魚の口に棒を二本突っ込み腸をねじり抜く様を見て、手際の良さや味だけでなくツボ抜きという調理法も身につけなければと尊敬の眼差しで見ていた。そして何より気になるのは、かまどの中で燃えるピンクの炎。
(火って別に、弱火や強火で色は変わらない……よな? 野外だし、酸素不足ってこともなさそうだし……なんなんだ?)
 じっとかまどを見つめる和麻に手の内は明かさず、弥十郎は小さく笑うだけ。ますます和麻の困惑は大きくなるばかりだ。
「ほらほら、それよりも完成したなら君が声をかけなきゃ。今日に主役は君たちだよ?」
「あ、はい! みんなー、無事に昼食は出来上がったから、順番に取りに来てくれよな!」

 歓声とともに、配布された食器を持って食べたい物のある場所へ並び始める生徒たち。新入生の活躍と先輩のフォローで、昼食パーティはなんとか形にすることが出来た。
 野菜を取る人は少なく、湖に多くの人が集まったので魚中心のメニューとなったものの、食べ物はなんとか全員に行き渡ったようだ。
 学校の垣根を越えた交流会としては、新入生も奮闘したので校長2人もご満悦な笑みを浮かべ、両校の生徒が健やかに成長するように願うのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

浅野 悠希

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございます、浅野悠希です。
出来るだけ新入生の皆さんが活躍出来るようにと先輩たちの行動をガイドで制限させて頂いたのですが、それが裏目に出てしまったようで……。
材料集めに偏りが出てしまったものの、何とか料理は完成したようです。今日の御夕飯は昼の分まで野菜を食べましょうね!

今回ガイドに提案させて頂いたトラップの数々ですが、アクション締切後に諸事情がありまして使用しない方向で完成させることとなりました。
なんとかご満足頂ける形へと模索してみたものの、参加者の皆様へは消化不良のリアクションをお届けする形となり、お時間ばかり頂く形となって申し訳ございませんでした。

また、頂いたアクションの中で、今一度皆さんに確認して頂きたいのですが、
■スキル「ちぎのたくらみ」などが無い場合、原則変身できません
ヒロイックアサルトは物理、魔法両方の攻撃力を高めるだけで、それ以外の効果はありません。
詳しくは右記URL内の「英霊」の欄をご覧下さい。 https://souku.jp/manual/manual_15h.html#mn01
ヒロイックアサルトの効果として設定されている場合は「演出」としてそれ以外の描写が可能になるケースもありますが、それが無い場合はデータ通りの外見のままヒロイックアサルトに設定されている技を使用することになります。(今回のシナリオ4Pをご確認下さい)

■スキル「サイコキネシス」は、自分の腕力と同等の力しかありません
腕力が低い場合、重いものは持ち上がりません。

■特技「男装」は、必ずしも実性別を看破出来るわけではありません
男装に目が肥えている、として上記行動に出ても看破出来ない場合もあります。

以上は個人的な判定ではなく、運営に確認をとっての結果となっておりますので、他MSでも同等の判定をされます。
次回アクションの際にはお気を付けくださいね。

GAに関しては、共通のグループ名を付けている方を優先させて頂きました。
アクション内にお互いの名前を書かれていたりと明確に確認出来る場合はGAとさせて頂くこともありますが、今回はイベントシナリオと大変描写の少ないシナリオだったこともあり、別グループとさせて頂いてます。

少し遅めの新歓となりましたが、新入生の皆さんはこれからも先輩の愛に包まれて、楽しい学園生活を送って下さいね!