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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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■決戦、深い森の温泉蟹
 温泉蟹を討伐するチームが、温泉蟹のすぐ近くまで寄る。……その大きさは見上げないと身体を確認できないほどであり、相当なものである。
「温泉と聞いてついてきたはいいけど……こんなでかい蟹が相手? 勝てるの?」
 と、西村 鈴(にしむら・りん)が蟹を見上げながら唸っている。しかしすぐに覚悟を決めたのか剣を構え、すぐにでも戦闘に入れる準備をする。
 ――ちょうど温泉蟹は食事の時間なのか、縄張りである温泉から少し離れた所で大木の樹皮を削って食べているようだ。探索中、『ディテクトエビル』を使って蟹を警戒していた者がいたが、それにかからなかったのは蟹自体はこちらに気づいておらず、敵意がなかったからだろう。
「ふむふむ、温泉蟹はああやって餌を確保するのか……もうちょっと近くで見てみないと」
 餌をとる様子をビデオで撮っているジョニス。未知との遭遇に興奮してきたのか温泉蟹に近づこうとするが、ブルーズに襟根っこを掴まれて止められてしまった。
「こういうのは肉体言語で語り合うのが一番なのだー♪ なによりっ! カニさんはチョキしか出せないのでグーで語り合えば一発解決♪」
 生態観察を兼ねた、様子のうかがいをしていると、我一番と飛び出した黎明華。だがしかし……。

 ピシッ。

「ひゃうっ!?」
 ……巨大な温泉蟹にしてみれば、ヒトは虫くらいにしか見えなかったのだろうか。左鋏で軽く払われ、黎明華はあわれふっ飛ばされた。ダメージはなさそうだが、払うだけの風圧で飛ばされたのだからその大きさたるやである。
 このままでは木にぶつかって怪我を負ってしまう……そう思われた矢先、後方で漂いながら待機していたウーマ・ンボー(うーま・んぼー)のワイヤークローで捕獲され、木との接触を避けることができた。
「怪我人を出すわけにもいかぬのでな。このまま運ばせてもらう」
「おー、マンボウさんありがとなのだー♪」
「マンボウではない、それがしは天使だ。……運ぶぞ」
 助けてもらって喜んでいる黎明華をズリズリ引き摺りながら、ウーマは後方へと下がっていった。
 虫を払った、という認識だったためか温泉蟹はいまだに食事を続けたままだ。こちらに気づく様子もない。
 ――だが、すぐ何かに気づいたらしい。その場で向きを変え、その視線を……温泉のほうに向ける。どうやら、自分の縄張りに手を付けようとする堪能班の気配を察知したようだ。
 しかし、そこはユキノが空飛ぶ箒に乗っての小回りの利く陽動で蟹の気を引く。同様に大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)の二人も蟹へ攻撃して戦闘班に気が向くよう仕掛ける。どうやら、銃弾と刀では硬い甲羅に傷をつけるのも難しそうだ。
 三人の陽動が功を奏したのか、温泉蟹は戦闘班の存在に気づき、標的をそちらに変更する。そして、縄張りを穢されたくないのだろうか蟹特有の横歩きで温泉との距離を離すように移動を開始した。巨体が木々を踏み倒しながら移動する様は圧巻の一言と言えよう。
「速い……!」
 観察中のジョニスが思わずそう言ってしまうほど、蟹の移動速度はその巨体に反して速い。あっという間に温泉との距離を離してしまった。
(ほほぉ、さすが温泉といったところ。蟹がああまで大きく育つとはな)
 温泉蟹の天晴れな大きさに心の中だけで感心しながら、『パスファインダー』で戦闘地形を移動しやすく対処しつつ、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)フィン・マックミラン(ふぃん・まっくみらん)に適せんな指示を出す熊谷 直実(くまがや・なおざね)
 今回、弥十郎から「いい修行がありますよ」と誘われ、フィンと直実はやってきた。その修行、というのがこの蟹退治のようだ。
「こうも速いとやりづらいねぇ」
 弥十郎がそうぼやくのも無理はなく、『記憶術』や『行動予測』でじっくりと蟹の行動を観察、記憶しようとしてもその速さで捉えきれずにいた。だが、そんな中で支障なく動けているのは直実の指示のおかげだろう。
「っ!? くるっ!」
 テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)の後ろに回って『行動予測』で行動を読んだ皆川 陽(みなかわ・よう)。すぐに温泉蟹の巨大な右鋏が陽たちに向けて振り下ろされる!
「陽、下がって!」
 だが、その攻撃をテディは『ブレイドガード』を使って防御する。パートナーを守る巨剣の防人はそのまま、弾く形で右鋏を押し戻し、蟹に隙を作らせた。
 その隙を狙い、箒でかく乱陽動をするユキノが『氷術』を使って蟹の足止めを行う。蟹の速さを奪う目的もあるようだ。ちなみに、『氷術』で攻撃したのは焼き蟹にならないように、との配慮らしい。
「え、えーいっ!」
 ……ただ、リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)のように『火術』で攻撃する者もいたが。そして当の本人は探索だけでかなり息を上げていたのか、隙を突いた攻撃をした後にその場へへたり込んでしまった。
「こら小娘、へたり込むでない。さっきの探検程度でへたり込んでいては――ぬ!?」
 リースの様子を見て叱咤する、パートナーの桐条 隆元(きりじょう・たかもと)。だが、態勢を立て直して今度は疲労状態のリースに向かって振り下ろされようとしている右鋏に気づけば、いち早くリースの前に躍り出て三節棍でその鋏攻撃を防御していく!
「た、隆元さんっ!?」
「勘違いするでないっ! 小娘に何かあったらわしにまで影響が出るからな!」
 突破されまいと踏ん張りをかける隆元。攻撃を諦めたか、蟹は重そうに右鋏を持ち上げる。もちろん、戦闘班はそんな隙を見逃すはずがない。
「こいつと戯れてからの温泉はきっと格別よね――やらせてもらうわっ!」
 口火を切ったのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)の『放電実験』。続けざまに『ライトニングブラスト』を繰り出し、温泉蟹を帯電地獄へ追い込む。それに合わせ、ミア・マハ(みあ・まは)も『天のいかづち』でさらなる雷の一撃を加える。
 緊張感の欠片もない恋人に肩を竦めつつも、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も蟹の殻めがけて『ライトニングランス』を撃ち込む。しかし温泉蟹は殻の身体を守ろうと左鋏で防御。『ライトニングランス』がそちらに突き刺さってしまう。だがダメージはあるようだ。
 左鋏に突き刺さった攻撃の痛みからか、暴れるようにして右鋏を振り回し始める温泉蟹。このままでは周囲に大きな被害が及んでしまう……!
「まだ、あきらめません!」
 しかしリースがあきらめることなく『火術』を蟹の目に繰り出し、それが直撃したことで蟹は視界を一時的に封じられた。だがすぐに視界を取り戻すだろう。
「ようやった! ほれ、わしらはこっちにおるぞ!」
 リースの攻撃を好機と見たか、深澄 桜華(みすみ・おうか)は大きな声を出して温泉蟹の注意を引かせる。視界を一時的ながらではあるが失い、音で位置を判別しなければならない状態の温泉蟹は、声のするほうへガサガサ移動し始める。
 だが数歩ほど歩いたところで、雲入 弥狐(くもいり・みこ)が『トラッパー』で仕掛けた巧妙なトリモチトラップにかかったらしく、動きを鈍らされてじたばたしているようにも見える。そこへ天城 瑠夏(あまぎ・るか)が『闇術』と『奈落の鉄鎖』を使い、さらに蟹の動きを鈍らせる。そこへ陽が『ファイアストーム』で援護攻撃を加え、温泉蟹へダメージを与える。
 何とか罠を振りほどこうと、右鋏をがむしゃらに振るい暴れまくる温泉蟹。そんな無差別で無秩序な攻撃をシェリー・バウムガルト(しぇりー・ばうむがると)は『庇護者』と『女王の楯』を使って戦闘班の防御を固め対応する。
 高まった防御力のおかげで大きな怪我は出ずに済む。そして、暴れた反動で疲れたかのような素振りを見せる温泉蟹へ、猛攻を仕掛ける!
「いきますよっ!」
 『ゴッドスピード』で行動速度を一気に上げたルイ・フリード(るい・ふりーど)が、その速度を生かし温泉蟹の懐へもぐりこむ。そしてそのまま『鬼神力』で鬼の力を覚醒させる!
「はあああああっ!!」
 猛る咆哮と共に変容するルイの身体。――その身体は4メートルを超え、牛と同等の立派な角が一対、側頭部より生え出でる。覚醒した鬼はさらに『チャージブレイク』で全身に力を溜め込み始めた。だが、そのチャンスを潰そうと視界を取り戻した温泉蟹が鋏み切ろうと肥大右鋏を繰り出す!
「――そいつはさせねぇよ」
 一気に蟹の正面から近づき、その一撃を代わりに受けたのは――アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)だった。だがその受けたモノは『ミラージュ』による分身。本体は『バーストダッシュ』を使って温泉蟹の後方へ回り込んでいた。同様に、レキも別方向から背後に回りこんだようだ。
「いっくよぉーー!」
「うおらぁぁぁぁぁっ!!」
 アキュートの第四左足関節部への攻撃と、レキの『サイドワインダー』による第四右足関節部への攻撃が温泉蟹へ繰り出される。背後からの攻撃に対応することができず、直撃していった!
「こっちもありますよ!! おおおおおおっ!!」
 バランスを崩し、前へ倒れそうになったその時――温泉蟹の腹部近くへルイ渾身の『疾風突き』が直撃! 温泉蟹は勢い良く後ろに倒れこんでしまった。起き上がろうにも、すでに避難したアキュートとレキによって足関節を攻撃されており、すぐに起き上がれなさそうだ。
「また速い動きされたらあれだから――『ヒプノシス』!」
 再び動き回られると困るので、レキは『ヒプノシス』を使って蟹を眠らせる。どうやら効いたようで、蟹の動きはさらに鈍っていく。――攻め落としどころは、どうやらここのようだ。

「すぐに目が覚めて攻撃してくるかもしれない、ここは私が囮になって先陣を切る。弥十郎、後は頼む」
「その言い方、死亡フラグとか言う奴ですよぉ」
「そうか、なら――私が囮になるから、なんとかしろ
「言い方、あんまり変わってないですよ? ――まぁ、了解です。フィンに援護させますねぇ。……あと、料理はどんなのがいいですかぁ?」
「――一番いい奴で頼む」
 ここまでの会話の間に、『金剛力』と『百戦錬磨』で自身を強化した直実。立派な背中で弟子の弥十郎と語りきると、一気に右鋏へ攻撃を仕掛けにいった。三井 藍(みつい・あお)も右鋏攻撃に参加し、仕掛け杖で殴打を繰り返している。
 弥十郎はすぐさま、フィンへ援護の指示を出す。ただ、フィンをあまり前面に戦闘へ出したくないという気持ちがあったため、フィンの負けず嫌いな一面をうまく使い、身を隠しながらの援護攻撃を指示していく。弥十郎の口車に乗ったフィンは『ブラインドスナイプス』や『隠れ身』を使って直実たちへの攻撃援護をし始めた。
 弥十郎はそのまま、フィンの様子を見遣りながら右鋏の関節部分への攻撃を開始する。『歴戦の魔術』を使った的確な攻撃で、右鋏へのダメージを蓄積させていく。

 温泉蟹の機動力を奪い、なおかつ料理班へ運びやすくするため足関節部への攻撃も開始される。アキュートを中心に三井 静(みつい・せい)西村 鈴(にしむら・りん)、テディが4対ある足の関節部分を狙って攻撃。殻が固い分、関節はとても脆いのか……ある程度攻撃を加えただけで身体から離れてしまう。
「――っ!」
 第一右足の関節部分を、岡田 以蔵(おかだ・いぞう)が一閃で斬り捨てる。その様子を、木の上から綿貫 聡美(わたぬき・さとみ)が見ていた。
「ははっ、これやと“人斬り”以蔵やなくて“蟹斬り”以蔵やな! ――さ、とどめいくでぇっ!」
 この状況にも関わらず、冗談を飛ばす聡美。以蔵はそんな聡美へ感心の心持ちでいた。
 高く跳躍する聡美。高度からの落下速度を加えた、強力な一撃を温泉蟹の腹部へぶちかまそうとする!
(はっ、大したことあらへんやないか……拍子抜けやったわ)
 温泉蟹と聞いて闘争本能全開で挑んだが、歯ごたえのなかった相手へ苦い顔をする聡美――だったが。
「なっ!?」
 ――聡美の一撃は、温泉蟹の右鋏によって防がれた。温泉蟹が目を覚まし、傷ついた右鋏でとっさの防御をしたのだ。それを見て、聡美の口元が緩まる。
「――根性あるやないか。もっと……もっと、楽しませぇな!!」
 聡美はそのまま蟹の腹の上に乗ると、一気に蟹の目付近まで駆け寄る。
 最後の足掻きか、右鋏を振って抵抗しようとするが、後方から英虎のアーチェリー型光状兵器による援護攻撃が入る。設定は『蟹の甲羅』にしているため、温泉蟹の甲羅を簡単に貫通している。
「まずは、目やぁっ!」
 援護攻撃の勢いも借り、聡美はそのまま温泉蟹の目に強烈な蹴りを繰り出す。
「足やぁっ!」
 蹴った勢いで後ろへと跳び、回し蹴りで最後に残った第二右足の関節部分へさらなる一撃を加える。その蹴りは勢いのまま、右鋏にもヒット。そして――。
「――腹やぁぁぁぁっ!」
 聡美の嫌いな蟹味噌の詰まった腹部。そこへセレンフィリティの『ライトニングウェポン』で強化した電撃弾丸も撃ち込まれると同時に、聡美の強力な一撃が繰り出されていった!
 ――今の一撃が致命傷となったのか、口から泡を吹いて息絶える温泉蟹。生命活動も途絶えてしまったようで、完全に沈黙してしまった。
(さすが綿貫先生……闘争本能に任せたあの戦い方、もはや性癖ぜよ。怯まず、恐れることなく勇敢かつ本当に楽しく闘いを楽しんじょる)
 パートナーの戦いっぷりに尊敬と憧れの眼差しを向ける以蔵。しかし、すぐにある事に気づいた。
「……あ、右鋏が吹っ飛んでいってしまっちょる」
 先ほど聡美が足の関節部分を蹴った時に巻き添えにした右鋏が、先ほどの総攻撃の際に関節部分を首の皮一枚状態にしていたのために、吹っ飛んでしまっていた。幸い、そこまで遠くは飛んではいないが……。
 ともあれ温泉蟹の討伐は完了した。戦闘班は巨大蟹の足と身体、そして旨みの詰まった右鋏を料理班の元へと運び出し始めるのであった。