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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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探索! 幻の温泉奥地に奇跡の温泉蟹を見た!

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■不埒な禁書を成敗せよ!
 女子用脱衣所と湯船の間では、なぜか朝野 未沙(あさの・みさ)が門番のように立ちふさがっていた。その姿は一糸纏わぬ裸体そのものである。
「ふっふーん、マナー違反者は特製おだしの蟹しゃぶを食べさせないよー!」
 よく見れば、湯船に浮かぶお盆の上に特製蟹しゃぶセットと未沙が特別に持ってきた蟹しゃぶ用特製おだし(水筒入り)が乗っかっている。鍋に『火術』で温度を上げた石を入れて温める方式の、完全特別な蟹しゃぶだ。
 それを味わい、友達とワイワイ楽しもうと水引 立夏(みずひき・りっか)が女子湯にやってきた。――その姿は、恥ずかしいからと身体にタオルを巻いていた。
「立夏ちゃん、タオル巻いての温泉入浴はマナー違反っ!」
「え、ええっ――きゃあっ!」
 ……どうやら、未沙のいうマナー違反とは『タオルなどの布を温泉につけること』らしい。(水着はアウト寄りのぎりぎりセーフ。理由は他の人が結構水着着用で温泉に入っているから、しかたなく……だとか)
 そんなわけで、タオルを巻いたまま入浴しようとした立夏へ有無も言わさず飛びかかり、そのタオルを剥ぎ取ってしまった。
「はい、入っていいよ♪」
 タオルを剥ぎ終えた未沙の顔は実に清々しい表情だ。
 と、少し遅れて緋王 輝夜(ひおう・かぐや)が姿を現した。パートナーであるエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)が留守番のため、彼の分まで楽しもうとする彼女の身体には……タオルが巻かれていた。
「輝夜ちゃんもマナー違反だよ!」
「こうなったら……あたしもやってやるー!」
「え、え、ふえぇぇぇぇ!?」
 一気に輝夜に飛びかかる未沙と立夏。二人がかりでは輝夜も手も足も出ず、あっという間にタオルをひん剥かれてしまった。しかも、結構くんずほぐれつな状態になっており、もしこれが混浴ゾーンで行われていたらとてつもない刺激の強いものになっていただろう。
 かくして三人とも裸になったので、蟹しゃぶを楽しむ前に洗い場で洗いっこをすることになった。この後、湯船に浸かりながら贅沢に特製蟹しゃぶを食べた未沙は、温泉の奥へ立夏と輝夜を連れ込んでいってしまい……デザートとして(特に輝夜で)たっぷり楽しんだとか。

 ――女子脱衣所では、レキの水着を見繕った、というミアがそれをレキに手渡した。その水着……といえるかどうかはわからないが、大きな葉っぱを蔦で繋ぎ合わせた南国チックなものである。
(チラリズムもこれで完璧……眼福を得られるのう)
 レキの裸を他の人に見られたくない、とミアは思いつつ、レキがそれに着替えるのを見遣る。その一方、久世 沙幸(くぜ・さゆき)は自分の荷物をガサゴソと漁っている真っ最中だった。
「あ、あれ? 持ってきた水着がない……!」
 確かに持ってきていた水着。それがまったく見つからず、何度探してもその存在を確認することができない。バスタオルを巻いて……と思っていると、温泉のほうでなにやら他の女子が巻いているタオルを剥ぐ女子――未沙である……の姿が見受けられる。……巻いたら、危ないかもと察知する沙幸。と、そこへ藍玉 美海(あいだま・みうみ)がスッと沙幸の後ろに回る。
「沙幸さん、せっかくの美肌の湯なんですし水着を着たりタオル巻いたりするのは邪道ですわ」
 ……本当は肌と肌との直接的な触れあいを楽しみにしているのだが、それをおくびにも出さずに沙幸に語りかける。ちゃっかり素肌を晒す肩に触れてたりしてるが。
「ひゃうっ!? わ、わかったよ〜……」
 沙幸も覚悟を決め、裸で温泉に入ることに。そんなこんなで、レキとミア、沙幸と美海はそれぞれ脱衣所を出ると――。
「えっ……!?」
 瞬間、レキが驚く。というのも、温泉の湯気と思っていたそれは『アシッドミスト』であり、脱衣所から出た瞬間にレキが身に纏っていた葉っぱ水着がじわじわと溶け始めていく。
「これって……酸の霧!?」
 思わず沙幸も構えてしまうが、どうやらうまい具合にタオルや水着などの布だけが溶けるよう濃度を調節しているようだ。
「誰じゃ、こんなことをしおるのは!?」
 レキの裸を見せまいと、レキの前に立ち塞がりながら犯人を捜すミア。その正体は――仕切りの上に『あった』。
「ふはははは……覗きなどつまらん! 邪魔なものは全て取っ払い、頭から湯にどっぷり浸かって々と泉のごとく湧き出す望、すなわち“こんよく”を共に楽しもうではないか! そうすれば腹も膨らみ、皆満足できるだろう!」
 ……『アシッドミスト』を仕切りや、水着・タオルに吹きかけて溶かそうとする混沌の禁書。禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)が、このカオス状況の諸悪のようだ。その姿はモザイク処理のかかった天狗面が浮いている……という、放送コードギリギリなもの。正直、発言もここでは言えないようなギリギリ線を突っ走っている。
 そしてすぐさま、それを捕らえようと河馬の契約者であるリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が浴場に姿を見せた。
「カバ、また周りに迷惑かけて! 今度という今度は許さない……他の人の覗きならまだしも、あんたの場合は動くだけでヤバいことになるんだから! ――みんな、あのバカを捕まえるの手伝ってくれない?」
 リカインの頼みに、すぐに呼応する女子軍。隅っこで温泉に浸かっていた翠やミリア、さらには奉仕役として色々と動いていた詩穂や――すでに、傍らに置いていたピストルで河馬を撃って行動を起こし始めたキャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)も加わる。
「うおぉぉっ!」
 しかし河馬はそれを間一髪で回避。このままだと目的を完遂できないと察した河馬はある選択を取った。
「このままでは“こんよく”が楽しめぬではないか。……しかたあるまい、ここは逃げながら遮る壁を全て取っ払う!」
 ……あ、逃げた。だがそれを許さぬ女子軍はすぐに追いかけ始めるのだった。

 ――男子湯では、ひと仕事を終えラルクが。混浴ゾーンでは猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)ウルカ・ライネル(うるか・らいねる)がそれぞれ湯に浸かって疲れを取っている最中だった。
「いい湯だなぁ……何も起こらなきゃいいんだけど」
 と、勇平がくつろぎながら平穏無事に過ごせることを祈る。ウルカも温泉ということで目一杯楽しむつもりである。
「はー! 癒されるなぁこんちきしょー!!」
 男子湯のラルクもまた、すっかりくつろいでいるようだ。
 ……だがそんな三人の目の前を、モザイク処理天狗面が勢いよく通り過ぎ、続いてそれに制裁を加えようと女子軍が猛スピードで通り抜けていく。
「……なんか、起こってるみたいだな」
 そんなウルカの言葉に、「ああ、だな……」と返事するほかなかった勇平。
「――無視だ無視。あんなのに関わったらこっちの身がもたねぇし、巻き込まれるのも厄介だからな」
 ラルクは今のを見なかったことにし、じっくりと疲れを癒すにしたのだった。

 さて一方。温泉からさほど離れていない小高い丘に……郁乃と荀の姿があった。どうやら、迷いに迷ってこんな所まできてしまったらしい。
(すっかりおしゃべりもなくなっちゃったし……本当どうしよう……)
 疲れと不安がピークに達しているのか、二人の間に会話らしい会話もなく、かなりぎこちない状況。このままではいけない――そう思った郁乃は、現状を打破するべくあえて元気な声で荀に話しかけることにした。
「ねぇ〜じゅんか――」
 だが……振り向いたその瞬間にバランスを崩し、その身体は斜面を滑り落ちそうになってしまう。
「お姉ちゃん!」
 郁乃を支えようと、荀は郁乃の腕を掴むが……そのまま一緒に斜面を転がり落ちてしまった。
 妹だけでも怪我無くなんとかしようと、郁乃は荀を必死に強く抱きしめたまま斜面を転がり落ちる。そして、その先は……崖だった。
(や、やばっ……!)
 二人はそのまま、崖を飛び出してしまう。自由落下を開始した身体はブレーキをかけることもできずに着地点まで落ちていく――!

「あのカバ、何でこんなに速いのよっ!」
 温泉をぐるぐると回る形で続いていた河馬と制裁女子軍の追いかけっこは苛烈を極めていた。なんかドタバタとやっている内に女子軍も数が増えているのだが、河馬との距離は縮まる気配はない。
 どうやら河馬は逃げるのに必死になっているのか、『アシッドミスト』による被害は抑えられてるものの、逃げに徹してるために距離を縮められずにいた。
「何かあのバカを止める手立てがあれば――」
 その時である。

 バシャーーーーンッ!!!

「っ!?」
 突然、河馬の目の前に何か落ちてきた。それにより河馬の足(?)が止まり、先頭を切っていたリカインがようやく河馬を捕らえることに成功した。
「いたたた……あれ、ここって……?」
 ……落ちてきたのは、郁乃と荀の二人だった。落下地点がちょうど温泉だったらしい。運が良い、とはこのことを言うのだろうか。
「お姉ちゃん、私たち助かったの?」
「うん、そうみたい」
 無事に到着できたことに安心している中、荀があることに気づいた。
「あ……服、どうしよう!? 濡れちゃってるよ!?」
 ……温泉へ着衣ダイブしたようなものだからか、当然服は濡れているわけで。しかし郁乃は少し考えてからあっけらかんと答えた。
「どうするっていっても、もうびしょ濡れだし……ゆっくりあったまろっか♪」
「――うんっ!」
 郁乃のその言葉から、二人は互いに微笑みあうのだった。

 ――そんな平和そうな顛末の一方で、迷惑をかけたモザイク天狗面への制裁準備が整いつつあった。
 逃げられないよう木に縛り付けられ、目の前には覗き対策を施していた女子軍が立ち塞がっている。
「ふっ……俺様を倒しても第二、第三の俺様が再び“こんよく”の扉をひr」
「遠慮なくやって構わないわ」
 ……宣告とは、いつでも突然訪れるものである。
 リカインの言葉を合図に、詩穂の『お引取りくださいませ』『実力行使』、沙幸の怒涛な連続攻撃、ミアの『凍てつく炎』、翠の『サンダーブラスト』、ミリアの『光術』『轟雷閃』、そしてキャンティ(なぜか湯気が集まってて顔が見えず、身体全体もチラリズムが生えている。ただ、そのプロポーションは小柄ながら抜群そうだ)の『とどめの一撃』が炸裂する!
「成敗ですぅ!」
「ウボァーーーーーーーッ!?」
 今までにないような多段攻撃の雨アラレ。河馬はその全てを受け、天へ飛び……星となった。そして、キャンティはその細い指先で銃をクルクルと回し、フィニッシュポーズを決めた。
 ――キラン、と輝く星。さらば河馬……何かの謎補正ですぐに復活するとは思うが、今は天に眠れ……。

「お嬢様、何かトラブルはございましたか?」
「ひじりん〜、お湯は最高でしたけど不埒な奴が出てきましたの」
「それは大変でございましたね……お着替えをお持ちいたしました」
 簡易脱衣所。聖は黒い人型猫の着ぐるみを差し出し、手早くキャンティの身体をバスタオルで拭く。そしてキャンティはすぐにその着ぐるみを身に付けていった。何よりテンポがよかったからか、誰にもキャンティの中身を見られずに着替え終わったようだ。
「なんにせよ、気持ちよかったですわぁ」
「ご堪能されたようなら、何よりです。私のほうも温泉サンプルをある程度入手できましたので、持ち帰って素を作ることができます」
 どうやらお互いに目的を達成できたようで、上機嫌の様子である。

 その一方で、機嫌を悪くしている者もいた。……羅儀である。
「まだ戻ってこねぇ……」
 探索時点でかなり楽しんで(本人はいたって生真面目に)地質調査をしていた白竜がまだ戻ってきていなかったのだ。どこまで調査にいったのか、それは本人にしか知る由がない。
「……こうなったら奥地に新しい温泉掘って、絶対に入ってやる!」
 苛立ちが最高潮に達した羅儀。白竜を探しに行くついでに温泉を掘ってやろうと、ジョニスからスコップを借りて森奥地へと入っていってしまった……。
 二人がどうなったのか。その結末を知る者はいない……のかもしれない。