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徘徊する悪霊達の被害拡大を阻止せよ!

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徘徊する悪霊達の被害拡大を阻止せよ!

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●4章  援軍の到着まで耐えろ!



「敵の動きが鈍くなった……?」
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は、対峙していた魔物の群れの異変をいち早く察知した。

「どうやら社に調査に行った部隊が何か突き止めたようですね」
「どう……します? 我等で……倒してしまい……ますか?」
 ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)の言葉にエッツェルは首を横に振る。
「いえ、それでも英霊達の力は強い。全てを討伐するには本隊の到着を待った方がいいでしょう、ですが……」
 エッツェルは片腕であるアーマード レッド(あーまーど・れっど)に向けて笑った。
「ここで雑魚の魔物達を放っておく手はありませんね」
「任務了解……破壊シマス」
 意図を汲んだのか、アーマードは遥か上空に飛んでいった。


「さあ……百鬼夜行と洒落こみましょうか。疲れないし傷も再生する私が囮役には適任でしょう?」
「エッツェル、我は……どうすれば……いいですか?」
「ネームレスさんは別ルートで私と同じ様に魔物を集めてください。それこそ私達で島中の魔物を集めてしまうくらいのつもりでね」
「わかりました……クク……さぁ……行きましょう……」
 再生に特化した肉体を持つエッツェルと凄まじい強度を誇る魔鎧を身に纏うネームレス。
 2人はまるで自身が魔物の引率者であるかのように群れの中に飛び込む。
 水晶の力が弱ったせいで、魔物や亡霊を引寄せる力を失った英霊達。
 行き場を失い彷徨う魔物の群れは、ものの見事にエッツェル達に付いてくる。
 魔物達は戦闘をつく2人に牙をむけ、ひっかくが、自己修復能力のある2人はものともしない。


「まとまりのなくなった魔物の群れなど、かくもたやすいものなのですね」
「島中……ではないけど……かなりの……魔物を……集めました」
「ご苦労様。さ、存分に楽しめたしそろそろいいでしょう。アーマード!」
 エッツェルがネームレスと合流した地点で声を張り上げると、その上空には全身に大量の重火器を装備している殲滅戦仕様のアーマードの姿。
「標的ヲ 確認……殲滅シマス」
 一斉に放たれる全弾攻撃。それはその場にいた魔物達を一気に屠ってゆく。
 ありったけの弾丸が地上に降り注ぎ、重火器が焼け付くほどまで激しく放出される。
 やがて辺り一帯に立ち込める硝煙。その中からアーマードに抱えられたエッツェルの姿。
「さ、私達の役目はこれくらいで充分でしょう。逃げるとしますか」




 禁猟区と超感覚で辺りに警戒網を張り巡らせていた清泉 北都(いずみ・ほくと)は、魔物の大規模な消滅と、こちらに残党が向かってくることを知った。
「よし、援軍が到着するまで後少し、持ち堪えるならばエッツェルのように魔物討伐をメインにした方が良さそうだねぇ」
 幸か不幸か島民達は既に非難し生存者はなく、魔物の群れの進撃により付近の建物は軒並み壊されている。
 北都はHCでソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)に状況を説明した。


「なるほどな。建物を保護する為にブリザードを使おうと思っていたが、心置きなく炎系の魔法が使えるって訳だ」
「どうする? このまま魔物を迎撃するか、それとも島民の退避や治療を手伝おうかねぇ?」
「俺達が敵の前にいるなら、俺達が討伐すべきだろ!」
 ソーマが答えるまでもなく、魔物達は彼らに突進してきた。
 わざわざ建物を気にしてエイミングで攻撃する必要も無くなった。
「近くにいる弱い魔物からどんどん倒していった方がいいねぇ、ならばこれだ」
 北都は魔銃の射手から放たれた四つの弾丸で魔物を射抜く。
「歴戦の魔術!」
 更には近くに寄ってきた魔物を全て蹴散らす為の、無属性の魔力を放出する。
 一定範囲の距離の亡霊達は一気に消えていく。


「おおっと、俺にも残してくれよ。ファイアストーム!」
 ソーマの放った炎の竜巻は辺りに散った木片共々、魔物達の群れを飲み込んでいく。
 2人の波状攻撃に敵はたまったものじゃない。
 付近の雑魚敵は一掃でき、少なくともこの先に避難している島民達の安全は確保できたと思った。
 だがその時、炎の中から鋭い剣撃がソーマに向かって放たれた。
「……ちっ、忘れてたぜ。そういやあんたらがいたんだっけな」
 傷ついた手をリジェネレーションで癒しながら、ソーマは呻いた。
「武蔵は何処だ……武蔵はぁ……」
 炎の中に揺らめく無数の影。その数、50はくだらない。
「この時代において未だに恨みだけを生きる糧とするなど、英霊として恥ずかしい限りだな。いや、その妄念こそ英霊たるものなのか……」
 ソーマを庇うように立ちはだかるのはウルスラグナ・ワルフラーン(うるすらぐな・わるふらーん)だ。
「ならばせめて、同胞たる我が貴様達の妄念断ち切ってやろう……」


 吉岡の英霊達に突っ込んでいくウルスラグナの後を追ってきたのは、猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)だ。
「水臭いぜ!一言行ってくれれば手伝うのにさ! 一緒に援軍がくるまで時間稼ぎをしようぜ!」
 もちろん、北都達を加えた4人がかりでも、この大人数の英雄達を相手にするのは無謀としか言い様がない。
 が、それは先刻までの事で、明らかに動作が鈍くなった英霊達相手に、倒せなくとも時間稼ぎ程度は何とかなりそうだ。
「とりあえず亡霊ってんなら、これは充分通用するだろう! 光条兵器でも喰らいな!」
 勇平の放った光の波動が先頭にいた英霊に突っ込んでいく。
 衝撃によりその足はぴたりと止まった。


「ぬぅん! 英霊としての誇りを失った主らの存在すらも許せぬわ!」
 振りかぶったグレートソードから繰り出されるツインラッシュは、動きを止めた英霊を弾き飛ばす。
「……あっちゃ、まったくダメージ受けてねぇな。やっぱりちょっと無謀だったか?」
 次はブレイドガードで防御を固めるか、だめもとでクライ・ハヴォックを使い攻撃力を高めて打破を狙ってみるか。
 思考を巡らしている勇平の背後から何者かが近づいた。
「今まで何処に行ってたんだよ、危うくこの少人数でこの修羅場を潜り抜けなきゃいけないかと思ったぜ」
 背後に立つのは、今回の任務で防衛や魔物の討伐に携わった者達。水晶の力が戻った事で、各人の持ち場をクリアした為に、最後の砦となるこの場に応援にきたのだ。
「へへっ、これで人数の上では不利って事はねえよな。みんな、最後の戦いだ。とにかく援軍が到着するまでの後少し、ここを絶対に通すなよ!」




 一方、水晶の力が弱った事を知らない葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、追ってくる力の弱い魔物を払いながら残りの島民達を避難させていた。
 彼女はトラップと破壊工作を用いながら敵を足止めし、カモフラージュで身を隠しつつ近寄る敵を排除していた。
(さて、このままの状況で何処までやれるかな……)
 住民達を先導するのは仲間達に任せ、自分はその護衛にあたる。
 だがその役割を担っている者が他にいない為に、状況的にはかなり厳しく感じられる。


 このまま何事もなく避難が終わってくれれば。
 そう思う吹雪の前で、1人の少女が足をもつらせて倒れた。
「大丈夫ですか!」
 少女はその足を強く挫いたらしく、歩けそうにない。
(仕方ない、人命救助が最優先だ)
「私の背中に乗って。一緒に逃げましょう!」
「は、はい」
 吹雪が少女を背中に負った瞬間だった。ひとつの影が彼女達を襲う。
「しまった、英霊!」
 振りかぶられる邪なる刀。絶体絶命。


 ……だが、吹雪達が命を立たれる事はなかった。
「よかったでありんす。なんとか間に合ったでありんすね」
 安堵の混じったハイナの声と、上空から沢山の飛空艇の音が聞こえた。
「もう大丈夫じゃ。ここからは暴走した英霊達を制圧するだけでありんす」




●エピローグ



 明倫館の校庭で、今回の任務に携わった生徒達の前にハイナが立った。
「皆のお陰で、このたびの英霊の暴走騒ぎを何とか納めることができた。礼を言うでありんす」
 流石に緊急の指令だった上に被害の拡大阻止という難しい任務、何もかも無事に済んだわけではない。
 島の中の集落はいくつか復興不可能なくらいに英霊達に蹂躙され、人命も多く失われた。
 それでも生徒達が役割を分担して働いてくれたお陰で、かなりの損害を食い止めることが出来た。
「お主達が気にやむ必要は全くない。現場はあっちらが辿り着く前には既にかなり損害を被っておった。今回の任務は大成功だと思い、疲れた体をゆっくりと休めてほしいでありんす」
 そう、何事も100%ということはありえない。
 ハイナの言葉を受け、人命を失ったことには心を痛めながらも、任務達成の喜びを感じながら散っていく生徒達だった。

担当マスターより

▼担当マスター

浮浪

▼マスターコメント

 こんにちは、浮浪(はぐれと読んでください)です。
 初めての執筆にも関わらず、こんな拙いシナリオに参加していただき、誠にありがとうございます。お疲れ様でした!
 みなさん素敵なアクションで、どなたをどこに配置しようか、かなり迷いました。
 結果、所属学校とアクションの内容によって登場順をずらすといった感じでリアクションを構成してしまった為に、中には完全に表現できなかったアクションがあることを深くお詫びします。
 少し被害を被ったという結果ですが、一応しっかりと判断したつもりですが、意に沿わないこともあるかもしれません、重ねて予め謝らせていただきます!

 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。不備などがあれば、まだ不慣れなのでバシバシ文句を言ってください……いえ、多少加減していただければ助かりますが……。

 これからも機会がある限り、バトルに限らず様々なシナリオを展開していきたいので是非よろしくお願いします!
 ……それで、あの、マスターページって何を書けばいいのでしょうか……このコメントでもそうですが、自分の言葉を書くのは苦手だったりします……。

 次回、もしよろしければ、またご参加ください!
 それでは失礼致します!