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半透明な少女の願い

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半透明な少女の願い

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   ☆★☆★☆★


「これで、少しは……」

 手の土を少し払って、色の良くなった緑の葉を、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は撫でる様に触れた。

「エース、こちらは終わりましたよ」

 エースの背後からエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)は声を掛ける。
 2人は騒ぎを聞いて古城へ来たものの、庭にある植物の惨状は想像以上だった。植物達に話を聞くよりも助けるのが先だと、エースとエオリアは庭の一角に居るのだ。

「これだけ広いと、流石に短時間じゃ終わらないね」

 エバーグリーンを既に何度か使ったエースに、疲労の色が見え始める。2人だけで手入れをするには、絶望的な広さだ。

「休憩も必要ですよ。それに、本来の目的が、まだ……」

 エオリアは少しだけ、城へと目線を向けた。

「そうだね、先に話を聞こうか」

 頷いて、エースは人の心、草の心を使い、植物に語りかけた。
 それと同時に殺気看破を使ったエオリアは、こちらに近付いて来る気配を感じた。
 害意は鈍い様に感じるが――

「……」

 エオリアはメルトバスターを音も無く実体化させ、構えた。向こうもこちらに気付いているのか、動きは慎重な様だ。

 2つの影が姿を現す。
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)と、彼女を護る様に対星剣・オルタナティヴ7を構えたリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)だ。

「これは素敵なお嬢さん方、花をどうぞ」

 一瞬の緊張した空気を、差し出した花と共にエースが緩和する。

「あ、有難うございます……」

 リーブラは思わず受け取った。

「お前達は……?」

 戸惑いと警戒心の混ざった声で、シリウスが言う。

「これは失礼を」

 荒れた庭の一角で、自己紹介が始まった。そして、お互いの目的も。
 城から主が消えたのは、10年20年よりも更に前である事、それはこの位置から見える物置と思われる小屋から城の裏側にかけてよく動いている事。
 エースは背の高い木から聞いた内容を、そのまま伝えた。

「じゃあ、オレら小屋の方へ行くから、何か判ったらまたよろしくな」

 シリウスは魔法携帯【SIRIUSγ】V2をぽちぽちと触っている。

「お花、有難うございます。それでは、お気をつけて」

 そう言って、2人はその場を後にした。



   ☆★☆★☆★



 城の裏側が見える塀近くに、ももいろと白の毛玉をもふもふしている2人のロリロリメイド、ユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)と、バンシー・トゥールハンマー(ばんしー・とぅーるはんまー)が居た。
 生物学的には男に分類されているのでショタショタ……。しかしどう見ても女の子にしか見えないのでロリロリ……。
 まあ兎に角、可愛らしい2人のぼーいずめいどさんが居た。

「バンシーさん」
「はい、何ですか?」
「城の裏口はあそこに見えるのに、どうして行けないんだと思う?」
「さぁ、どうでしょう?」

 城の裏口を探して入ろうとしたユーリだが、進めば進む程に荒れた植物に邪魔をされ、所謂迷子になっていた。

「この僕、ぼーいずめいどさんが解決! だったの……に!?」
「ユーリさん?」

 後ろの塀に寄りかかる筈が、何故か其処には何も無く、仰向けになったユーリの視界には「悪人です」と言わんばかりの、気を失った百合園の生徒を担いだ男の顔が映った。

「なっ、何だお前は!?」

 ユーリに向けて振り下ろされた男の拳を、イナンナの加護で察知したバンシーは、キマク鋼の楯で弾く。
 バランスを崩した男から女生徒が落ち――

「よし、間に合ったぜ」

 ペガサスの衣を纏ったシリウスが受け止めた。

「シューティングスター☆彡」

 男の後ろに別の男の姿を確認したユーリは起き上がるより早いと、仰向けのまま、星のようなものを男達めがけて落とした。
 直後、皆をルーン空間結界内へ入れようと、リーブラが駆け寄る。が――

「……あれ?」

 男達からは何の反撃も無く、拍子抜けしたユーリは寝転がったまま、声を出した。

 弱……

 この場の全員が、そう思ったに違いない。

「これ、隠し扉? よく見つけたな!」

 閉じてしまえば其処に扉がある事など誰も気付かない程、巧妙に造られたその扉を見つけたユーリに、シリウスは感心した。
 偶然も運も、実力の内である。起き上がったユーリは、誤魔化した様に笑った。
 しかし、其処でノビている男達が女生徒を救出した、とは考えにくい。となると、やはり学院から攫って来たのだろう、と言う結論で、4人は一致した。