空京

校長室

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション

リアクション公開中!

【十二星華&五精霊】サマーシーバケーション
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リアクション

 
 海の家の一角で、七尾 正光(ななお・まさみつ)とパートナーのアリア・シュクレール(ありあ・しゅくれーる)は、まったりと二人で食事をとっていた。
「それにしても、きれいな海だよな」
「うん、ものすごくきれいで澄んだ海だよね。泳いでる皆も気持ちよさそう」
 目の前に広がる海では、生徒達が自由気ままにはしゃぎまわっている。
「せっかくだから、水着でも持ってくればよかったかな?」
「あはは、確かにねー。水着を持ってこなかったのは失敗だったかもね」
 二人は、今日はまったりする目的で海に来ていたので、水着を持ってきていなかった。
「でも、私の水着はスク水しかないんだけど、おにーちゃんはそれでいいの?」
「ん? アリアなら何を着ても似合うと思うよ。それがスク水だろうがな」
「本当? じゃあ、帰ったら一緒にプールでも行こうよ」
「あぁ、そうだな」
 その後も二人は、海ではしゃぐ生徒達を見ながら、まったりとしたひとときを満喫したのだった。

「ふぁ〜……ここまで天気がイイと、眠くなるよね」
 海の家でアイスを頬張っていた神裂 火乱(かんざき・からん)は、思わずその場に寝転がる。
「もう、食べたばかりなのに寝たら太ってしまいますよ?」
 ゴロゴロと寝転ぶ火乱を、パートナーの神裂 刹牙(かんざき・せつが)が咎めた。
 しかし――
「ふぁ……うぅ、欠伸が移ってしまいました」
 刹牙も眠くなってきてしまったようだ。
「ふふふ、刹牙もこっち来て寝転がりなよ。気持ちいいよ? ほらっ」
 火乱が自分の横をポンポンと叩き、刹牙を招く。
「そ、それじゃあ……少しだけ」
 そう言って、火乱の隣に寝転ぶ刹牙。
「どう? 意外と風が吹き抜けて気持ちイイだろう?」
「たしかに、気持ちいいですね」
 二人を心地よく包み込む風。
 遠くからはビーチではしゃぐ生徒達の声が聞こえてくる。
「火乱は……今後は何かやりたいこととかあるのですか?」
 刹牙は、何となく火乱に今後のことが聞きたくなって質問してみた。
 ところが――
「火乱? どうしました!? 大丈夫ですか!?」
 火乱から返事が返ってこない。
 慌てて起き上がった刹牙は、火乱の顔を覗き込む。
 すると彼は――
「すぅ……すぅ……」
 小さな寝息を立てていた。
「もう寝ちゃったんですか? まったく……心配させないでください」
 そう言って再び寝転がった刹牙も、数分後には同じように寝息を立てていたのだった。

「エリスさん、なんだかお腹が減ってきました。何か作ってください」
 海の家でまったりしていたアル・フィンランディ(ある・ふぃんらんでぃ)は、だんだんとお腹が空いてきていたので、パートナーのエリス・フローティア(えりす・ふろーてぃあ)に手料理を頼んでみた。
「え、えぇ!? ワタシ、料理なんて全然できませんよ!?」
 しかし、頼まれたエリスは非常に自信がなさそうだった。
 それでも、アルは頼み込む。
「いいんです。私は、エリスさんの手料理が食べたいんです!」
 サラリと恥ずかしいことを言ってのけたアル。
 それ聞いたエリスは――
「も、もぉ……本当にどうなっても知りませんからね?」
 と、顔を赤らめながら厨房に入っていった。
 そして、数十分後。
「で、できました……」
 厨房から出てきたエリスの手には、皿の上に乗った黒い物体が握られていた。
「え、エリス。これは一体?」
「ちゃ……チャーハンです」
 意外な答えに、アルは一瞬言葉に詰まった。
 だが、頼んだのは自分だ。これがどんな見た目だろうと、食べる義務が自分にはある。
「い、いただきます」
 黒チャーハンを一口食べたアルは、その後の記憶がなかったという。気づけば、次の日になっていたのだとか。

「うぅ……暑い。疲れた……僕はもう寝たい」
 シェイ・マスクエル(しぇい・ますくえる)はグッタリとしていた。それと同時に、海の家でまったりとしていたかった。
 だが、それもパートナーの椿 美代(つばき・みよ)のおかげで叶わぬ夢となっていた。
「ほら、ボク。こっちに来なさい。むふふ」
 美代は、いたいけな少年を目の前に両親がいるにも関わらず誘惑していた。
「こらっ! 少年を誘惑するな! 大人しくカキ氷が来るのを待ってろ!」
 シェイが電光石火の素早さで美代を少年から遠ざける。
「もう。人の趣味を奪うなんて、感心しませんよ?」
「何が趣味だよ! まったく!」
「もしかして、焼きもちですか?」
「ち、違う! お前が何かやらかさないためだ!」
 実際のところ美代の言ったことは、少しだけ図星だった。
 せっかく美代の喜ぶ顔が見たくて海に連れてきたのに、少年を誘惑するなんて……。
 まぁ、彼女らしいといえば彼女らしいが。
「この後はどうします? 泳ぎに行きますか?」
 運ばれてきたカキ氷を食べながら、美代がたずねる。
「いや。日焼けしたくないから、ここで寝ておく」
「そうですか。それなら、私はさっきの少年との続きを――」
「だぁああ! ダメに決まってるだろ!」
 結局、シェイはこの一日を美代の見張りで終わらせてしまったのだった。
 
「青い空、青い海! 眩しい太陽に、焼けた砂浜!
 これぞ海、これぞ夏! って感じだねー!」
 『あおふろ』の前で、鷹取 楓(たかとり・かえで)がメイド服の格好で訪れた生徒を席まで案内し、また店の前に出て、を繰り返していた。
「さーさー、海の家での美味しいご飯は如何ですかー!
 海の家と侮るなかれ、出てくる料理は本格派だよー!
 ……こんな感じで良いのかな。
 ねぇリリア、どう思う――」
 ふと振り返った楓の視界に、直射日光の下でぴくぴく、と身体を震わせて突っ伏すリリア・オルコット(りりあ・おるこっと)の姿が映った。
「ああ、そう急かさないでくれ、今行くから……」
「……って、日射病で倒れてるー!? リリア、行かないで帰ってきて!」
 どこか穏やかな笑みを浮かべるリリアを担いで、楓が中へと引っ込んでいく――。

 『あおふろ』を訪れるのは、お腹を空かせた生徒だけではない。
 あちこちで日射病、擦りむいたり全身をぷすぷす、と煙に包まれた生徒たちが、治療のために運ばれてくることもあった。

「はい、つめたいタオルですよ〜」
「外の陽射しはキツイですわ。ここでゆっくりしていくといいですわ」
「……ああ、ここは……そうか、あれは……」
 倒れたリリアを始め、熱の症状で気分を悪くした生徒たちは、セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)の氷術で調整された部屋の中でヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)の救護を受けていた。
「ヴァーナーさん、そちらにふたり分、場所空いてますか?」
 そこへ、同じく救護班として働いていたネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)がやって来る。
「……はい、大丈夫ですー。ごめんなさいネージュさん、連れてきてもらえますか?」
「はい、任せてください! ……瑠璃羽、そーっとね」
 ヴァーナーに頷いて、ネージュが水無月 瑠璃羽(みなづき・るりは)と協力して、ビーチバレーで負傷したと思しき生徒を一人ずつ寝かせ、治療を施していく。かつて連携して治療に当たったこともある二人の働きぶりは、生徒たちをすぐに元気にさせ、夏の思い出づくりに一役買っていた。

「うお、陽に当たり過ぎた……気持ち悪ぃ……」
「大丈夫ですか、アフィーナ?」
 うめき声をあげるアフィーナ・ケルブ(あふぃーな・けるぶ)を膝に載せ、ヴェスティル・ケルブ(う゛ぇすてぃる・けるぶ)が看護をする。響く音にヴェスティルが振り向けば、ライフセイバーとして他の生徒たちと海の見回りをしていたアイン・ブラウ(あいん・ぶらう)が、海で溺れかかっていた生徒たちを救出して連れて来ていた。
「朱里、この者たちの看病を頼む。……済まないな、折角の海だというのにこのようなことに付き合わせてしまって」
「いえ、放ってはおけないもの。……もしアインの仕事が落ち着いたら……」
「ああ、考えておこう」
 見送る蓮見 朱里(はすみ・しゅり)に頷いて、アインが再び海へと飛び出していく。朱里を始めとして救護に当たっている生徒たちが、手分けして治療に当たっていく。
「この夏最大のビッグウェーブが来る! この波を制すればボクは何か変われる気がするんだ……」
「ブルタ、みんなオレ達に注目している気がしないか!? これがいわゆるモテ期ってヤツだな……」
 波を制しきれなかった様子で、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)ジュゲム・レフタルトシュタイン(じゅげむ・れふたるとしゅたいん)が大量の水を飲んで仲良く倒れ込んでいた。
「うう、なまこが、なまこが……」
「すまーん、当たるとは思わなかった、許せー!」
 フロートでぷかぷか浮いていたところ、カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)がたまたま投げつけたなまこが直撃してびっくりしてひっくり返ったリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が、軽いトラウマを訴えるように唸っていた。
「ハァ……なんで私の学校の水着はふんどしなのよ……」
「では、元百合園ということで、そこの水着を着ればいいのでは――」
「私はまだしも、要が似合うはずないでしょ!? ……まあいいわよ、ここの手伝い忙しそうだしね」
 運び込まれた生徒たちの間を、東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)が軽口を交わし合いながら動き回り、治療を行っていく。
「うおぉ……リフル、その格好は刺激が強すぎる……ぜ……」
「あはははは! 迅、海に来てまで格好つかねーなぁ!」
 女の子の水着姿に鼻から迸る紅い何かを噴き出し過ぎて倒れた百々目鬼 迅(どどめき・じん)を、シータ・ゼフィランサス(しーた・ぜふぃらんさす)がさぞかし愉快そうにからかう横で、裏椿 理王(うらつばき・りおう)は両腕を包帯でぐるぐる巻きにされて横たわっていた。
「も、もうお姫様抱っこは勘弁だ……」
 彼は『お姫様抱っこ』をして女の子のレアデータ――体重のこと――を回収するべく行動を起こしていたが、エメネアを抱っこしようとしたところで、運悪くオバハン集団に囲まれ、彼女たちの気が済むまでお姫様抱っこをさせられてしまったのであった。
「……うーん、これ本当に女の子の体重なのかなぁ? ……それにしても、海の家で食べる焼きそばってなんでこんなにんまいんだろう」
 片隅で、理王からデータの提供を受けた桜塚 屍鬼乃(さくらづか・しきの)がその数値に首をかしげつつ、焼きそばを美味しそうに頬張っていた。