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リアクション
第7章 永遠の願いを砕く光の刃
「はぁ・・・くそっ・・・人間なんかに・・・」
マグスはよろめきながらコンクリートの壁際に寄りかかる。
「血を流しすぎてしまったようだ。早く新鮮な血を吸わないと・・・あぁ香だ・・・香がする・・・」
血を求めて再び歩き出した先で、行く手を阻むような人影に遭遇する。
「残念だがそれはもう一生、叶わないことだな」
自らの親指を少し斬って血を求めるマグスをおびき寄せる囮となった、デズモンド・バロウズ(でずもんど・ばろうず)の姿があった。
「えぇい・・・!こうなったら・・・」
剣で斬りつけられた身体の痛みを堪え、吸血鬼はフルートを吹きだす。
音色でデズモンドを眠らせ、血を奪うためだ。
「それはもう、まったく無意味なことだぜ?」
「何も聞こえませんよ。だって私たち、耳栓してるんですから」
フルートを吹くマグスを見ながら、アルフレッド・スペンサー(あるふれっど・すぺんさー)がクスクスと笑う。
「魔法じゃないと分かれば、まったく怖くありませんからね」
「タネの分かったトリックなんて、所詮そんなもんだ」
動揺する標的の背後へ素早く移動し、デズモンドが背へ火術をくらわす。
「そんなことでは、また術をくらってしまいますよ?」
「ガキなんかに倒されてまるかー!」
アルフレッドの挑発に乗ってしまい、マグスに大きな隙が生じてしまう。
「そのガキに足元を狙われないようにしないとな」
その好機に地面を蹴って樹月 刀真(きづき・とうま)がパートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の光条兵器、片刃剣で標的の左腕を狙う。
「貴様ら程度で叶うものか!」
雷術を放ち吸血鬼は刀真と間合いを取る。
「ちっ、避けられたか・・・。さすが3000年生きたヤツってことか・・・!」
タンタンとリズムを取るように地面を踏み鳴らし、月夜のパワーブレスの助力を得て刀真は一気に駆け出した。
「遅いな・・・音より速く動けないんじゃ、この斬撃はよけられないぜ」
剣の刃がマグスの左腕を斬りつけた。
ゴトンッと音を立てて腕が土の上に落ちる。
「その状態じゃあ、もうフルートは吹けないよな」
「刀真の剣は予め聖水で、ちゃんと清めてあるのよ。どうやらその様子だと、再生力を弱める効果もあるようね」
斬られた腕がくっつかない様子を見て、月夜は得意そうに言う。
「とりあえず・・・二度と使えなくした方がいいわよね」
落ちた腕をメイスで月夜は容赦なく叩き潰した。
デズモンドたちに囲まれてしまい、逃げ場がなくなった深手を負った吸血鬼は、それでも何とかこの場から逃れようと思考を廻らせていた。
「君はもう十分にこの世を生きた・・・。何が言いたいか分かりますよね」
カルスノウトの柄を握り安芸宮 和輝(あきみや・かずき)が歩み寄る。
「覚悟しな、邪悪なドラキュラ野郎!」
松平 岩造(まつだいら・がんぞう)も光条兵器の刃をマグスへ向ける。
「1つ訊きます・・・。どうして子供を殺したのですか、生きるために大切な存在ではないんですか?」
「わたくしの若さを保つために浴びるのも良い方法なのだよ。今まで捕まえた子たちを今夜、魔界へ連れて行く予定だったのだが・・・まったく予定が狂ってしまった」
この吸血鬼は他者に知られてはいけない、禁断の方法で若さを保っていた。
牢獄のような部屋に子供たちを隔離していたのはそのためだったのだ。
「そうですか・・・やはりこの場で消したほうがいいようですね!」
雷術を避けながら岩造と和輝は、吸血鬼との間合いを詰めていく。
「非常にすばしっこい方でございますね。これならどうですかー!」
聖水の入った小瓶の蓋を空け、標的めがけてフェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)は投げつけるようにかける。
「なかなか当たらないでごさいますっ」
「でしたらこうしてやりましょう!」
何を思ったのかクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)は聖水を地面にまき始めた。
「何故あの吸血鬼に直接かけないのでしょう・・・。あぁっそういうことでございますね」
「えぇ、この方法なら効果があるのです」
クレアの行動を理解したフェイトは納得し、地面へ聖水をかけていく。
「―・・・っ!」
聖水を吸い込んだ土はぬかるみ、そこへ足をとられてしまったマグスの足はジュウッと音を立てて焦げる。
「その痛みを持って逝きなさい」
追い討ちをかけるように和輝が、光条兵器に持ち替えて吸血鬼の心臓を貫く。
深々と剣を刺したまま刃を回転させ一気に引き抜いた。
「くっ・・・」
「もう無駄口は終わりだ!」
凶悪な吸血鬼の首を岩造が斬り落とし、ゴトンッと地面へ転がる。
「これが幼い命を食い荒らして3000年生きたやつの最後か・・・」
岩造は落ちて変色していく首を見下ろす。
「案外あっけなく散っていくんですね」
風化していく様子に和輝は生命のあっけなさを感じた。
マグスの身体は徐々に灰化し、それは生命の終わりを意味をしていた。
灰は風に乗って空の彼方へ散っていく。
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