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第十章 公園も人気でした

「まやちゃん、可愛いですっ!」
 彼女役の玖瀬 まや(くぜ・まや)のワンピース姿を見て、葉月 可憐(はづき・かれん)は思わず抱きついた。
 抱きついた瞬間にまやの帽子のツバが、可憐の顔面に当たったが、ここで痛いとか言ってしまうと雰囲気を壊してしまうので、可憐は我慢した。
 そんな可憐のけなげな努力に気づかず、まやは無邪気に言った。
「えへへ、この前、可憐ちゃんに買ってもらったのだよ♪ 見てみて、リボンがポイントなのーっ♪」
「本当だー。このリボン遣いがすっごい可愛い。でも、まやちゃんはもっと可愛い!」
「可憐ちゃんも何か、かっこいいーっ!」
 胸がキュンとしながら、まやが可憐を褒める。
 可憐の方は今日は彼氏役ということで、ダブルのロングジャケットにショートパンツでストイックに決めつつ、ちょっとだけ野暮ったい感じの野球帽を被っていた。

 その様子をまやと可憐のパートナーであるアリス・テスタイン(ありす・てすたいん)エリアス・テスタロッサ(えりあす・てすたろっさ)は影ながら見守っていた。
「どうやら、まやたちはアイスクリームの売店に行くようですわ」
「大丈夫かしら、ひとまず付いて行かないとねぇ」
 アリスとエリアスは、まやと可憐に見つかれないように気をつけながら、二人の後を付いて行った。
 
「はい、トリプルアイスです!」
「わーい♪」
 可憐とまやは違うアイスをそれぞれ選び、仲良く、公園の芝生に向かった。
「さ、お姫様。こちらへどうぞ」
 まやの座る場所にさっとスカーフを敷いて、可憐がエスコートする。
「あ、ありがとう」
 お礼を言いながら、まやが芝生に座る。
 そんな2人を見て、アリスとエリアスは気になって気になっておろおろした。
「ああ、まや、アイスが溶けそうです」
 エリアスが飛び出したい衝動を抑えながら見守る。
「ただ、見守るって辛いですわね……」
 手出しをできないアリスも同じくおろおろしている。
「もう少し近くに……! あっ」
 歩き出そうとしたアリスは、意気込み過ぎたせいか、コーンからアイスがすとーんと落ちてしまった。
 まだ丸い形のアイスが寂しげに転がっている。
「う……まだ一口も食べてなかったのに……」
 寂しげにアイスを見て、アリスはエリアスの方を振り返った。
「エアリス……一口でいいから」
 そのアイスちょうだい、と言いかけて、アリスは言葉を止めた。
「どうしました?」
 不思議そうな顔をし、エアリスは落ちたアイスに気づいて、同情の色を浮かべた。
「あらあら……かわいそうに。良かったら私のを食べますか? 紅白アイスもなかなか美味しいですわよ♪」 
 七味唐辛子を彩りに添えたバニラアイスが差し出され、アリスは顔を青くする。
 一方、可憐とまやはアイスの味見っこをしていた。
「はい、あーん」
「まやちゃんもあーん」
 2人でスプーンを使ってゆっくり食べさせあいをしていたのだが……。
「あっ」
 のんびり食べすぎて気づくとアイスが大変なことになっていた。
「あわわわ……っ!」
「大変大変、染み抜き、染み抜き!」
 2人は彼氏と彼女ごっこを止め、いつもの幼なじみ同士に戻って、急いで公園の水道に走って、染み抜きをした。
「大丈夫、まやちゃん」
「う、うん。可憐ちゃんがメイドさんで、本当に良かった……」
 水に濡れた服を見て、二人で笑いあう。
「お洋服がダメになっちゃったから、ちょっと買いに行こうか」
「そうだね。濡れたままじゃ風邪ひいちゃうから、ショッピングセンターに行ってみよう!」
 アイスを落としてもめげない2人に、アリスたちはホッとし、今度はショッピングセンターに行く二人を追っていった。

                ★

 デートが開始されてから5時間。
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)はいまだに緊張が解けぬまま歩いていた。
「み、みんなとても積極的、でしたね」
 話題が見つからず、ルカルカが友人たちのことを口にする。
 友人の多いルカルカは、デートの途中でたくさんの友人を見かけた。
 教導団の中で、真一郎が大声で「俺とデートしてくれ!」と叫んだので、みんな真一郎とのデートを知っていて、どうなるかと思ったが……。
 しかし、ルースはヴェルチェに婚約指輪らしきものを渡している状況で。
 イリーナはクライスとキスしているかのような状況で。
 デートが初めてなルカルカは、そんな様子を見て、声をかけるどころか、真っ赤になって立ち去るしかなかった。
 ルースは知り合いに会ったら恋人であるヴェルチェを紹介しようと思っていたのだが、真一郎も顔に出さないものの、そういった状況に慣れてる方では無かったので、うまく対応できず、2人とも友人たちのデートに触発されながら、黙って歩いた。
「そう……ですね。ああ、お弁当、ありがとうございました」
「そ、そんなお握りとウインナーとかだけだったんで……私こそ、今日はバイクで迎えに来てくれて、ありがとう。ずっと運転もしてもらっちゃってるし……」
「それを言うなら、俺の方こそネクタイなんて買っていただいて……しかも、あんな高いものを……」
「高いってほどじゃないし、それに良い物に馴染むの大事よ。似合うわ、とっても」
 ルカルカの買ってあげたネクタイは、今、真一郎のワイシャツに付いていた。
 今日のスーツパンツとも合っていて、ルカルカの趣味の良さが出ていた。
 2人は緊張しながらも、ポツポツと互いの話をした。
「教導団の遺跡の依頼の時に、明るくて楽しい人だなと思って……好意を持ったんですよ」
 想いのきっかけを真一郎が話すと、ルカルカはおろおろしながら、なんとか口を開いて言った。
「わ、私はいつの間にか、かな」
 実際には、ルカルカにとって真一郎は、内面外見共に好みだった。
 鍛えられた筋肉と厚い胸板。
 優しくて実直な性格。
 共にとても好みだったのだが、ルカルカ自身、気づいていないようだった。
 2人は生い立ちも似ていた。
 両親が軍人の家のルカルカと、戦場で父となってくれた傭兵達の隊長の元で育った真一郎。
 共に戦場が近い立場だった。
 もっとも、義理の父の元で幼い頃から戦場にいた真一郎に比べて、ルカルカは普通の家だったが『両親軍人の普通の家』と言えてしまうあたり、やはり軍人の家の子だった。
「そのときね、ダリルに会って……」
 パートナーのことを話す時も、心の中ではパラミタで起こる脅威から民間人を護るのが軍人の役目という思いが根底にあった。
 ルカルカは守護者たるべきとの気概と誇りを持って教導団に所属していた。
 そして、真一郎はこんな目標を持っていた。
「将来、父のような部下に信頼されるような人間にありたい」
「それじゃいつか指揮官になるの?」
「指揮官というと違いますかね。父と同じ隊長です。戦場で部隊の仲間たちと共に戦いたいのです」
 2人はゆっくりとそんな話をしながら、いろんな場所を歩いたのだった。

「もう、夕暮れだね」
 夕日にルカルカの顔が照らされる。
「ルカルカ……これを……」
 真一郎はショッピングセンターで買った、鳥の羽の形のネックレスをルカルカに渡した。
「わあ、キレイ!」
 箱を開けたルカルカが、ぱあっと明るい笑顔を浮かべる。
 その笑顔があまりに可愛くて、真一郎は見惚れていたが、しばらくして、きちっと居住まいを正し、ルカルカの正面に立って、その瞳を見つめた。
「この先もずっと一緒に居たいと思ってます、俺と一緒に歩んでいきませんか?」
「えっ……」
 それはプロポーズの言葉だった。
 真一郎の言葉の意味を理解して、ルカルカは顔を真っ赤にして、おろおろした。
「きょ、今日が初めてのデートだし、その、あの……」
「俺は本気です。考えてみてください、ルカルカ」
 真一郎がルカルカの肩を持ち、不器用なキスをする。
 唇が重なり、ルカルカは顔を真っ赤にした。
 キスをした真一郎も夕日を背にしているので見づらかったが、顔を赤くしていた。
 唇が離れて見つめ合い、ルカルカは赤い顔のまま、真一郎を見上げた。
「貴方にはカナちゃん。私にはダリルという大切な存在がいる。鷹村さん。パートナーごと私を見てくれますか?」
「パートナーごと……ですか?」
 真一郎の確認に、ルカルカは頷く。
 2人は互いの想いを問いかけ、夕日が落ちるまで眺めた後、一緒に教導団に帰ることにした。
「……いたっ」
 バイクに行くまでの道で、ルカルカが急に声を上げた。
「どうしました?」
「あ、いえ……」
 いえ、と答えながら、ルカルカの踵が、慣れないヒールでひどい靴ずれを起こしていた。
 赤く皮が剥けた皮膚を見て、真一郎はルカルカの前に屈んだ。
「乗ってください」
「え?」
「バイクのところまでおんぶしますよ」
 ルカルカは照れながら、そっと真一郎の広い背中に手をかけて、おんぶをしてもらった。
 普段とは違う白いロングワンピースで真一郎に触れることで、ルカルカはドキドキとするが、その背中は温かかった。
 そのままもたれるようにくっつきながら、ルカルカはずっとこの時間が続くといいのに、と思っていた。

担当マスターより

▼担当マスター

井上かおる

▼マスターコメント

こんにちは、井上かおるです。
この度は「デートに行こうよ」に、ご参加頂きありがとうございました。

今回、キスなどの行為は、互いのアクションや関係などを見て、あり・なしを判断させて頂きました。

過激描写については、すみませんが、かなり抑えた結果になりました。
私自身が書けるか書けないかなら書けるのですが、後々、これが基準になると他マスターが困るため、このような処置になりました。

今回はアダルトな内容の想定をしておらず、ガイドにも何の注釈もなかったため、リアを読んでビックリした方がいたら申し訳ありません。

過激行為については、どのシナリオでも【性的な道具の使用・排泄などの行為】はおやめ頂くようお願いいたします。

前者については鞭やハイヒールなど曖昧と思うものかもしれませんが、リモコンを使ったものなどそれ以外の使用法がないものはお控えいただければと思います。後者については全面的に無しでお願いいたします。

今回はそういったアナウンスなしでアクションをボツにしてすみませんが、以後、お願いします。

なお、性別については本人の希望がない限り「外見性別」で描写させていただきました。口調や二人称についても、設定よりもアクションにある方を優先させていただきました。
ショッピングセンターにしてもゲームセンターにしても「2019年じゃないの?」とつっこみたくなるようなものがあったかもしれませんが、生暖かい目でスルーして頂けるとありがたいです。

マスターとしては、とてもとても楽しかったです!
今回あまりに楽しすぎて、妙にたくさん書きすぎてしまいました。普通はこんなに長くないと思って頂けるとありがたいです。
色んなカップルさん、色んな関係があって、どのカップルさんも描いていて、本当に本当に楽しかったです。
皆様、本当にありがとうございました!

12月16日 名前の間違えと呼び方の間違いを修正いたしました。本当に申し訳ありません。