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【2019修学旅行】奈良戦役

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【2019修学旅行】奈良戦役
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第6章 楽しい修学旅行


6-01 たこさんウィンナと間接キス

 お昼。
 吉野の景色(紅葉)を楽しみながら、霧島、早瀬、水無月の三人。
 お弁当の時間だ。
「おにぎりとたまごやき。それから……」
 早瀬の、おいしそうなお弁当。水筒は一つで、間接キス狙いも周到に……
「たこさんウィンナーよ。霧島さん、はい、……
 霧島さん?」
「……水無月? どうかしたか」
「あ、え、ええ何でも……」
 しまった……お昼、……お弁当、……
「え、いえ、……あっ」
 あった! ……ああ、私としたことが、忘れてきちゃった筈だけど……もしや……!
 ちらっと、木陰を見遣る、水無月。
「……」
 そんな水無月を、今日はひそやかに見守る、鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)
「……」
 彼の今日の任務は、主に、荷物持ちと(余裕があるので、霧島・早瀬さんらの荷物も持っているぜ♪)、護衛だ。
「……」
 無論、奈良は臨戦下にあり、いつでも戦闘態勢を取れるよう、周囲に向け九頭切丸は常に目を光らせている。
「……」
 (……頑張れ、睡蓮。)
 ちゃんと、水無月のことも応援している、筈。

 水筒作戦で、間接キッスには成功まず先制点か、早瀬。
 たこさんウィンナも霧島のお口にあんと入れて、これもポイントが高い。
 水無月も霧島へと距離を詰めつつ、少し、焦りも見えるか。
 (も、もしかすると、チャンスは今日しかないんじゃないですか……。)
 霧島に、べったりまで距離を詰めたい。
 (……だって、なんだかその……霧島さん、知らないうちに何処か遠くに行っちゃいそうで……)





 お昼が終わると、再び吉野の景色を堪能……といきたいところだが。
 その後は……どうやらもう温泉街に着いた。
 吉野の景色など、もう三人にはいい! ここからは、関係を更に発展させずして何とする! もう、秋の風景なんて、映っちゃいなかった!
 うう……どうやら勝負は、夜に持ち越しだ。……夜に。夜に。



6-02 うどん屋のひととき

 昼食は、うどん屋に入った。
「いらっしゃい! 何名様ですか?」
「五名です。ええ、と、座敷で座れる席は……」
「ええ、空いてますよ。どうぞこちらへ!」
 ぞろぞろと、うどん屋に入ってくるトーテムポール班。
 しかし……で、でかい。うどん屋店主もびっくりだ。
「あ、あのお客さん、お気をつけ……」
 ごん。「だっ」
 ごん。「痛……エへへ♪」
 ごん。「……フッ」
 案の定、フリッツ、サミュエル、ダリルと、小さな叫びを上げた。
「あ、あはは……皆、だいじょうぶ??」
 苦笑いの、ルカルカ。
 皆、たんこぶを押さえながら、席に着く。
「ご注文が決まりましたら、お呼びくださいね」
「はい。
 では……と」
 メニューを広げる、鷹村。
「うわあイ♪ 色々、あるよネ」
「ふむ。うどんか……肉、天ぷら、きつね、……きつね??」
「お決まりになりましたか?」
「ええ。俺は、天ぷら蕎麦を」
「あ、じゃあ私も鷹村さんと一緒ね♪」
「……」「……」「……」
 メニューとにらめっこするフリッツ、サミュエル、ダリルだが……
「お客様は……?」
「ええと、我は天ぷら蕎麦、だな……」(きつねが気になるが……)
「天ぷら蕎麦だヨ」
「……天ぷら蕎麦、だ」
「天ぷら蕎麦が五つ……ですね」
「あ、軍鶏南蛮も頼んじゃお。こっちにはミニ(サイズ)で」
 ルカルカ、追加。すると、
「……我もだ」「サミュもだヨ」「俺も。……ミニで」
 結局、よくわからないので、皆同じ注文をした。
「皆、いい……のよね? いいの?」
「うむ(きつねが気になるが……)」「イイヨ」「ああ。天ぷらに軍鶏か……楽しみだ」
「はい。では、これでお願いします」
 鷹村が丁寧に答える。
「(きつねが気になるが……)」





「わ。また、落ちちゃったヨ……」
 使い慣れないお箸に、天ぷらがもうぼろぼろになっているサミュエル。
 ルカルカが、皆に手を添えて箸の手ほどきをしている。
「あっ。フリッツ、せっかく俺が箸の使い方を伝授しようというのに」
 と、鷹村。
「フォークを持参してきた」
 フリッツは箸を諦めた。
「サミュエルを見習わないといけませんよ」
 一生懸命なサミュエル。
「……」
「お箸に慣れると、フォークとか不便に感じるよ」
「……信じられんな。日本の文化は、色々と繊細なのだなぁ」
 さき、トイレへの行き返りにもまたぶつけた頭をさすりつつ、感心しているのか諦めているのか、フリッツ。
「……しかし、鷹村殿は日本人なのでわかるが、ルカルカ殿も、日本文化には詳しいようだな。訪れたことがあるのかな?」
 慣れない座敷で、窮屈そうな足を組んだり解したりしつつ、フリッツが聞く。
「俺の方は詳しいと言っても……実際には傭兵部隊育ちだし、この奈良観光MAP片手に、ガイドの受け売りくらいしかできませんが……ルカルカは、……」
「実は私、……日本人なの」
 ぽちゃん。
 フリッツのフォークが汁のなかに落ちた。
「アチチチ」
 サミュエルもびっくり。
「そ、そうなノ??」
「そう……私は……」
 今、ここ(うどん屋)で明かされる、衝撃の事実!?
「漢字では流香。日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれたの。
 髪が金なのは、父の遺伝子が人種不明だから。
 なので、ハーフなのかそうでないのかも分からない……。
 まあ、父にも色々ドラマがあったって事」
 ふっと笑いを浮かべるルカルカ、……流香。
 皆、天ぷら蕎麦を食べながら、真剣な表情で聞いている。
 鷹村も、無言(で蕎麦を、食べている)。
 恋人ルカルカ、……流香の過去。その笑みは、どういう意味を含んでいるのか。……
「あ。皆、そんなに驚いた?? ご、ごめんね。
 まあ、だから、今日は鷹村さん共々奈良を案内するわ」
 そんなルー家の食事を一手に引き受けているダリルは、箸の使い方も手馴れたもの。
 フォークを落としてしまったので、後に引けなくなったフリッツ。しかしそのおかげか、意地になって箸の使いを早くもマスターしつつある。
「んむ。やはり日本の食事は、箸で食べると美味しい気がするな」
「サ、サミュ……?」
「……。天ぷら、ボロボロになっちゃタ。……。原形とどめてないヨ」
「サミュ。南蛮うどんのスープを飲み干したら、我のフォークが出てきた。……使うか?」
「……」
 しかし、天ぷら蕎麦を三杯おかわりして、サミュエルは箸をマスターした。サミュエルは「お箸」のスキルを取得した。
「ごちそうさマ♪」
「くっ。我が負けただと……」
 フリッツは、スキルの取得までには、四杯を要した。フリッツは「お箸」のスキルを取得した。
「ごちそうさま。はっ。しまった。つい、天ぷら蕎麦ばかりを、四杯も……」
「ごちそうさま。……フリッツ、どうかしましたか?」
「(きつねが気になる……)」



6-03 仮装修学旅行、教導団の修学旅行はやっぱり……

「ほーう。パラミタも驚く場所じゃが、現代日本も驚く場所じゃのぅ〜」
 生徒たちと一緒になって、奈良の町並で写真を撮ったり、土産物屋に入ってみたりする、秦 良玉(しん・りょうぎょく)
 生徒たちは一緒にはしゃいでいるが、沙鈴の英霊、彼は生前は明朝の軍人である。
 沙鈴先生が、何故このような軍人を連れてきているのか……
「さてこれから向かう安部文殊院ですが、安部清明ゆかりの施設であり、比較的石舞台にも近い。
 このことから、道満が八つ当たり的に攻撃目標に設定している可能性も考えられますわ」
 引率教師らしく、修学旅行らしく、生徒に説明しながら歩く沙鈴先生。
「……」
 生徒らの面持ちは幾らか暗くなった。
「……」
 セオボルトもだ。
「ですから、集合場所の堅持という名目で、わたくしたちがここの防衛にあたりますわ」
「……」
 ずーーん、やっぱりどこへ行こうと、教導団の修学旅行はバトルなのであった。
「安部清明の加護もあるかもしれません」
「安部清明の……ですか。では、自分はさっさと安部清明本人のもとへ向かい、直接加護してもらうとしましょうか。
 そして、安全に京都旅行としゃれ込……おっと。……ということ、ですな」
「さあ、安部文殊院はもうすぐ。他校生の皆さんも、ご一緒に修学旅行を゛義勇軍゛として、楽しんで頂くつもりですわ」
「……ずーーん」
「さて。では、沙鈴殿。このあたりで、自分は京都へ向かわせて頂きましょう。
 どうか、ご武運を……」
「ええ、お互いに」
 さてさて、ではいざ京都に。普段戦っているのですから、遊べるときには遊ぶべきでしょう。
 うんうん。教導団の生徒諸君は大いに頷いた。
「ん? 皆さん。このセオボルトに、付いてきますかな?」



6-04 ただの兵士?

 リュートを抱えて、道の駅に入る草薙。
「ちょっとごめんよ……」
 顔は笑ったままだが、彼女の口調は重たいものに変わっていた。
 道の駅には、町中に放たれた道満の式神を逃れた人々の姿があった。
「私は、ただの兵士だから」
「お姉ちゃん、シャンバラ教導団のひと?」
「教導団は、今、奈良県警と連携して、わしらを守るために戦ってくれていると、聞いたがの?」
「守るための、戦い、か……」
 それは、パラミタにおいたって、そうだ。
 軍事機関である教導団は、イベントなどでの巡回・護衛から、町や村の防備、民を襲う魔物の討伐など、人々を守るために、戦っている。
 本校での任務にしても、北方での戦争にしても、辺境の戦いにしても、それはどちらかの側からすれば、相手側が悪であり……
 そんなことは、わかりきっているのだけど。
 そして必ず、他人が死ぬ。……
 草薙は無言で、ぽろんとリュートを奏でる。
「珍しい楽器だねえ。なんだか、哀しげな音色……?」
 目の前で、小さな子どもがぽつんと彼女を見上げている。
 私は、ただの兵士、……



6‐05 国頭、風林火山

「おう兄ちゃん。マブイ女連れてんじゃん。どこ行くんだい? そのコ置いて行きなよ、可愛がってやるからさ」
 ヒャハハハハ!
 国頭とシーリルを囲んで、下品に笑う不良連中。
 しかしこちらは天下のパラ実生・国頭武尊。
「こんなとこにまで来て、喧嘩なぞしたくないもんだがね」
 木刀(土産物屋で買った)をするりと、抜き放つ国頭。
「おう何だこいつ、やろうってのか。奈良の不良を舐めるな!」
 国頭が、木刀を掲げる。
 刀身に、サインペンで書かれた 風 林 火 山 !! の文字。
「こ、野郎〜〜。き、きゃーー!」
 国頭がぶん、っと一振りすると、奈良の不良どもは、逃げていってしまった。
 と、しばらくもしないうち……再び、こちらへ突撃してくる不良たち。
「? またさっきのやつらか。同じ顔ぶれで、懲りないな。
 よし、もう一度木刀で……ん?」
「きゃあぁぁぁ!! 助けてくれぇぇぇ」
「なんだ……?」
「武尊さん……」
 不良たち、何者かに追われている。
「オニィィィィィ!!」
「サルァァァァ!!」
「キミたち、横にちるんだ!」
 木刀をかまえた国頭が、真っ直ぐに向かってくる追っ手に向かい合う。
「鬼、猿のお面なんかかぶって?」
 すり抜けた?
 振り向くと、もうさっきの鬼たちの姿はなかった。
「どうやら石舞台の方が騒がしいなあ。シーリル」
「はい、武尊さん」
「行くか……! 何か、趣向の変わったお祭りでもやってんのかな。これは面白そうだぜ」