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【2019修学旅行】奈良戦役

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【2019修学旅行】奈良戦役
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第10章 ドーマンセーマン!

 さあて、鬼、猿、マラの式神たちに狐たち、それに着ぐるみたち、そして更にここに加わるのは、橿原市民! だけでなく、橿原市からの行列に、奈良県民たち、修学旅行に訪れている全国の生徒たちもついてきた!
 さあこの行列を率いるのは、【ドーマンセーマン】一行だ!
 さあさあ、人も霊も着ぐるみも、皆入り乱れての、お祭り騒ぎの始まりだ!
 さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
 道満さんもいらっしゃい。
 べんべんべんべん
 皇甫伽羅、皇甫崇、うんちょうタンの三人揃って弓弦鳴らし、リズムをとって踊れや踊れ。
 昴コウジも踊っているぜ
 べんべんべんべん……
 ぴぴーっ
 列の護衛をしてきた林田が笛を鳴らした。
 列がとまる。
 戦っていた皆の動きもとまる。狐の舞いも、この瞬間、とまった。
 石舞台の前にいる、道満。じっと無言で行列の方を見ている。その表情は、読み取れない。
 緊張が走る。
 ごくり、【ドーマンセーマン】企画者のイレブンも、唾を飲んだ。
「道満様、お慕いしております! 私たちの歌、聴いてくださーーーい!!」
 巫女さん衣装(ミニスカ・ニーハイソックス改造)の少女が、行列から飛び出した。
 遠野 歌菜(とおの・かな)
「みんなー! 今日は蘆屋道満様のため、歌うよー! 皆も一緒に歌って踊ろう!!」
 道満様……
 歌菜は、ちらりと石舞台前の道満を見遣る。やはり、依然その表情は読み取れない。
 きっと、私の歌で、あなたのその閉ざされた心を……
 彼女の後ろで見守る、ブラッドレイ。「カナ、行くぞ。しっかり歌え!」
 ラジカセのスイッチが入る。
 リヒャルトは、彼女を信じている。「さぁ、歌菜ちゃん。宴の始まりだよ。張り切っていこうか」
 大音量で流れ出すイントロダクション。石舞台を包む。

 遠野歌菜、デビュー第一弾、本人作詞作曲によるオリジナルソングだ、行くぜ?!
 (※かけ声のところで、読者の皆様も、一緒にかけ声お願いします:筆者注)


「恋人は陰陽師☆」 作詞・作曲:遠野 歌菜

(L☆O☆V☆E 道満様!)※かけ声

私の彼は陰陽師
とても素敵な陰陽師

悪役? とんでもない
ちがうよ それは空想のお話
私達は知ってるわ
貴方は ヒーロー!

武勇伝 伝説 全てそれらが指し示す
道満様 貴方 HERO☆

レッツゴー! 道満様
貴方を全力でお慕いします

私の彼は陰陽師
とても素敵な陰陽師

(皆さんご一緒に!)※かけ声
L☆O☆V☆E 道満様!


 べんべんべんべん
 ラジカセカラオケ伴奏のちょっとチープな点は、坂上田村麻呂の霊力のこもった迫真の伴奏で、皇甫たちがカバーする。
 べんべんべんべん
 その一糸乱れぬ演奏。
 さすが、皇甫の血筋の結びつき。義兄弟の結びつき。……熱い!
 間奏に入った。
「道満! 二度目の生誕に、バースデープレゼントのお届けものだ!」
 バァンバァン! コンビニで買ったクラッカーや花火を鳴らし、盛り上げるデゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)。ジャパニーズカーニバル……ハッピを着こなし、ハチマキを頭に巻き、ノリはアイドルコンサートにいる追っかけファンのノリだ!
 子どもたちがつられて、踊り始める。
 そしてバックダンサーを務めるのは、デゼルのパートナー、ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)
「今日はちょっとばかし、女の子らしい格好を……って、うおぉぉぉ……なんだこの丈の短いスカートみたいなのは……ちょっとテンション上がってきたぞ!」
 み、短い、あまりにも短い、短すぎる!! どれだけ短いかっていうと……ああ、もう! それは言葉には表せない。
 ルケトの周りでも、たくさんの老若男子が、ノリノリで舞い踊っている。
 それやあ、ノリノリになるよね。これだけ短かったら。
 というくらい、短いのであった。
 そして更には、デゼルの新しいパートナーとして早速この修学旅行にもついてきた、
 ルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)、ケルト神話の太陽神……なのだが、見た目は小学低学年。
「るー? るーちゃん るけとと ばっくだんさー!
 よくわからない けど おどってればいい?
 るー! すごく たのしそう!」
 こちらもルケトと同じ、超ミニミニ……、おっと……外見8歳か、……とは言え、犯罪にはなるまい。蒼フロには、実年齢設定って強い味方があるのだもの。
 さあ、ルケトとルーを中心に、踊りの輪も広がり始めたところで、二番だ。

L☆O☆V☆E 道満様!

 野太い声で、かけ声に参加する、パントル・ラスコー(ぱんとる・らすこー)
 かけ声をかけながら、パートナーであるイレブンの財布(1400G)を勝手に使い買い込んだ絵画道具・スプレーで、リズムに合わせて絵を描いていく!
「コンナ道具ガアルトハ、ヨノナカ、便利ニナッタ!」
 見る間に、絵が完成していく。
 パントル・ラスコー。彼は、ラスコー洞窟の壁画を描いた英霊だ。

L☆O☆V☆E 道満様!

「ウゴウゴ! 馬鹿騒ギモ、楽シイ♪」
 人も霊も着ぐるみも、皆が歌い踊る。
 その真ん中で、華麗に、軽やかに、歌い続ける歌菜。
 いつしか、白狐も石舞台を下りて、歌菜と一緒に舞い踊っていた。
「白狐たーん☆」
 白狐には、エルが声援を送る。
「白狐さん……この後デートに行きませんか?」
 ルースも負けてはいない。

 戦いを忘れて皆が踊るなかで……
 これでは勝負がチャラになるので、踊りで勝負をつけようというジーナと緒方。
「歌って踊るのは、得意ですよ。あんころ餅には、負けません」
 腰をふりふり、ジーナのダンス。
「そうかな。僕を侮っちゃいけないよ? ほら見て、樹ちゃ〜ん」
 意外と色っぽい、緒方のダンス。
 林田を誘うように、踊る二人。
 林田、「……」。

L☆O☆V☆E 道満様!

 大合唱。
 さあ、道満様。今、あなたのもとへ……
 リズムに乗って舞いながら、石舞台の方へ、道満のもとへ、踊り寄る、歌菜。
「道満様、さあ!」
「む……」
 さあ、いよいよステージはクライマックスに。
 石舞台の上で、踊る、歌菜と道満。白狐も一緒に。
 ……

 鳴り止まない拍手喝采。
 すでに、式神の姿はなかった。
 石舞台の周辺に着ぐるみは脱ぎ捨てられちらばっている。中の人も、どこかへ去ったのか、あるいはただの奈良県民に戻ったのかも知れない。

 道満のもとへ、歌の間に描いた絵を、パントル・ラスコーが、緊張しながら渡しに行く。
「ウ、ウゴウゴ……」
「だいじょうぶですわ、パントル。あなたの得意な絵。こんなに楽しんで描いた絵ですもの。
 自信を持って!」
 グロリアーナ・イルランド十四世がパントルを勇気付ける。
「ウゴ!」
 パントルが道満に手渡した絵。
 そこには、道満のかつての活躍や業績が、とても生き生きと、描かれていた。
「……」
 じっと見つめる道満。
 石舞台の下では、裏方に徹した、人工生命体イレブン。パントル以上に緊張し、見つめている。
 結果は……
「……いい絵だ。ありがたく受けとるぞ」
 おお!!
 ……
 アンコールが鳴り止まない中、
「道満様? 私と、パラミタに……」
 歌い終わって、今は真剣な面持ちで道満に語りかける歌菜。
「パラミタへは戻る。甦らせてもらったパートナーがいるからな」
「その方は、道満様にとって……?」
「……大切な人、ではある」
「……そう、……」
 プロデューサーのイレブンがやって来る。
「道満。人工生命体のイレブンだ。
 教導団は、奈良の市民を守るため、道満の策を阻むことになったが、このように、私たちとしてはできれば友好を結びたいと思っている」
「……どうかな。
 清明はどうした。あいつは、お前たちパラミタの学校と友好関係にあるのではないのか。そうである以上、オレとは敵ということになる」
「それは……清明はたしかに蒼学とはそうあるみたいだが」
 ここで返答を誤れば、蒼学と教導団の関係を左右し兼ねない。イレブンは押し黙った。
「とにかく。オレは今のところ何処にも属すつもりはない。
 まずは清明を倒す。それからだ」
 道満は、歌菜らに背を向け、群衆の間を抜け、去っていった。
「この次はパラミタで会うことになる……のか」

 狐の姿も、もうない。
 石舞台の奥からちらついていた恐ろしい九尾も消えており、石舞台はただの石舞台に戻った。

「騎凛隊長(鹿の着ぐるみ)。追わなくていいのかな?」
 まだ、攻撃の姿勢を解いてはいない獅子小隊。レオンハルトが聞くが。
「……そうですね。道満の企ては阻みました。私たち教導団の目的は達したでしょう」
 答えはわかっていたようだ。彼も、すでに剣は収めている。