First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
3-03 サーカス
……我々の旅は
この細い綱の上を行くような旅
一歩足を踏み外せば
ナラカの底へ落ちてしまう
切っ先を前に向け
しかし我々は行かねばならぬ
たとえ灯かりひとつともらない暗い道のりであったとしても
いざ往かん 黒い都へ……
巡礼の一行に組み込まれることとなってしまった、彼ら。
しかし、ノイエ・シュテルンの中にあの男の姿が見えなかったことに、気付いた方もいるかも知れない。
さて、ここはとある草原の村。
この村をサーカスの一団が訪れ、今、サーカステントの中で演技が披露されている最中だ。
剣を手に、詩吟しながら綱渡りをしているのは、シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)。
サーカスを見ているのは……
そう。青 野武(せい・やぶ)だ。もちろん隣には、黒 金烏(こく・きんう)。
青は、先にも示された通りノイエ・シュテルンの一員としてクレーメックらと共にあったが、草原の村を通りかかった際、クレーメックの直観もあり、青の察知力もあり、これはどうも怪しいと見て、青は一時隊を離れここに残ることとなったのだ。このサーカス……何か、ある。
それから、反対隣に見えるのは……
「おや。どこかでお会いしましたかな」
「こまけぇことはいいけどな」
国頭 武尊(くにがみ・たける)も、サーカスに立ち寄ったのだった。
「サーカスなんて滅多に見れるもんじゃないし、結構楽しみだ」
シーリル、又吉も彼の隣で見物している。
続いては、
動物芸だ。
象にライオン、猿にクマ、
自転車、三輪車、シーソー! 玉乗り、縄跳び、そして火の輪くぐり!
注意深く観察する青、「ふむ。草原の民は気付かんようだが、あれはゆる族じゃな」
剣の花嫁による、剣の投げ合い。
黒、「光条兵器だから、相手を傷付けてしまう心配はないということでありますな」
火を吹く機晶姫。
いっとうじっくり見入る青、「ふむ……演出不足じゃの」(火力が足りん!!)
ヴァルキリーと守護天使による空中ブランコ。
黒、「翼がありますからな」
魔女、吸血鬼。
青、「……」
黒、「何と言いますか、見世物小屋でありますな」
最後は……英霊の槍回しだ。「はあっ、たあっ、くっ、……能力値が上がらん!」
黒の隣に、シラノが戻ってきた。「あの英霊の名は曹豹というらしいです」
「なんだ、その面白くない芸は。舐めんじゃねーぞこの野郎」
飛び出していく又吉。国頭も。
まあ、でも楽しそうだ。
二人も混ざって剣を投げ合ったり、玉乗りしたり輪くぐりしたり、火を吹いたりしている。
シーリルが止めに入る。
「ハメを外さないようにって言いましたのに! わっ」
又吉から投げられた剣をキャッチ、すかさず国頭に投げ渡す。さすが剣の花嫁だ。シーリルはこの後、サーカス団からスカウトを受けることになる。
サーカスは終了した。
客から盛大な拍手。
しかし、青は、真剣な面持ちで、このサーカスを見終えた。
「これは、やはり何かある……!」
*
さてサーカスが終わると青と黒はシラノを通し、サーカス内の外部応接担当者との面談を要望した。
暗がりのバックステージ。
先程の、魔女や吸血鬼やゆる族や曹豹らが、ぎらりと青らを睨みつけてくる。
全く怖気づく様子もなく、その間を進んでいく、青、黒、シラノ・ド・ベルジュラック。
三人は、直接座長と会うことになった。
山高帽にちょび髭の男。
「サーカスはどうでしたかな?」
「ええ。素晴らしかったですとも。
ときに、我々はシャンバラ教導団と申し、このほどのこの辺りの治安を担当することになったのじゃが……」
「何シャンバラ教導団!?」
部屋に、剣を持った花嫁、ヴァルキリー、機晶姫、曹豹らが入ってくる。
「……むう?」
シラノはエペをかまえ、青と黒の前に立ちはだかる。
「座長殿。教導団は、ヒラニプラに本部を持つれっきとした公然団体であり、地回りの類とは違います。ですが」
「これはどうしたことですかな? 何か、やましいことでもおありでしょうか」
黒が冷静に言い放つ。
「いや。失礼した。わしらは、とある情報をつかんで北へ向かっておる。
あなた方が教導団であるならば、協力して頂けないか?」
「では、このサーカス団というのは……」
青が、座長に問う。
「わしらは、どうしても北へ行かねばならぬ。人の目を偽ってでもな。
わしらのことを知ったからには、あなた方も今日からしばらく、サーカスの一員となってもらわねばならん」
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last