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リアクション
その5 極上! めちゃもて姉妹計画!
朝霧 垂がつくってきた服は、ニフレディの髪の色とよく似合っておりルーノ・アレエがまとうものとのおそろいだからか、ニフレディはうれしそうに鏡の前で何度も回って見せた。
「せっかくだから、一着一着写真に撮りませんか?」
カメラを構えた夜霧 朔の言葉に、何度も頷いたニフレディは、心底うれしそうに微笑んだ。写真を何枚もねだった後、それならばこれを、と桐生 円はゴスロリ服を差し出した。
「すそが短いのがニフレディ君用で、長いのがルーノ君用だよ」
にっこりと笑いながら、二人に押し付けて更衣室へと入れた。着慣れない洋服だからか、手間取っているとバニーガール姿の藤咲 ハニーがすっと中に入って着替えを手伝う。
「ゴスロリって、着るのが難しいのよね〜」
「ありがとうございます……ええと」
「ああ、あたしは藤咲 ハニー、明智 珠輝ってやつ知ってるでしょ? あれ、あたしのパートナー」
「そうなのですか」
「どのみち、あいつがもってきた服の着替え手伝うために着たから、使ってちょーだいな」
どこか男らしい響きのある言葉に、ルーノ・アレエはクス、と笑いを漏らした。
おそろいのゴスロリ服も好評で、ニフレディ自身がねだるよりも多く写真をとってもらうことができた。次は、ヴァーナー・ヴォネガットが持ってきた服だった。こちらもおそろいの色合いで、レモンイエローがアクセントになっていた。
「えへへ。ニフレディちゃんの小麦色の肌には、明るい色が似合うとおもうです。下は白にして、二人の綺麗な肌の色が映えるようにしたです」
アクセサリーとしてつけたスカーフをまきつけると、ヴァーナー・ヴォネガットは勢いよく更衣室のカーテンを開けた。
丁度、菜の花庭園によく似た雰囲気になった。レモンイエローのレース地のチュニックに、ニフレディは白いキュロット、ルーノ・アレエは白いスカートをはいていた。ニフレディは首にレモンイエローのスカーフを巻き、ルーノ・アレエは髪に結いつけた。レモンイエローが菜の花、ニフレディの髪の色が菜の花の葉、ルーノ・アレエの髪の毛が中央の桜だった。
「菜の花庭園バージョンですっ」
「すっごい〜! ヴァーナーちゃんすっごいよ!」
「ああ。凄いな」
ソア・ウェンボリスと緋桜 ケイは思わず見とれて拍手すら忘れていた。ため息が洩れる会場に、少しびっくりしてしまった機晶姫の姉妹は、顔を見合わせて小さな声で呟いた。
「「に、似合いませんか?」」
その呟きには、盛大な拍手と温かな言葉が返ってきた。ヴァーナー・ヴォネガットに対する賞賛も冷めやらぬ中で、続いては明智 珠輝が持ってきた着物を着付けることになった。
「やっと本番か」
藤咲 ハニーがため息混じりに言うと、いわれるがままに着物を着付けられていく。まさしく人形のような状態でおとなしくくるくると回っていた。
「なにやら不思議な感じですね。こんなにいっぱい着るのって」
「パラミタ大陸の下にある、日本て国じゃお祝い事があると着る晴れ着っていうんだよ。その昔は、これよりも簡単なものを誰でも着ていたらしいけどね」
バニーガールが少し遠い目をしながら呟いている間に、二人は艶やかな晴れ姿を皆に披露することになった。ぽん、と絞めた帯びの背中を押して、赤髪の兎獣人はにっこりと微笑んで見送った。
「わあ!」
会場からさらに歓声が上がる。艶やかな晴れ姿は青空の下で輝いていた。ニフレディにはその髪の色を溶かした様な『若草色』に芍薬の花が描かれていた。ルーノ・アレエの着物は『朱色』で桜の花が描かれていた。ニフレディは頭に和柄のリボンの髪留めをつけてもらい、ルーノ・アレエは髪を結い上げてかんざしを挿してもらっていた。
「ふふふ。素敵ですよ、お二人とも……春の花が咲き乱れるこの日、お二人にも艶やかな華になっていただきたくお持ちいたしました」
妖艶な笑みを口元に湛えた黒髪の美青年は、ルーノ・アレエの耳にそっと唇を近づけた。
「あとで、帯を解かせてください」
小首をかしげながら、ルーノ・アレエが不思議がっていると、マントをばさっと脱いだ明智 珠輝の姿に誰もが唖然としていた。真っ黒な晴れ着に、金糸で刺繍が施されていた。
「ふふふ……こう、あ〜れ〜といってくださいね」
くるくるっと、華麗なステップで二人の前を右往左往していると、袴姿が似合っているリア・ヴェリーが衆目に一礼する。そして、キッと黒い着物の変態を睨みつけるとその帯を掴んで勢いよく引っ張る。
「そんなに回りたいなら、一人でまわってろおおおおおおぉーーーーーー!!!」
「ああ、お代官様ァ〜お戯れを〜」
その一芸が披露されている間に、一旦お着替えタイムも休憩することになり、すぐさま二人は人の輪の中心になった。トライブ・ロックスターがジョウ・パプリチェンコ(じょう・ぱぷりちぇんこ)を紹介がてら、二人にクッキーを持って現れた。
「よ、お二人さん。よく似合ってるぜ。これは、ジョウが焼いたクッキーだ」
「トライブ・ロックスター、先日はお世話になりました」
「はじめまして、ジョウです。いつもうちのトライブが、迷惑をかけてゴメンね?」
赤髪をセミロングに整えている機晶姫のジョウ・パプリチェンコは、苦笑しながら頭を下げた。
「なんだよ、せっかく友達をつくってやろうって、つれてきてやったのに……」
「やったのにって何よ、やったのにって。トライブに気を使ってもらわなくったって、友達くらいいくらでも作れます。ってことで、こんなトライブのパートナーなんだけど、よろしくね?」
トライブ・ロックスターの言葉を鼻で笑い飛ばしながらも、ニフレディに握手を求め手を差し出した。ニフレディはその手をとってジョウ・パプリチェンコに抱きついた。
「え? え?」
「ヴァーナーさんから、ご挨拶だって教わりました。どうぞ、よろしくお願いいたしますね」
「あ、うん! いい子だなぁ。ルーノさんもよろしくね? こんなにかわいいからちょっかい出してくるんだけど、二人ともこいつには気をつけてね?」
「こ、こら! 滅多なこというんじゃありませんっ! とにかく、ロックスター商会をこれからも頼ってくれよ?」
「はい。よろしくお願いします」
「ジョウさんのクッキーおいしいですよ。姉さん」
ニフレディの無邪気な言葉に、ジョウ・パプリチェンコは照れ笑いを浮かべていると、その後ろからミレイユ・グリシャムが先ほどのロールケーキをもってやってきた。
「はーい。ルーノさんの分のケーキ」
「ミレイユさん、っていうんです。さっきお友達になったんですよ」
「ミレイユ・グリシャムです。こっちは、シェイド・クレインに、ロレッタ・グラフトン。よろしくね。あ、百合園の服も似合ったんなら、シェイドも着物にあうかもね?」
「何故今ふるんです?」
シェイド・クレインは少し哀しげな表情になると、彼の後ろでじっとルーノ・アレエの顔を見つめていたロレッタ・グラフトンが一枚の画用紙を差し出した。
「……よかったら、あげるぞ」
そういわれて受け取ると、クレヨン画が描かれていた。着替えをしている最中のもので、どうやらヴァーナー・ヴォネガットが選んだ服を着ていたとき野が描かれているようだった。そこに描かれている二人の機晶姫は、笑顔でとても楽しげだった。
「素敵な絵ですね……大事にします。ありがとう、ロレッタ・グラフトン」
赤い瞳をうれしそうに細めて、頬を赤らめていた。それを見て、ミレイユ・グリシャムは自分もうれしくなったように微笑んだ。そこへ、ようやく淹れ終えたコーヒーを浅葱 翡翠が執事らしい動きで二人に差し出す。
「お口にあえばいいんですが……」
「ミルクとお砂糖もありますから、苦かったら言ってくださいね?」
サファイヤ・クレージュが銀のトレイの上にミルクが入った小さなピッチャーと色とりどりの砂糖が入った小瓶を見せながらいう。ルーノ・アレエは「少し、お願いします」と入れてもらうが、ニフレディはブラックのまま口にするとにっこりと微笑んで「おいしい!」とお代わりを要求した。すると、白い装甲の機晶姫が優雅なたたずまいで表れた。
「ニフィー、コーヒーはそんなに一気に飲むものではないんだよ?」
「ララさん! え、そうなのですか?」
「そうだ。ゆっくりと味わうのがいいんだ。そうだろう?」
「ええ。でも、おいしいといってもらえるだけでも私はうれしいですよ」
「プリンもあるんですよ」
永夜 雛菊はガラス容器に綺麗に並べたプリンを差し出しながら微笑んだ。牛乳プリン、カラメルプリン、紅茶プリンの3種類が用意されていた。それに食いついたのは、七瀬 歩だった。
「ぷりんー」
子犬のようにかけてくる彼女にもプリンを差し出す。七瀬 歩はニフレディに挨拶を交わしながら、プリンを受け取ってニフレディにも差し出す。
「本当は、お手伝いしに着たんだけど、円ちゃんが挨拶しておいでって、かわってくれたんだ」
「さっき白いゴスロリを下さった方ですね! 新しいお友達まで紹介してもらって、凄くうれしいです。そのプリン、円さんにも食べていただけないでしょうか?」
「うん、まどかちゃんプリン大好きだから、持って行くよ。それじゃ、またおしゃべりしようね!」
はい! そう返事を聞きながら、七瀬 歩は桐生 円の分の三種類のプリンを持って駆け出していった。そこへ、どこから見ても金色の輝きしか見せないエル・ウィンド(える・うぃんど)が優雅に歩いてくるのがみえた。
「エル・ウィンド!」
「やぁ、妹ができたって聞いたから、お祝いを言いにきたよ」
「初めまして、ニフレディです」
「ボクもたくさんの妹分がいるから、なんだか他人のような気がしないね。ミレイユやケイラも僕の妹なんだよ」
え? と二人の機晶姫は首をかしげた。
「あ、響子さんのことかもしれませんね」
「え?」
「内緒、ということなのかもしれない。ニフレディ、あまり口にしてはいけません」
姉妹で絆を深め合っているのを見せられて、エル・ウィンドはよくわからず首を傾げたが、まぁ、とにかくと姿勢を正した。
「とりあえず、ボクたちはキミたちのためにいつでも力を尽くすから、遠慮なく頼るんだよ?」
「はい、ありがとうございます。エルさん」
「エル! ニフレディさんに何か変なこと吹き込んでませんか?」
むっとした顔でホワイト・カラーがかけてくると、びくっとエル・ウィンドは肩をすくめた。全力で首を振っているのを確認すると、赤い瞳をにっこりとした様子で細めた。
「ニフレディさん。先ほどの白ゴスロリ、すっごくかわいかったですよ! 衣装っていわれたから、こんなの持ってきたんですけど……」
といって、ネコミミカチューシャと鈴のついた首輪、リボンのついた尻尾などを見せる。
「ハロウィン用なのですが、ちょっと恥ずかしかったかなぁ……。今となってはいい思い出です。これから、皆と楽しい思い出、作りましょうね?」
「はい! ホワイトさん、ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げると、頭につけた飾りが落ちそうになってしまう。横で彼女のナイトとして付き添っていたララ ザーズデイは深々と下げる前に彼女の身体を支えた。
「こういうものをつけているときは、落ちない程度のお辞儀でいいんだ。そういったしぐさも、覚えていかなくてはね」
「ふふ、立派なナイトがついてるのね」
百合園の制服に、真っ黒な髪がつややかに輝いていた牛皮消 アルコリアはくすくすと微笑みながら語りかけてきた。その脇には、樂紗坂 眞綾が寄り添うように歩いていた。
「はじめまして、読めないと評判の牛皮消です。名前のほうのアルコリアでいいですよ。最近転入してきたんです」
「牛皮消 アルコリアですね。よろしくお願いします」
「これ、パネトーネっていうお菓子です。シーマちゃんが作ったの。あ、シーマちゃんっていうのは、いま警護に当たってる機晶姫の子ね、もう一人ナコちゃん、ていうのもいるんだけど、一緒に警護にいっちゃったんだ。で、この子が」
「はじめまして、まぁやです。よろしくおねがいします」
ぺこ、と頭を下げたのは緑色の髪の毛をくるくるに巻いたハーフフェアリーの少女。にっこりと微笑みながら、首から提げたカメラを自慢するように捧げた。
「るーのんと、にふにふにききたいことがあるの〜。いままででみたけしきのなかで、いちばんきれいだとおもったものおしえて〜」
「一番綺麗だと思ったもの、ですか? ……私は、この空です」
「姉さんもですか? 私もなんです。遺跡の中で生まれたからか、空を見たことなかったから……」
「昔、空の話をイシュベルタ・アルザスという私の大事な人から聞いたとき、どんな色かと聞いたら、私を作ってくれたエレアノールの瞳の色を差していいました。『アレが空の色だ』と。本物を見たとき、それが正しかったことを知りました。とても、うれしかったです」
「まぁやもね、おそらなんだよ。コレ」
そういって、雲ひとつない改正の空だけが写った写真を取り出した。
「はじめてみたあおいそら、すごくきれいだとおもったの。はじめてカメラでとったのも、おそらなんだよ」
にっこりと笑う樂紗坂 眞綾につられて、二人の機晶姫は微笑んだ。パネトーネをアリア・セレスティが切り分けてくれると、それをその場の皆で分けて食べていると、「そろそろ着替え第二段やるぞい〜」と、シルヴェスター・ウィッカーの声が聞こえてきた。ルーノ・アレエは牛皮消 アルコリアにお辞儀をすると、更衣室のある場所へと戻っていった。
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