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空賊よ、風と踊れ-ヨサークサイド-(第2回/全3回)

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空賊よ、風と踊れ-ヨサークサイド-(第2回/全3回)

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chapter.13 空の地図と金色の狩り人 


 中央遺跡内部。
 ヨサークとフリューネは、我先にと足を踏み入れ、辺りを見回していた。
 高い天井のせいか、それとも壁に大きく開けられた穴のせいか、部屋は外観以上に開放感を感じさせ、その中央には先ほどの石像が置いてあったと思われる台座が見えた。その奥にある壁には何かの文様が装飾されていて、目を凝らすと、それがおぼつかない形状をした黒と赤の円を並べた文様だということが分かる。
「あ? この円の配置って……タシガン空峡に浮かんでる雲じゃねえのか!? なんでここにそんなもんが……」
 ヨサークが壁画を見つめているその後方では、フリューネが頭上を見上げていた。天井にもうっすらと何かが書かれているのが見え、彼女はそれを確認するために立ち位置をずらす。壁の穴から差し込む夕日を光源に、やがて彼女はそれを視認した。そこに描かれていたのは、円を描くように並んでいる図形だった。その中で、丸型の図形だけが微かに色濃く描かれていた。
「これは……おそらく、月の満ち欠けを表したものね」
 部屋を一通りチェックしたフリューネとヨサークは、この部屋に描かれた壁画の謎を懸命に解こうとしていた。
 壁に描かれた文様、これを仮にタシガン空峡の雲を配したものだとしたならば。さしずめこれは地図でいう陸地の高低を表した、雲の等高線といったところになるのだろうか。
 そして天井に描かれた図形を月の満ち欠けを並べたものだとしたならば。あの円形が満月となる。他より色濃く描かれているのは、それが強調されるべきものだからではないだろうか。
 ここまでは、ヨサーク、フリューネ互いに洞察出来ていた。さらに情報を集めるべく、ヨサーク、そしてフリューネは雲の等高線に目を向け凝らした。と、よく見ると並んでいる円に紛れ、細い線で何かが描かれていた。
「これは……気流か?」
 思わず考えが口から漏れるヨサーク。そう、彼の言葉通り、これは気流の流れを示したものであった。さらに、何本も描かれている線のうち、一本だけが他の線より太く描かれていることにふたりは気付いた。おそらく一般人が見ても理解出来ないであろうこの円と線の組み合わせ、そして太い線が指し示すものが何か、ふたりは同時に気付いた。
 ――もしかして、これがユーフォリアを示す地図なのでは?
 それは、空賊という立場で、普段からタシガン空峡を飛んでいるふたりだからこそ判別することが出来た、言わば「風の地図」なのであった。
 等高線が指し示す雲の中で、ある特定の方向に流れている気流。そして一本だけ描かれている太い線。
「ようやく、会えるのね……」
 それは、小さく小さく呟いたフリューネの歓喜の声。彼女はもう、全てを理解し終えていた。この太い線は、言うなればユーフォリアに辿り着くまでの、気流の道。この気流以外では、他の気流に阻まれてユーフォリアの場所まで辿り着けない仕組みになっている。これが、ずっとユーフォリアが見つからなかった理由であった。
「おいおめえ、何ひとりで全部分かった気になってんだこら」
 ヨサークが、風の地図に目を向けたままのフリューネに言葉を投げる。
「あら、あんたは分からなかったの? まあ当然よね。大した知識もなさそうな、頭の軽そうな男だものね」
 ヨサークは挑発されついカッとなり、自らの推測を自信満々に披露した。
「黙れ女、俺が何も分かってねえとでも思ってんのか? あぁ? これはアレだろ、タシガン空峡の雲と気流を表した図なんだろ? で、この太い線がおそらく唯一ユーフォリアに行き着くことが出来る気流ルートだ。天井にある絵は月の満ち欠けの絵だろうから、あの絵からするに満月の周期でこの気流が生まれる、ってとこだろ? どうだこら、全問正解だろうが!」
「……さあ、それを私が肯定したり否定したりする必要はないわよ」
「女、いつまでも上から目線で見てんじゃねえぞこら。刈るぞこら」
「あんたが? 私を? やれるものならやってみなさいよ」
 ヨサークとフリューネはほぼ同時にハルバードと鉈を構え、距離を取った。が、その切っ先が交わる前に、ふたりの横から声が聞こえた。
「へえ、そういうことなの。色々教えてくれてありがと」
 ばっ、と声の方を振り向くふたり。そこに立っていたのは、空賊狩りである青い爪と黄金色の髪の持ち主だった。部屋に注ぐ赤い夕日の中、不気味に浮かび上がったその青い爪を見てふたりは同時に悟った。
「まさか……空賊狩り!?」
「そう、けど、それも今日でおしまい。だって、今ユーフォリアの場所が分かっちゃったからね」
 彼女のその言葉で、ふたりの空賊は危機的状況であることに気付かされた。
 今ここでこの空賊狩りを逃がしたら、間違いなくユーフォリアを奪われる。
 確信にも似た気持ちを抱いた二人は、示し合わせたわけでもないが一斉に駆け出した。
「ユーフォリアに手を出すなら、このまま返すわけにはいかないわ。ロスヴァイセ家の名にかけて!」
フリューネは滑り込むように間合いをつめると、空賊狩りを切り上げるように下から上へ薙ぎ払う。
「どいてろ、クソアマ! 俺の畑に土足で入ってくんじゃねえ!!」
 ヨサークは姿勢を低く構え、空賊狩りの足下を刈り取るよう音もなく潜り込んだ。
 まるで連携は取れていなかったが、どちらも名高い実力者、それぞれの攻撃は確実に空賊狩りを捉えていた。
「なんだ、この程度なの?」
 ポツリと空賊狩りは呟いた。 
 彼女はおもむろに身体を捻り、双方の攻撃の軌道から外れる。フリューネの白い腹部に爪を差し込み、その柔らかな肌を切り裂き、同時にヨサークの肩に爪を突き刺すと、均整の取れた筋肉を無理矢理に引き裂いた。
 二人の真っ赤な飛沫が、遺跡の床をしとどに濡らす。
 フリューネは苦痛を顔に浮かべ、倒れ込むように床に手をついた。ヨサークは険しいシワを顔に刻み、無惨に裂かれた肩を押さえ、その場に座り込んだ。
「……じゃあね、おふたりさん」
 苦しむふたりの姿に、空賊狩りは何の感慨も示さず、踵を返した。
 フリューネはとめどなく血の溢れる腹部を押さえ、ハルバードを杖に立ち上がった。
「ま……、待ちなさい。キミは……何者なの?」
「あれ、十二星華って知らない? 空賊狩りよりこっちで呼ばれる方が好きなんだけど」
「え……?」

「あたしは十二星華のひとり、【獅子座(アルギエバ)のセイニィ】よ」

担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。初めましての方もリピーターの方も、今回のシナリオに参加していただきありがとうございました。
そして、今回公開予定日を過ぎての公開になってしまい申し訳ございませんでした。

今回は、前回以上に凄まじいアクションが集まったので結果的に相当なコメディーになりました。
出来るだけアクションを採用したつもりですが、連動シナリオでという性質上拾えないものもありましたことをご了承下さい。
公開予定日オーバーしといてあれこれ言うのも気が引けますが、
執筆中、特にこの空賊シナリオを書いていて感じたことをちょっと書かせてもらいます。

私はマスターの中でも判定が緩い方だと思うので、面白いと思ったら結構色々と通しちゃいます。逸脱しすぎないレベルで。
MC、LC別行動なのも、マニュアルにもある通り結果的に目的が同じになってれば採用することが多いです。
ただ、この連動シナリオにおいては極力同じ行動でお願いしたいと思います。
連動という性質上、両シナリオ間を行き来した時に別行動だと調整が大変になるというのが主な理由です。ご理解頂ければ幸いです。

他に気になった点は箇条書きで簡単に。
・性別非公開キャラがヨサーク絡みのアクションをかけた場合の性別バレについて、可ならどこまで可か(ヨサークのみ、全体)
 というのは、リアクション上で実性別を書いちゃっていいのかどうか、ということです。駄目な場合耳打ちとかで済ませます。
・ガイドにある通り、戦艦島にあるのはユーフォリアの「手がかり」です。「ユーフォリア」ではありません。
 今回なぜか島にユーフォリアがあることを前提でアクションかけた方が何人かいました。
・罠は、警戒するよりかかる方がおいしいと思います。
・アクションは、欲張るより一点特化タイプの方が私のリアクションでは活躍しやすい傾向にあります。
・文中で桐生円さんが写真をネタにヨサークをゆすってますが、これは前回参加時に丸々1回をヨサークの情報収集に当てたからで、
 (さらに言うとリアクション内で写真というアイテムをこちらが与えたから)
 次回突然「じゃあ俺音声録ってヨサークゆする」「私ムービー撮ってゆする」というのを急には出来ません。
 
こんなところだと思います。なお今回の称号は、LC含め全部で23人のキャラに送らせて頂きました。
一定回数連続参加者やヨサーク空賊団への正式入団が認められた方が主な対象です。
あと称号は付与してなくても、アクションに対する意見などを個別コメントで何人かにちょこちょこ送らせて頂きました。

最後に、今回も次回シナリオの告知させてください。
まだ確定ではありませんが、おそらく1月24日の日曜日に今回の続きの話が出ると思います。
きちんと決まりましたらブログの方で告知したいと思います。ブログは「萩に地鶏身」で検索していただければ。
今回のリアクションの裏話とかも書くことがあれば後で載せるので、もし興味のある方がいましたら覗いてやってください。
そんな感じで、長文に付き合っていただきありがとうございました。また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。