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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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・戦場へ

 地下へと通じるエレベーターの中、不安げな表情を浮かべる者達の姿があった。
「あんなに強い守護者がいたってことは、やっぱりこの先には相当大変なものがあるのかな?」
「かもしれないわ。もしかしたら他でも何らかの戦いが起こっていてもおかしくない。先に行った人達が無事だといいんだけど……」
 秋月 葵(あきづき・あおい)アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)である。彼女達は図書館での一件から、最深部にも何らかの異変があるのではと考えていた。
「この先に封印の扉があるなら、さっきのと同等の使い手がいるかもしれませんね」
 音井 博季(おとい・ひろき)もまた、懸念していた。二十数人がかりで、しかも古代魔法の力を借りてようやく倒せた相手でなければ守護者としての役割が務まらないもの、それが単なる金銀財宝だとは彼には思えなかったのだ。
「十分に警戒しておく必要があるわね。万が一の備えて魔道書を何冊か持ってきたけど、出来ればこれは最後の手段にしておきたいわ」
「そうですね。ですが先の方々はきっと魔道書の事は知らないでしょう。苦戦してない事を祈るばかりです」
 図書館から攻撃と強化の魔道書を持ってきた西宮 幽綺子(にしみや・ゆきこ)エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)が抱えている魔道書を一瞥する。その場にいる全員のものを合わせると強化が八冊、攻撃が四冊だ。図書館の時のように全員に強化魔法を施す事は不可能である。

 話していると、ちょうどがこん、という音とともに扉が開いた。

「着いたみたいだにゃ」
 葵のパートナーであるイングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)が扉の外を覗き、様子を窺う。他の者も続いていく。
「一本道、だよね?」
 葵が奥まで眺めてみる。幽綺子が光術を使えたおかげで大分先まで見えたが、その範囲に分かれ道はないようだ。
 そのまま壁を調べながら一行は慎重に歩いて行く。壁には先行組が調べた形跡があった。が、通路の現状を見るからに何も起こりはしなかったのだろう。罠の気配もまるでない。
 しばらく進むと、無菌室風の部屋に躍り出た。壁や床に焼け焦げた跡があり、さらに効力を失った魔法陣も見て取れた。
「この部屋……やっぱりこっちでも戦闘があったみたい。奥ではまだ続いているかも、急がないと」
 アリアの顔にわずかばかり焦りの色が浮かぶ。
「うん、もう少し奥の方だと思うけど、音が聞こえる」
 葵が超感覚を発動させたことで、奥へと続く通路の先の様子が薄らとではあるが感じ取れた。
「行きましょう!」
 博季が奥を見据え、駆け出した。
 先に何人いるかは分からないが、今もなお戦っている以上苦戦を強いられているに違いない。一体どれほどの敵が待ち受けているのだろうか?

           ***

 アリア達がエレベーターに乗り込もうとしていた頃である。
「何かあちこちでやばそうな気配がしねえか? 特にこの通路の先なんてとんでもないのがいそうだぜ」
 駿河 北斗(するが・ほくと)は地下行きエレベーターへと至る通路に差し掛かろうとしていた。
「待ちなさい馬鹿北斗。あんたに使える力を求めるなら上よ」
 彼のパートナーであるベルフェンティータ・フォン・ミストリカ(べるふぇんてぃーた・ふぉんみすとりか)が制止する。
「何でだよ? こういう場所って最深部にこそ一番ヤバいものを隠してるもんじゃねーのか?」
「確かに、あるにはあるかもしれないわね。さっきの魔道士と同じかそれ以上に危険なものが。おそらくここは研究所よ。それも、秘密裏に行わなければいけないような存在の、ね。だからこそ持ち出し可能な資料や壊れて困る様な成果物は上の安全な場所に保管されているはずよ。例えば光条兵器のような人の手で扱えるものとかは」
 ベルフェンティータの考えは的を射ているようだった。
(さっきの守護者の力……やっぱり魔道書の並列制御も完全じゃないのね。それでも制御装置一つであれだけの事が出来るなんて。もしあれも研究の成果の一つだったとすれば……万が一あれと同じようなものが暴走したら大惨事になる。その為の「地下」研究所だと考えるのが最も妥当よ)
 図書館での出来事と、文献の解読によって彼女はここまでの事を掴んでいた。もっとも、それが魔導力連動システムだという事まではさすがに分からなかったが。
「ふむ。確かに私が研究者でもリカバリの材料は火種から離すわね」
 もう一人のパートナー、クリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)が言う。元々魔法技術者であったらしい彼女にはこの遺跡での研究内容は興味をそそるもののようである。
「でもよ……」
 北斗はまだ不服そうだったが、
「ほらほら、行くよ」
 とクリムリッテは半ば強引に彼を上階へと引っ張っていった。

           ***

「ただの避難経路ってわけじゃなさそうなんだよなぁ。マティエそっちは?」
「うーん、特に壁に仕掛けがあるみたいじゃないです」
 北斗達が移動したのと同じ頃、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)とパートナーの猫の姿のゆる族マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)は図書館三階の隠し通路内を調べていた。瑠樹が通路の右側を、マティエが左側をそれぞれ担当していたが、何も発見できずに出口まで来てしまう。
「あとまだ調べてないのは、ここくらいか」
 瑠樹は外に出る前に、通路の行きあたりの壁を思いっきり押してみた。これでダメなら何もないと諦めるしかない。
 すると、奥の方に壁が開いていった。
「開きましたね……」
「探せばあるもんだねぇ。でも入ってすぐの所にあったってのは盲点だよなぁ」
 すぐ目の前にある上り階段を進んでいく二人。しばらくすると、階段が終わり再び扉が現れた。
「おっと、念のため、と」
 瑠樹とマティエは扉を開ける前に光学迷彩を使用する。開いた先が安全であるという保障はどこにもない。
「行こう」
 瑠樹はその扉を開き、中へと足を踏み入れた。

           ***

 その頃、地下の無菌室風の部屋には二人の男女の姿があった。
「戦いの跡、それもまだあまり時間は経ってないようですね。それにしても……」
 樹月 刀真(きづき・とうま)と彼のパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は部屋を見渡す。
「いや、今は先を急ぎましょう」
 何か思うところがあったようだが、口には出さなかった。そのままただ通路の奥を見据え駆けていく。
(無菌室みたいな部屋、ということは細菌兵器もしくは生物兵器の研究でもしていたのでしょうか? だとすればこの先は実験区域。それに、あの守護者が生みだしていた光を基にしたらしい武器の数々。もしかすると封印されているものは……)
 頭の中には一つの仮説が出来上がっている。その実態とは、守護者と同程度の力を持つ自由意思を持った存在であると。
 
 そして二人の目の前に飛び込んできたのは開かれた封印の扉、そして――